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境界の森の管理人~森を守るため、世界を締め出しました~  作者: 久東芽蕗
第一章 森と精霊

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12. 領域展開

 

 ……とんでもない仕事、引き受けちゃったかもしれない。


 でも。


(引き受けたし……もう他に行くところもないし)


 私は小さく息を吐いた。


(やるしかない、か)


 森を少しでも良くする。


 それが、今の私に与えられた役目なら。



 とはいえ――。

「……どうしたものか」


 考えても、いい案なんてひとつも浮かばない。

 そもそも、私はただの一般人だ。

 森の管理なんて、どうすればいいのかすら分からない。



 一人で唸っていると、


「ワタクシに良い考えがございます」


 妙に自信満々な声がした。


「コハル様にしかできないことが」


 ……にこり。

 ラズリが、やけに綺麗な笑顔を向けてくる。

(なんか怖い)


「私、何もできないけど……」

 正直な感想を口にすると、

「そんなことはございません。ワタクシの言う通りに力を使って頂ければ、必ず成功致します!」


 断言された。


「キュッ!キュッ!」

 横でトカゲが何か言いたげに鳴く。


「うるさいですね。役に立たないのですから黙っていなさい」


「キュッ!? キュッ!」

 一蹴。

 ……うん、いつもの。


「……この森が少しでも良くなるなら、私にできることはやるよ」


 少しだけ迷って、でも結局そう答える。


「決まりですね! では、さっそく――」


「キュー!キュー!」


「本当にうるさいですね。踏み潰しますよ」


「シャゥ……」

 さっきまでの威勢はどこへやら、弱々しく縮こまるトカゲ。

 ……可愛く見えてきた。



「それではコハル様。まずは、ワタクシ達の城を中心に領域を展開してください。結界魔法の応用です。コハル様なら簡単ですよ」


「あぁ、腹立たしいのはワタクシも同じですが今は意識しないように」


 言われるままに、私は指を組み合わせた。

 ぱんっ、と乾いた音。



 集中力と想像力、そして信じる心――



 怒りは一旦忘れて森を守ることだけ考えよう。


 意識を集中させると、空気がわずかに震える感覚がある。


「次は、城の領域を先程見て回った全ての境界まで、拡げてください――森を切り離すイメージで」


「え、そんな難しいこと……」


 言いかけたけど、ラズリは当然のようににっこり頷いている。


 頭の中に、さっき見た景色を思い浮かべる。

 歪んだ入口、淀んだ空気、荒らされた森。


 私はもう一度、印を結び直す。


「……っ」


 ――“何かが、引き裂けた”気がした。

 空気が、一瞬だけ静止する。

 風も、音も、気配も。

 まるで世界そのものが、息を止めたみたいに。


 目に見える変化はない。


「……成功、した?」


 自分でもよく分からない。


「キュィ……」

 トカゲも不安そうに鳴く。


 その直後。


「さすがコハル様です!」


 その声は弾んでいるのに、 なぜか背筋がぞくっとした。


「完璧です」

「……これで、外からの干渉は全て遮断されました」


「ほんとに? 実感ないから、褒められても微妙なんだけど……」

 とはいえ、悪い気はしない。

 むしろちょっと嬉しい。


「コハル様のお陰で、全て解決致しました。あとのことはワタクシ達にお任せください」

 ラズリは上機嫌だった。



 ……本当にこれでもう大丈夫なのかなぁ。



 結界を張っただけなのに、妙に疲れている。

 ラズリも同じなのか、無言で城へと戻り始めた。

 ――ちなみに。

 トカゲは、何もしていない。


 ふと、振り返る。

 さっきまで感じていた“境界の気配”が――ない。

 あの嫌な空気も、 魔物の気配も、 ぐちゃぐちゃした何かも。

 何もかも、綺麗に消えていた。

「……あれ?」

「どうかされましたか?」

「ううん……なんでもない」





 城へ戻ると、パールが出迎えてくれた。


「おかえりなさいませ」


 その直後。


「お前! なんてことしてくれたんだ!」


 珍しく甲高いディアンの声が飛んできた。


「……ん?」


 私は思わず首をかしげる。


「何が?」


「まあまあディアン。コハル様はお疲れですよ」

 ラズリが軽くいなす。

「パール、お茶をお願いしますね」



 そのやり取りの最中、

「おかえり〜こはるぅ」

 ぽすっ、と何かが飛び込んできた。

「うわっ」

 マイトが腕の中に収まった。

「あのね〜おなかすいた」

 私は苦笑して、その頭をなでる。

 もふもふだ。

「ちょっと休憩したら、ご飯作ってあげるね」

「やった〜」

 ……城の中は心地良い。



 席について、お茶を一口。

「お茶おいしい、ありがとうパール」

「おそれいります」

 上品な所作で一礼するパール。



「それで、どういうつもりだ」

 落ち着いたのかいつもの低く響く声に戻ったディアンが口を開く。


「だから何が?」


「お前……自分がやったことがわかっていないのか?」


 私がことん、と首を傾げて

「結界?」


「ちがーうっ!!!」


 ディアンは大きくため息をつき、ラズリを鋭く睨んだ。



「キュィッ!」

 ――俺は止めたぜ!

 とディアンに訴えるように、ネルが胸を張る。



「この森は、四つの世界へと繋がる道が存在致します……」

 パールが淡々と説明を始める。


「あ、それはさっきラズリになんとなく聞いた」


「そして今、コハル様が展開された領域によって」


 一拍置いて。


「“全ての道”は遮断されました」



「…………え?」





「えーーーっっ!?」


 思わず立ち上がった。

 部屋が静まり返る。




「……つまり?」

「この森は、世界から切り離されております」




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