眠っている異世界人①
「あなたの力で異世界人を目覚めさせてほしいの。私ではダメだったのよ……さあ、起きて……」
月夜に照らされた妻の顔を見つめていました。
いったい何を言っているんだろうか、と寝ぼけている私は思っていました。
「ねえ、起きて。さあ、行きましょう……」
また、妻の声が聞こえてきました。
段々と、頭が回ってくると、昨日、妻が魔族であると言っていたことを思い出しました。すぐさま、私は起き上がることにしました。すぐに魔族について聞かなくてはなりません。ただ、声が出ませんでした。一杯の水を飲もうと台所まで歩いていました。すると、突然、妻が私を抱きかかえて、宿屋の窓から飛び出していったのです。何が起きたのかわからずに、私は目をぱちくりさせていました。
外は冷たい風が吹いていました。
寒さで顔をしかめながら、声にならない声を出し、私は1階まで落ちていきました。
まだ、何処か寝ぼけていたと思います。
2階の部屋から飛び降り、私は妻にしがみ付いていました。
地面に着地していました。
真っ暗な闇から、複数の声が聞こえてきました。
兵士に囲まれているようです。
やはり、お尋ね者になってしまったのだなと思いました。
兵士たちは目をギラギラさせています。
「矢を放て!!!」
合図が聞こえると、兵士たちが弓矢を放ちました。
弓矢が私の頬をかすめます。
たくさんの松明が灯され、たくさんの兵士たちの姿が映し出されていました。
弓矢が放たれました。
それをかいくぐり、兵士たちの頭の上を踏み台にしていきました。
隣の屋根まで辿り着いていました。
「逃がすな!!」
「追え、追え!!!」
屋根の上に追いかけてきました。
しかし、次々と屋根を飛び越えて、兵士たちの姿は見えなくなっていました。
南の方角へ向かっていき、フェルマーの丘まで辿り着きました。
子供たちと大きなコウモリのような魔物がそこに立っていました。
たくさんの子供たちが大きく手を振っています。
ぎゃあぎゃあと騒ぎ、子供たちの複数の声が聞こえてきました。
「遅いよ〜!!ずっと、待っているのにさ~!!」
「重くて大変だったよ~!!」
「連れてきてやったんだから感謝しろよな!!」
「ねえ、親に見つかっちゃったみたいなんだよ。どうにかしてくれよ~」
と、たくさんの子供が集まってきました。
隣に視線を向けると、大人ぐらいの大きさのコウモリの魔物が立っていました。
コウモリの魔物にはたくさんの子供たちが乗っかっていました。
コウモリの赤ちゃんを子供たちだけで育てたらしいのです。
妻の魔法によってコウモリと会話ができるようになったと喜んでいました。
子供たちは妻に操作されていたわけではないようでした。
しばらく話をしてから、妻はたくさんの子供たちに話しかけていました。
「さあさあ、もう帰りなさい。大人たちに見つかったら大変なことになるからね。それにね、私たちは町のお尋ね者になっちゃったの~。一緒にいるとみんな、殺されちゃうよ~~~」
そう言うと、妻は襲い掛かってくるクマみたいなポーズをしていました。
ゲラゲラと子どもたちが笑い転げています。
「もう帰りなさい。さあ、早く準備して!!」
子供たちは不満を口にしています。
大きなコウモリが子供たちの後を護衛の兵士のように付いていきました。
そういえば、町人がグレース平原で魔族が現れると心配していたのを思い出しました。きっと、あれはコウモリのことだろうなと私は思いました。
子供たちがいなくなると、妻は私に話しかけてきました。
「あなたにお願いがあるの、異世界人を目覚めさせてほしいの。あなたに渡していた青い石を出して……」
私はポケットから青い石の欠片を取り出しました。
妻は異世界人を運んできます。
それは教会にいた異世界人でした。
私は彼の顔を見つめました。
幸せそうに、異世界人は眠りについています。
読んでくれてありがとうございます!!




