「ぼくには美しい姉がいる」
ぼくには美しい姉がいる。
ぼくがお願いしたら勉強を教えてくれる。ぼくが困っているのを見ると助けてくれる親切な姉さん。。
姉さんは美人で何でも知っていて何でもできて、だけど、いつも悲しい目をしていた。
ぼくは姉さんが好きで、寂しそうにしているのが嫌だったから、もっと仲良くなりたいと思っている。姉さんにもそう伝えたことがある。
でも、姉さんは困ったような顔でぼくの頭に手を置いて、
「私が君に優しいのは役目みたいなものなんだ。それ以上の何かは望まないで欲しい。君は悪くない。……誰も悪くないから、どうか気に病まないで欲しい」
そう言って笑った。でも、それは苦笑いだとぼくは思った。ちっとも楽しそうじゃなかったから。
姉さんはやっぱり遠い人だ。
ぼくの周りにもきょうだいがいる友だちはたくさんいるけれど、……兄や姉について愚痴もたくさん聞くけれど、みんなきょうだいで距離が近いんだと感じる。
姉さんはぼくをバカにしたりいじめたりしたことはない。
その代わりに、本音を打ち明けてくれることもなかった。
同じ家に暮らす家族なのに、姉さんは近くて遠い。これはまるで…………。
優しい他人、という言葉が思い浮かんで、ぼくは心が寒くなった。
ぼくは一緒に暮らす姉さんを家族だと思っている。でも、姉さんもそう思ってくれているかわからない。
きっと答えてくれないだろうし、それ以上にぼくは姉さんに確かめるのが怖かった。
もし姉さんに家族だと思われていないとしたら。
ぼくはとても悲しい。それに、悔しい。
姉さんが寂しそうにしているのに、同じ家にいるぼくが何もできないなんて、そんなの嫌だ。
姉さんが心から笑っているところを見たい。一緒にいるのに寂しそうにして欲しくない。
父さんと母さんも何故かいつも姉さんに遠慮しているような気がする。姉さんに悪いことをしてしまって、それを許してもらえずに、ただ申し訳なく思い続けているかのように。
でも、父さんと母さんにできなくても、ぼくは諦めたくない。
姉さんと仲良くなりたい。
だから。
ぼくーー雲居夕霧は姉さんの弟になりたい。
そんな訳で、サードシーズン開始です!
このシーズンの主人公・夕霧くんをよろしくお願いします。




