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19話 面接2

 千紘ちひろさんはどうしたんだろう?


 一旦話を聞き流して、頭を働かせる。


 目の前の人は多分お姉さん。

 銀のメッシュは入ってるけど、髪の大部分は黒で髪も長い。

 メッシュ入れるくらいなら、多分すぐ出来る。


 写真の雰囲気はどっちかというと目の前の人に近い。

 そしてお姉さんならこの人も高重たかしげ


 あー……そういうこと?

 うわーマジかよ。


 目の前の人物こそが本当の講師であるという結論に至り、体中にあふれていたやる気が急速に減退していくのを感じる。


「若いのに耳が遠いのか。どうしてこの道を選んだ?」

「んーそうですね……。偶然とはいえ資格を得たので、自分にしか出来ない人の役に立てる仕事をしたいと思ったからです」


 もう適当でいいや。


 とはいえ一応仕事だしな。

 とりあえず模範解答っぽい感じで答えていこう。

 なんか厳しそうなイメージだから……こういう時は無難な対応が一番だろう。


「なるほど。いい心がけだな。では二つ目の質問だ。鳥村君。君はこれから何をしたい?」

「何をしたいですか……。やっぱり世の中に溢れた穢れを浄化して、町に住む人たちの平穏な生活を守っていきたいですねー」


 岩藤さんの言葉をちょっと借りる。

 まあ別にそこまで嘘じゃないし。


 そういう気持ちはちゃんとある。

 ただこの面接にはやる気はこれぽっちもないけど。


「そうか。だからそれを成すために、今回の訓練の講師として私を選んだということだな?」

「はい。今のお……僕にはまだまだ力が足りないので、会社の先輩が師匠と尊敬する人にどうしても教えてもらいたかったんです」


 そういえばうちって会社なのか?

 事務所っぽいところとかあるし、まあいいか。


 それにしても我ながら、何かスラスラとそれっぽい言葉が出てくるな。

 こういう仕事してて、度胸がついてきたってことかな。


「その言葉に嘘、偽りはないな?」


 思わずサッと目線を反らすほどの圧のある眼差しを受ける。


 こわっ。


 今からでも、やっぱり全部嘘でしたって謝っとくべきか?

 でもなぁ。それ言ったら色々終わりでしょ。


 ここまで来たら突き通すしかない。


「はい」


 手の震えを誤魔化すために、服を握りしめながら力強く言い切る。


「今ならまだ引き返せる。これが最後だ。本当に嘘はないのだな?」

「も、もちろんです」


 あぶねー。

 なんとか言い切ったぞ。


 でも最後、圧力に負けてちょっと目が泳いじゃったかも。


 まあでもこれできっとこの面接落ちてるだろーな。

 多分俺の嘘バレてそうだし。

 でも立場上これ以上追及はされないはずだ。


 勝ったなこれは。


「わかった。合格だ。さっそく訓練を始めるぞ」

「へ?」

「なんだその気の抜けた返事は。あぁ、大方不合格になると思っていたんだろう?」

「あ、いえそんなことは……」


 う……。

 やっぱりバレたか。


「もう隠さなくていい。これからは素直に思いの丈を話しなさい。嘘をつくにしても場面を選ぶことだ。とにかくこれからしばらくの間は師匠と弟子の関係になるのだから、その間くらいは素直に喋りなさい」

「はい、すいません。でも、そんなにわかりやすかったですか?」


 まあいいや。

 厳しそうだけどかといって話がわからないタイプではなさそう。

 それにまた講師選ぶのも面倒だし。


 結果オーライってところかも。


「ああ。自分でも気づいてないかもしれないが、目が泳いでいたり服の袖を掴んだりして落ち着かない様子だったからな」


 あーそうだったのか。

 思い返してみると思い当たる節が……。


「納得したのなら行くぞ。訓練だ」

「え、本当に今からやるんですか?」


 俺の言葉に高重さんが頷く。


「そうだ。私もそれなりに忙しい身だからな。これから一週間は寝食を共にしてビシバシ訓練するつもりだ」

「えっ、一週間も!? あの、お忙しいんじゃ……」

「あぁ本来なら役目の空き時間に少しずつ教えるつもりだったが、気が変わった。月見と違って今回の弟子は中々ひねくれ者のようだからな」


 マジか。

 今から辞退……なんて言い出せるわけもないし、どうしよう。


「出来ればですね。その、手加減とか……」

「安心しなさい。訓練は特別な白界内で行う。だから実際の自分が死ぬことはない」

「いや、それって裏を返せば死ぬような訓練させられるってことじゃ……」

「当然だろう。それくらいのことをしないと、たった一週間では大して何も身に付かない。まあ実際死なれると困るからそこは安心しなさい」


 安心できねー。


 や、ヤバイ。

 これは俺が一日でバックレたブラック企業と同じ気配がする。

 

 ここは戦術的撤退だ。


「あのー辞退を――」

「ああ、そういえばもしかして千紘ひちろに気があるのか?」

「え? いやーそれはその……」

「あの子は良い子なんだが、中々いい人が見つからなくてなぁ……」


 そう言って高重たかしげさんがチラチラと俺の方を見る。

 くっ、こんな見え透いた罠引っかかるわけ――


「どこかにやる気がある好青年がいれば、身内として後押ししようと思っているんだが」

「師匠。早く訓練やりましょう! やる気だけなら人一倍あります!」

「いい返事だ。では行くぞ」

「はい!!!」


 悲しいかな。

 気づけば元気よく返事をしている自分がいた。

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