↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
121/122

三人の童から


 今でもよく覚えている。あれは、一年で緑が最も美しい季節だった。


「待ってよー!」

「なにやってんだよー! 早く行こうぜ!」

「あ、二人とも! そんなに急いじゃ危ないよ……」


 三人の童が山道を駆けている。

 先陣を切るのはリュックを背負い、木の棒を持った男児。そのすぐ後ろを藍色の髪の少女、一、二歩離れて二人より小柄で黒髪の少女が続く。


「てっぺんでおにぎり食べたいって言ったのはお前達だろ? 早くしないと、お昼過ぎちゃうぞ!」

「そ、そんなこと言ったって〜!」


 息を切らす藍色の髪の少女が、必死に男児の後を追う。

 その背後で黒髪の少女が「きゃっ!」と足を滑らせた。


「大丈夫?」


 藍色の少女がすぐさま引き返して、黒髪の少女に駆け寄る。

 幸い大きな怪我はないようだ。


「あ、ありがとう……」


 黒髪の少女はすぐに立ち上がる。

 一方、先を行っていた男児は道の脇に目を向けていた。

 

「どうしたの?」


 男児の傍に駆けて来た二人のうち、藍色の少女が声をかけて、男児と同じ方へ視線を向ける。

 その先には小さな祠があった。

 長い間手入れされていないのか、木造の屋根は一部が崩れ、柱もあちこち傾いている。

 

 周囲には雑草が生い茂り、石段には枯れ葉が積もっている。お世辞にも立派とは言えず、今にも壊れてしまいそうだ。

 男児はしばらく祠を眺めていたが、やがて背負っていたリュックを地面に下ろした。

 

「よし!」

「どうしたの?」

「ここ、綺麗にしようぜ!」

「でも、山のてっぺんに行くんじゃ……」

「神様が可哀想じゃん!」


 そう言って、男児は祠の周囲に積もった枯れ葉を両手でかき集め始めた。

 

「もう……しょうがないなぁ」

 

 藍色の髪の少女も隣にしゃがみ込み、散らばっていた小枝を拾い始める。

 

「わ、私もやる!」

 

 黒髪の少女は二人の真似をして、祠周辺の雑草を引き抜き始めた。

 

 それからどれくらい経っただろう。

 三人の手や服がすっかり汚れた頃には、祠の周りは見違えるほど綺麗になっていた。


 どこか誇らしげな気持ちとともに、三人は祠へ手を合わせる。

 

 忘れもしない。

 あれが始まりだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。