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終業式


 師走を迎え、あっという間だった二学期の終業式を迎える。


「であるからして、瑞穂学園の生徒として恥ずかしくない新年を迎えて欲しいと思います。そして——」

 

 壇上では校長先生の挨拶が行われている。

 すると、叶の隣にいた御言が視線を壇上に向けながら口を開いた。


「もう冬休みかぁ……あっという間だなぁ……」

「御言は年末年始はどこで過ごすの? やっぱり実家に帰るとか?」


 叶が尋ねると、御言は「んー」と少し困った様子で眉を下げた。

 

「実はちょっと訳あって、今年は帰らないんだ」

「そうなの? じゃあ年越しは理事長の家?」

「うーん、その予定なんだけど……」


 煮え切らない反応のまま、御言は続けた。


「私がいるとどうしても明美ちゃん達に気を遣わせちゃうんだよね。年末年始はゆっくりしていてほしいから、どこか宿でも取ろうかなって思ってたんだけど……宿高すぎ……初売りのために貯めておいたお小遣い吹き飛びそう」

「ははは……流石にそれは現実的じゃないね」


 苦笑いを浮かべた叶は少し考えたあと、何でもないことのように口を開いた。


「それなら、私の家で過ごす?」

「えっ!?」


 予想外の提案だったのか、御言が勢いよく叶へ振り向いた。


「いいの!? 迷惑じゃない!?」

「うん。私以外誰もいないし、むしろ御言がいてくれたほうが賑やかになって嬉しいかも」

「うぅ……叶ぇ……!」


 感極まった御言が、叶に向かって徐々に両手を広げる。

 このあと彼女が何をするつもりか、叶には容易に想像できた。


「ストップ御言、今抱きついたら怒られるよ」

「ど、どうしてわかったの……」

「まだ一年も経ってないけど、御言のことならだいぶわかるつもりだよ? 私」

「ぐ!」


 御言は堪えながらも、徐々に叶との距離を詰めてくる。


「か、叶がそういうこと言うから……身体が言うこと聞かない……」

「御言!? 駄目だって!」


 叶が慌てて御言の腕を押さえる。

 その時だった。


「そこ。私語を慎むように」


 少し離れた場所から教師の声が飛んできた。


「「すみません……」」


 周囲から注目を浴びた二人は、揃って頬を赤らめる。

 叶は気まずそうに視線を泳がせ、御言もさすがに居たたまれなくなったのか、小さく肩を縮めた。


「……御言のせいだからね」

「ご、ごめん……」


 二人はそれ以上言葉を交わすことなく、逃げるように視線を壇上へ戻す。

 しばらくして、今度は聞こえるか聞こえないかほどの声で御言が呟いた。


「そういえば、もうすぐ叶にとってビッグイベントがくるね」

「……うん」


 叶が小さく頷くと、御言の視線は少し離れた場所に並ぶ新へ向けられた。


「新との誕生日デート、どこ行くか決めたの?」

「うーん……新は私の行きたいところに行こうって言ってくれてるけど、まだ熟考中」

「……そっか」


 御言が嬉しそうに口角を上げる。

 それが少し不思議に思えた。


「御言は複雑じゃないの?」

「新と叶が二人きりで出かけること?」

「うん」

「もちろん羨ましいなって思ってるよ? でも、私は稲守祭の時に二人きりで回ったし……良い思い出もいっぱい作らせてもらったから」


 御言はにっ! と笑った。


「叶も楽しんできてね」

「……ありがと御言」


 叶も新を見る。

 二人きりで出かけるのは初めてじゃない。


 だが、デートの日はクリスマス。


 特別なひと時を、大好きな人と過ごせる。

 そう考えるだけで、胸がむず痒い。


 今年の誕生日はきっと、素敵な一日になる。

 そう期待せずにはいられなかった。

 

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