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【第二章40】燃え盛ってもう手が付けられない

 文字通り身を焼く熱さから何とか逃れようと、その真っ黒に炭化した足が欠けるのも構わず逃げる人のような形をした影、泣きそうになりながらもなんとか救助しようと試みる人々、怒鳴りながら混乱した場を落ち着かせようとする人々、混沌とした場の中でも自分のなすことを果たす人々…

 顔を上げた先に広がるその…その目の直ぐ前の惨状に処理しきれなくなって、いや、脳が理解を完全に拒んでしまって呆然と突っ立っていると突然肩を掴まれ、驚きが勝って咄嗟に腕を振って振り払おうとした。


「ッと、オレだってオレ。あんまビビんなよ、イヤまあ気持ちが分からねえ訳じゃないが落ち着け。オレらがどンだけ焦ったって何かできるわけじゃァねえンだからヨ…悔しいがネ」


軽く頭を傾げて拳を避けた俊什(しゅんじゅう)は落ち着いた声で宥めてきた。その態度に引きずられて僕も深呼吸を繰り返して眼鏡の位置を直す。


「す、すみません。驚いて、咄嗟に動いてしまい…」

「いいっていいって。鍛えてンだから久藍の攻撃なンざ当たるわけないじゃん?気にしなくていいサ」


俊什はさりげなく僕を自身の背後に誘導しながら、前方で未だに叫びながら燃え盛る彼を厳しい表情で見据えている。

 その周囲には爆発に巻き込まれた人もいるのか、意識がない状態で引きずられて避難している人、火柱の中心にいる人に水をかけて消火を試みる人、意識がある人の怪我の手当てをする人など無茶苦茶な状態だった。


「い、いったい何が起きたんですか、これは」

「見てわかるとおりだヨ、人間が爆発したのサ。そう…()()の人間が…ありえないよね普通、人間がだヨ?こンな寒いのにサ、燃えるわけなくない?」


「つまり、天与礼者がこの件に関わっていると…?」

「信じたくない話だろ?オレもだヨ」


俊什は吐き捨てるように言ってッチっと舌打ちをする。やり場のない激情を抑える為か、帽子をぎゅ握ると、突然ぶつぶつと何か呟き始めた。それは口の中で言っている(よう)に近く、至近距離の僕ですら何を言っているのかを聞き取ることは困難だった。


「今良然に伝言残したからオレは別行動するヨ。どうする、久藍も一緒に来るか?」

「は!?、こ、この惨状をほったらかしにしてどこに行くって言うんです!?」

「だからだヨ。ここに居たってオレと久藍が出来ることッて無くない?ならこの事件の首謀者が周りにいないか確認しに行くンだ。向こうの目的が何であれ、騒ぎを起こしたなら他の共謀者とか、裏で操ってるヤロウとか近くにいて伺ってるかも知れねえし」


一理ある。ここに居たって僕は足手まといだろうし、だったら俊什と一緒に犯人を探しに行った方がいいのかもしれないが…


「で、ですが勝手な行動をしていいんですか…!?中将様に怒られたり…」

「大丈夫だよ、わたしが許可するからお坊ちゃまと俊什君は行っておいで」

「うっうわあ!?誰ですかまた!」

「あ、隊長のおっちゃん」


久々に会ったような感覚すら覚える橙恩はいつものにこやかな笑みはどこかへ消えて口元を引き絞っていた。彼と目が合うと橙恩はため息交じりに肩をすくめて、腰に手を当てた。


「まったく、こんなに混乱しているんじゃまともに指示も通りやしないんだから…軍人が聞いて呆れるね。まあまだ若いからか。そうそう、お坊ちゃん達の事はわたしがしっかりと報告しておきますからね。ただし俊什君、分かってると思うけど何か見つけたら交戦せずに良然を通して連絡をすること。これが最低限の条件だ。分かったかい?」

「おうともサ、隊長のおっちゃんも気をつけてな」

「ああ。いつもこんな老骨のお世話ご苦労さん」


俊什は敬礼を返してパッと踵を返して走り出し、僕も置いて行かれまいとその後ろをついて走る。


 しかし、しっかりと年数をもって鍛えてきた俊什と僕じゃ動ける範囲が違いすぎて差は埋まるどころか離れるばかりだった。酸欠で少し暗くなる視界の先で走り続ける俊什をせめての足掻きで見逃さないように追うが、それもやや限界を迎え始めた。


「しゅ…まっ…!」

「シッ!静かにしな久藍…デカい鼠がいるゼ」


建物の角で突然立ち止まり、影に身をひそめるようにして向こう側を伺う彼の後ろで僕は壁にもたれ掛かり呼吸を整えるだけで精一杯だった。


「アァやっぱり間違いねえ。あいつら北鰐だ…ッチ!好き勝手しやがってヨ。って、なんでそんなへばってんだ久藍?これからドンパチやるかもしれねえって時にそんなンで良いのか?」

「す、すいまっ…っはぁ、せんねぇ!体力なくてッ…!」

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