休み明け、騒がしい教室
冬休みが明け、始まった三学期。
いつもより少しだけ賑やかな校舎内では、生徒達が冬休みの思い出や年末年始の出来事を語り合っていた。
そんな中、登校してきた新は教室の扉を開く。
側には叶と御言もいた。
「みんな、おはよー!」
御言の明るい声に、クラスメイト達が「おはよう!」「あけおめ!」と返す。
その注目が逸れぬ内に、御言はぱんぱんと手を叩いた。
「クラスのみんなにご連絡がありまーす! 実は私と新の婚約は……解消となりました!」
「「え……えぇ!?」」
一瞬の静寂の後、教室中がどよめく。
直後、数人の女子が御言を取り囲んだ。
「ど、どうしていきなり!? というか、なんでそんなに明るいの!?」
「まぁ……事情があってね」
御言は新の隣に立って、にっこりと笑顔を浮かべた。
「この通り、新と仲が悪くなったわけでもないし!」
「そう……まぁ、私達としてはギスギスしなくて助かるけど……」
「でしょ? お騒がせしちゃってごめんね!」
手を合わせた御言にクラスメイト達はいまだ動揺を隠せずにいる。
その横から一人の女子生徒が声をかけた。
「てことは〜藤宮は今フリーだと」
声の主は麻だった。
相変わらず無気力な笑みを浮かべながら、新達のもとへ歩み寄ってくる。
「はい、ごめんよー」
囲んでいた女子達の合間を抜け、麻は新の隣に立つ叶へちらりと視線を向けた。
「てっきり私は修羅場かと……叶と稲荷坂が険悪になったら嫌だよぉ?」
「大丈夫だよ、紅林ちゃん! なんなら叶とは前より仲良しだから!」
御言が叶の腕に抱きつく。
「ちょ、御言! 朝からもう!」
二人の仲睦まじい姿を見た後、麻は次に新を見た。
「ところで藤宮」
「なんだ?」
「あんたもそろそろ気張らないとね〜」
「どういうことだよ?」
麻は「たはは〜」と笑って、両手を頭の後ろに組んだ。
「これ以上は私の口からは言えないなぁ〜ねぇ叶?」
「麻ちゃん! その話はもう……!」
叶は慌てて口を開いたものの、途中で言葉を飲み込む。
頬を赤く染めながら新をちらりと見る。新自身もまた少し照れくさそうに頬を掻いていた。
そんな二人を見て、麻は一瞬、時が止まったように固まる。
そして、頭の後ろで組んでいた両手を解いた。
「……ほほぉ〜? なるほど〜こりゃめでたいねぇ」
「ま、麻ちゃん……?」
「いやいや〜、おめでとう。叶」
麻がぽんと叶の肩を叩く。
「長かったねぇ〜」
「う、うん……ありがとう」
叶は照れながらも、小さく頷く。
二人のやり取りは、他の女子生徒達にもしっかり通じた。
「え……えぇ!? もしかして!?」
「叶が!? ついに!?」
「ちょっと待って! それってそういうこと!?」
「ねぇ叶! 本当なの!?」
女子達が一斉に叶へ詰め寄る。
突然の質問攻めに叶はたじろいだものの、隣に立つ新と目が合うと、小さく頷いた。
「う、うん……実は私達、付き合うことになったの」
その一言で、教室中が沸き立った。
「「きゃああああっ!」」
「おめでとう! 叶!」
「やっと!? やっとなのね!?」
「ちょっと! いつから!? どっちが告白したの!?」
「ま、待って! 一度に聞かれても答えられないよ!」
叶は両手を振って制止しようとするが、興奮した女子達には通じない。
一方新の肩には、他の男子生徒が絡み付くように腕を回した。
「藤宮! お前ってやつは!」
「うわっ! なんだよ!」
「うるせー! この勝ち組が!」
「稲荷坂さんと柚木さん、どっちがお前とくっついても俺達は見守るつもりだったけど……そうかぁ! 柚木さんかぁ!」
新は男子達から容赦なく肩を揺らされる。そこに智也がやや呆れた笑みを浮かべながら近づいてきた。
「ほんと……見てる側からしたらやっとかよって感じだよ……なぁみんな?」
「「「「ほんとにそれ!」」」」
これまでにないほど声を合わせたクラスメイト達に、新は自分が今までいかに気を使わせていたのかを思い知らされた。
「お前ら……そんなにわかってたのかよ」
「わかってなかったのお前だけだっつーの!」
「いや、でも叶が俺のことを好きだったなんて……」
「「「だからそれがわからないのが、わかんねぇんだよ!」」」
男子達から一斉に突っ込まれ、新は言葉に詰まる。
その側では叶と御言がうんうんと、それは深く頷いていた。




