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国王との謁見⑤

 ギルド長は鬼人の少女に回復魔法をかけていました。


 鬼人の頬には赤みがさしてきました。先ほどの攻撃は死に至るほどのものであったと思います。しかし、鬼人の生命力のせいなのか、肉体は回復に向かっているようでした。


 

 その間、私は妻の言葉を考えていました。魔族とはなんだろうかと考えていました。初めて、妻と出会った頃のことを思い出していました。


 春の匂いがした日のことでした。


 雪が解けはじめ、白い山々の景色が変わり始めた頃のことです。私は妻に出会いました。春の訪れを感じ、妻は楽しそうに笑っていたのを思い出していました。


 あの笑顔はいまも変わりはないと思っていました。

 そう信じたいと思っていました。

 しかし、妻を信じることができるのだろうか、と思ってもいました。



 すると、小さな声が聞こえました。



「勇者になってほしくなかったの……」




 妻の声がした気がしました。

 妻は私の方を見つめています。勇者になってほしくなかったと言ったように思い、一瞬、私はドキリと胸がざわついていました。ただ、妻は自分が偽の勇者であると知っているはずでした。



「どうして、そんなことを言うの……」


 私は返事をしていました。

 それを聞いて、妻の声が聞こえました。


「右手に勇者の紋章が出た時、魔族である私には不安しかなかったの……」


 私は戸惑っていました。


「不安!? あんなに喜んでいたじゃないか……」

「そんなことはないわ! あなたはそう思いたかっただけだと思う。私は全く喜んでいなかったのよ……」


 私は返事ができませんでした。


「そんなことはありえない……」

「私は、あのまま一緒に村で過ごしていたかったのよ……」


 私は首を左右に振りました。


「じゃあ、どうしてここに来たんだろうか、こんなことをしても意味なんてないじゃないか……」

「そう……、意味なんてない。あなたが勇者になってほしくなかった。ただ、私には魔族の血が流れているんだから。でも、あなたは謁見をしたいのだと思って……」


 魔族という言葉を聞いていました。


「ねえ、魔族って何の話なんのことだい?」

「私は魔族なの……」



 妻が笑ってました。

 子供のころに見た笑顔のようでもありました。



 ギルド長の声が聞こえました。


「はははっ魔族とか信じられないですね。こんな堂々と話をされたら対応にも困りますよ……」


 

 彼は妻に剣を振り下ろしました。

 しかし、通常の武器ではダメージを与えることができないようです。


「何をするの。あなたは私を倒せないわよ……」


 妻の口が動きました。

 それはとても静かな声でした。


 

 離れ際に、ギルド長は炎の魔法を唱えました。

 大きな炎の塊が落ちてきました。熱風と共に爆発が起きると、部屋の中を炎が覆っていきました。

 しかし、妻は無傷のようでした。


 妻が私を見つめています。


 

「覚えている? あなたが7歳の頃、ある出来事によってあの村を消滅させてしまったのよ。いまの村は私が作ったレプリカと人形でしかない………」


 アティーナは大きな斧を振り下ろしていました。

 妻はその斧を掴むと、刃先が腐ったかのようにボロボロに崩れ落ちていきます。

 彼女は聖なるナイフを取り出ていました。


 私は呆然としていました。

 私は理解ができていませんでした。


「7歳の頃だって……」


 と、呟いていました。

 

 しかし、私には記憶が残っていないのです。

 その頃、私は妻と出会っていたということなのか、ただ、思い出そうとすると、激しい頭痛に襲われていました。

 

 村が消滅したとと聞いて、私は戸惑ってしまいました。

 

 


読んでくれてありがとうございます!!

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