8. ファンタジー!!
精霊たちの視線が集まる中、最初に口を開いたのはラズリだった。
「まずは森の状況を把握しないといけませんね」
落ち着いた声音。
「オブセルヴァーレが力を取り戻せば、状況把握はたやすいのですが……」
パールが続ける。
「お、オブ?」
どうしてこう名前がめんどくさいんだろう。
「オブ……なんとかさんっていうのが、もう一人の精霊さん?」
たしか光の精霊だったか……
天井近くから低い声が降ってきた。
「アイツは観測する事しか出来ないからな。起きても変わらん。オレの仕事が増えるだけだ」
ディアンとは仲が悪いのか。
――あれ?
腕を組み、少し考える。
光精霊が観測して、闇精霊が解析する……。
それ、普通に相性いいコンビじゃない?
むしろ最強の情報班では?
……などと思ったが、口に出すと面倒そうなのでやめておいた。
「じゃあどうする? 森は危ないみたいだけど」
話を戻すと、ラズリが一歩前に出る。
「ワタクシがご案内いたしましょう」
「大丈夫なの?」
思わず確認してしまう。
するとラズリは、ちらりとネルの方を見た。
「本来はそこのトカゲが護衛を務めますが――」
ぴたり、と間を置く。
「見ての通り、今は役立たずですので」
「シャーッ!」
即座にネルが威嚇するが、可愛らしい体では正直あまり迫力はない。
「そもそも、そのようなトカゲなどいなくても何の問題もございません」
完全に追い打ちだった。
「シャーッ!!」
さっきよりちょっとだけ怒りが増した。
……仲、悪いなこの二人。
いや、むしろみんな仲良しなのか。
「そ、そう? ならお願い……」
若干の不安を覚えつつも、頷くしかなかった。
森の視察に向かうため、動きやすいパンツスタイルへとパールが着替えさせてくれた。全てやってくれようとするので丁重にお断りすると少し拗ねられてしまったが。
(自分が世話をされる側になるとは……)
ぼんやり考えながら、玄関へと降りると。
「え、どちらさま?」
思わず足を止める。
そこにいたのは――
銀色に輝く真っ白な毛並みの、大きな虎だった。
堂々とした体躯。しなやかに揺れる尾。瑠璃色の瞳が、まっすぐこちらを見つめている。
どう見ても、野生動物。
いや、むしろ神獣とかそっちの類いだ。
警戒する私に、その虎は優雅に一礼するように頭を下げた。
「ラズリでございます」
「ラズリなの!?」
どう考えても、さっきまでの“風の精霊(人型執事バージョン)”と一致しない。
「はい。こちらの方が移動には適しておりますので」
さらりと言ってのけるラズリ。
確かに――速そうではある。
めちゃくちゃ速そうではあるけど。
「え、じゃあ……乗っていいの?」
「もちろんでございます」
にこやかに(※虎だけど)返される。
……なんてファンタジー!!
――こうして私は、巨大な白虎に乗って、三百年放置された森へと本格的に足を踏み入れることになったのだった。
「それじゃあ――まずは、この森の現状を知るところからだね」
白虎の背に手をかける。
この森がどんな場所なのか――まだ、何も知らないまま。




