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六女の秘術


 月乃に連れられ、新は社から少し離れた場所にある古びた建物へとやって来た。

 

「……ここは?」

「いいから入って」

「いや、何するかくらい教えてくれても――」

「いいから早く!」

「はいはい……」


 新が中へ足を踏み入れる。

 中には古びた祭具や木箱が積まれ、月明かりが僅かに差し込んでいるだけだった。


「それで、何を証明すればいいんだ?」

「すぐにわかる……えっと……」


 月乃は辺りを見回すと、とあるものに手を伸ばした。


「これでいいかな」


 月乃がとったのは棚に置かれていた、古い狐のぬいぐるみだった。

 そして彼女は次に懐から一枚の札を取り出した。


「それ、何?」


 月乃は答えることなく札を新の額へ貼り付けると、人差し指と中指を胸の前で立てる。

 すると頭からぽんっと狐の耳が飛び出し、続いて着物の裾からはふわりと尾が現れた。

 御言と同じものだ。


「月乃ちゃん?」


 新が月乃を呼ぶと、額に貼られた札から青白い炎がぼっと燃え出した。


「うわ! 燃えてる!」

 

 突然燃え上がった札に、新は慌てて額へ手を伸ばす。

 だが、その手首を月乃がすぐさま掴んだ。


「触らないで!」

「いや、無理だろ! 燃えてるんだぞ!」

「熱くないでしょ!」

「……え?」


 言われて初めて、新は気づく。

 青白い炎は額で燃えている。しかし、月乃の言う通り熱さも痛みもまるでない。


「ほんとだ……」

「もう。途中で剥がしたら失敗するじゃない」

「失敗って、何する気だよ?」

「すぐわかるって言ったでしょ! とにかくじっとしてて! 集中しないといけないんだから!」


 月乃は二本の指を胸の前に立てたまま、むむむと力を込めた。

 頭上の狐耳がぴんと立ち、背後の尾がゆっくりと持ち上がる。呼応するように新の額で燃える炎も勢いを増していった。


「……なんか、嫌な予感するんだけど」

「喋らないで! 集中できない!」

「はい……」


 新が渋々口を閉じた、その直後だった。


「……なっ!?」

 

 額の奥がぐっと引かれる。

 まるで貼り付けられた札に頭の中身ごと引き寄せられているような、奇妙な感覚だった。

 

「な、なんだ……これ……」

 

 視界がぼやける。

 月乃の姿が二重に滲み、耳に届く音も次第に遠ざかっていく。

 

「月乃……ちゃん……?」

 

 声を出したはずなのに、自分の声さえ遠くから聞こえた。

 身体から力が抜け、膝をつく。

 意識だけが少しずつ身体から剥がされ、額の札へ吸い寄せられていった。

 

「ちょ……待っ……」

 

 手を伸ばそうとしても、指一本動かせない。

 ほどなくして新の意識は、その炎へ引き込まれるように途切れた。

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