三人の童から
今でもよく覚えている。あれは、一年で緑が最も美しい季節だった。
「待ってよー!」
「なにやってんだよー! 早く行こうぜ!」
「あ、二人とも! そんなに急いじゃ危ないよ……」
三人の童が山道を駆けている。
先陣を切るのはリュックを背負い、木の棒を持った男児。そのすぐ後ろを藍色の髪の少女、一、二歩離れて二人より小柄で黒髪の少女が続く。
「てっぺんでおにぎり食べたいって言ったのはお前達だろ? 早くしないと、お昼過ぎちゃうぞ!」
「そ、そんなこと言ったって〜!」
息を切らす藍色の髪の少女が、必死に男児の後を追う。
その背後で黒髪の少女が「きゃっ!」と足を滑らせた。
「大丈夫?」
藍色の少女がすぐさま引き返して、黒髪の少女に駆け寄る。
幸い大きな怪我はないようだ。
「あ、ありがとう……」
黒髪の少女はすぐに立ち上がる。
一方、先を行っていた男児は道の脇に目を向けていた。
「どうしたの?」
男児の傍に駆けて来た二人のうち、藍色の少女が声をかけて、男児と同じ方へ視線を向ける。
その先には小さな祠があった。
長い間手入れされていないのか、木造の屋根は一部が崩れ、柱もあちこち傾いている。
周囲には雑草が生い茂り、石段には枯れ葉が積もっている。お世辞にも立派とは言えず、今にも壊れてしまいそうだ。
男児はしばらく祠を眺めていたが、やがて背負っていたリュックを地面に下ろした。
「よし!」
「どうしたの?」
「ここ、綺麗にしようぜ!」
「でも、山のてっぺんに行くんじゃ……」
「神様が可哀想じゃん!」
そう言って、男児は祠の周囲に積もった枯れ葉を両手でかき集め始めた。
「もう……しょうがないなぁ」
藍色の髪の少女も隣にしゃがみ込み、散らばっていた小枝を拾い始める。
「わ、私もやる!」
黒髪の少女は二人の真似をして、祠周辺の雑草を引き抜き始めた。
それからどれくらい経っただろう。
三人の手や服がすっかり汚れた頃には、祠の周りは見違えるほど綺麗になっていた。
どこか誇らしげな気持ちとともに、三人は祠へ手を合わせる。
忘れもしない。
あれが始まりだ。




