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狐の恩返しは余命宣告でした【2nd Single MV公開中】  作者: Echo&Ink
包まれるの赤か、それとも赫か
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夕食、防衛本能


 課題を終え、新達は交流センターを後にして宿泊先の施設へと移動した。

 それぞれ割り当てられた部屋に荷物を置き、しばらくして夕食の時間を迎える。


 この研修会の目的は他校との親睦を深めること。

 当然この時間も、水瀬と白石と同じ卓を囲むことになっていた。


「まじ! あの銀髪の子、藤宮の婚約者なの!?」


 会場に水瀬の声が響き渡る。その隣で慎ましく咀嚼をしていた白石も、口元に手を添えて驚きの表情を浮かべていた。


「今時、学生のうちに婚約なんてあるんですね……」

「はい、ですから誤解されるような行動は控えてもらえると助かります」


 新が小さくため息をつきながら汁物を啜る。

 すると、白石は少し離れたところで給仕をする御言と叶へ視線を移した。


「では、あの青い髪の方は?」

「幼馴染だ」

「幼馴染……」


 白石が呟きながら、叶を見続ける。

 その視線に気付いたのか、叶がこちらを見た。


 叶の視線はすぐに新へ向く。

 昼間のことを根に持っているのか、ぷくっと頬を膨らませる。それを見ていた白石は再び口を開いた。

 

「あの幼馴染の方は、どうしてあそこまで藤宮先輩に怒っていたのですか?」


 言われてみれば、なんでだろうな?


 言葉に詰まった新の代わりに、ニヤリと笑った水瀬が口を開いた。


「あれはどう見たって、妬いてんじゃないの? 目の前で私や凜が藤宮に色目使ったから」

「ひ、陽菜さん! 私は色目なんて使ってません!」

「凜、いつも言ってるけど、初対面の男相手に素であーんするのは気を付けなさいな。あれが一番男子に効くんだから」

「どういうことですか?」

「そういうところよ……あ、藤宮、私トマト食べられないから食べて」

 

 水瀬がミニトマトを箸で摘む。

 そして新の口元へ運んだ。

 

「はい、どーぞ」

「水瀬先輩!? 食べるのは構いませんが、自分が今なに話してたか忘れたんですか――ひっ!?」


 新が反射的に体を反らせて、ミニトマトから距離を取った時だ。

 背筋にとてつもない悪寒が走った。


 出所は叶と御言ではない。幸い彼女達は給仕の作業で、こちらを見ていない。

 

 だが確かに禍々しく、刺すように鋭い気配はすぐそばにある。

 身体の奥底にある防衛本能が、全力で警鐘を鳴らしていた。

 

 新は恐る恐る振り返る。

 少し離れた卓で、紬がこちらを見ていた。


 左手に茶碗、右手に箸を持ったまま固まり、笑みはない。

 ただ恐ろしいほど冷たい目で、隠す気すらない明確な殺意を一直線にこちらへ向けていた。


 あ、まずい。

 これ以上はほんとにまずい。


 このままだとこの交流会も、第一回目にして血が流れるかもしれない。

 本気でそう感じた新は、すぐ立ち上がった。


「お、俺! ちょっとトイレに!」


 咄嗟に絞り出した言葉に水瀬がやんわりと不快な表情を浮かべた。


「ちょっと〜食事中にやめてよ」

「ははは……すいません」


 軽蔑されようが構わない。

 今は一刻も早く、水瀬が箸で摘んだミニトマトから逃げなければならないのだから。


「ト、トマトは俺の皿に置いておいてください! じゃ、行ってきます!」


 新は逃げ出すようにその場を離れた。


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