街灯が照らしたのは
すでにイルミネーションの光は遠ざかり、辺りは等間隔に置かれた街灯が照らす見慣れた住宅街が続いている。
その中を新は息を切らして駆ける。やがて、叶のいるであろう公園が見えてきた。
「叶!」
静かだった一帯に声を響かせながら公園へ飛び込む。
ベンチ、滑り台、ブランコ。息を整える間もなく視線を巡らせるが、叶はおろか人影すら見当たらない。
「叶!」
もう一度呼ぶ。
返ってくるのは、自分の声だけた。
「……どこに行ったんだ」
肩で息をしながらひとりでに呟くと、ポケットの中でスマホが振動する。
取り出してみると画面は紬からの着信を記していた。
「紬?」
通話ボタンをタップし、スマホを耳に当てる。
「紬……どうした?」
『お兄様! 今どこですか!?』
電話越しの妹の声は、ひどく憔悴の色を帯びていた。
「今、叶を探して家の近くの公園にいる! それよりもそんなに慌ててどうした!」
『叶お姉様が……叶お姉様が!』
「叶になにがあったのか!?」
『お姉様が……消えてしまったんです!』
「……はっ?」
新はスマホを耳に当てたまま、呆然と立ち尽くした。
「叶が!?」
『さっきまで一緒にいて……ほんの少し目を離した隙にいなくなってしまったんです……ど、どうしようお兄ちゃん! 私のせいで……』
「紬のせいじゃない! とにかく今どこだ!」
『もしかしたらお兄ちゃんを探しに戻ったのかも……と思って駅前の方に向かってる!』
「駅前だな! 俺も行く!」
通話を切り、スマホをポケットにしまう。
「叶……!」
嫌な予感が胸の中で急激に膨れ上がる。
新が駅の方へ振り返ろうとしたその時だった。
バチッ!!
「あがっ!?」
突如背中に刺すような鋭い痛みが走る。
全身の筋肉が強制的に引き攣り、新は言葉にならない声と息を吐きながら膝から崩れ、冷たい地面に横たわった。
「ぐ……がっ……」
口が上手く回らず、痙攣を繰り返す新に影がかかる。
一人の女が新を見下ろしていた。
「久しぶりね、藤宮君」
聞き覚えのある声だった。
女の手にはバチチッ! と青白い火花を散らす黒いスタンガンが握られていた。
「お……まえ……は?」
新は痺れる身体を必死に動かし、女の顔を見上げる。
その顔が街灯に照らされると、新は目を見開いた。
「……青潟?」
「夏は世話になったわね。また会える日を楽しみにしてたわ……」
「もしかして……叶もお前が……」
「流石藤宮君! ご名答!」
にっこりと笑う綾乃はしゃがみ込んだ。
「藤宮君が悪いのよ? いつまで経ってもあの女から離れないんだもの」
「叶に……なにをした!」
「まだなにもやってないわ……まだね」
「叶に手を出してみろ……!」
「……その威勢もいつまで続くかしら?」
綾乃はスタンガンを新へ近づけた。
「これも全部……あなたが悪いの。藤宮君」
バチッ! と鋭い音と共に新の意識は途絶えた。




