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【四月馬鹿】悪い夢よ飛んでいけ

大遅刻です…申し開きもありません…

 執務室の扉がノックされる音が聞こえ、入室を許可すると緊張した面持ちの若い一等兵が紙製の書類を入れる袋を持ちながら入ってきた。


「朴久藍中尉、ご報告申し上げます。先刻落火地方の椿苑基地に駐在する柳霜玲監査員からのの報告が届きました」

「ご苦労。確認するので僕の机の上に置いてください」

「はっ、かしこまりました。それと、朴黎鳴総監督がお呼びでございます」

「うん?ああ、わかった。すぐ行く」


普段父上が仕事中に呼び出すことは少ないはずだけれども珍しいこともあるものだ。と、そう考えながらも僕は万年筆をインク壺に戻して席を立つ。その際視界に入った勲章の記章が歪んでいるのに気が付いてそっと直す。もう成人してかなり経ったというのにまだ抜けてるところが見つかるとは我ながら情けない。まだ父上のようになれるのは先ということだろうか。


「朴黎鳴総監督、お呼びでしたか」

「おお久藍。しばらく家に帰っておらんかったろう、お前も私もな。菊が寂しがっているから今夜は寮ではなく家に帰ることにしなさい。私はいま仕事が手放せないからまた後日時間を作って家に戻る」

「また母上が手紙を出されたんですね。わかりました、なにか手土産でも買いましょうか」

「はははは、気が利く息子だ。菊が淋しがるばかりに手間をかけるな」

「いえ、樹静かならんと欲すれども風止まず、子養わんと欲するも親待たずと言いますから」

「ふむ…韓詩外伝からか。いやはや、我が息子ながら天から二物も三物も与えられた恵まれた子だ。父としてこれほど誇らしいことは無い」

「いやいや、父上の教育の賜物でしょう」


ただ親孝行をしようとしただけでここまで大げさに褒めるなんて父上も大概子煩悩だ。しかし僕が謙遜すれども父上ますます嬉しそうに目を細め、たっぷりと蓄えた髭を撫でつけて満足そうにしている。


「教育は確かにこの父あってこそかもしれないが、お前の礼物は紛れもなく天からの授かりものだ。これからも精進し、この国のためにその力を使うように」

「はい、いずれ父上のように立派な軍人になり国を守ります」

「また嬉しいことを言ってくれる」


グッと張った胸元に光る勲章は昔父上が優秀な天与礼者に授与すると言って、その栄えある最初の一人として僕につけてくれた勲章だ。

 初めて礼物を使った日、父上は大変な驚きようであったがその後同じぐらい喜んでくれた。なんてことは無い、人の心を読み嘘を見抜くだけの才能だったがそれでも父上は喜んでくれた。僕はそれが嬉しくて父上の期待に添えるように努力を重ねてきた。まあ…口さがない人々、いや僕が心を読んでいるがためにそう感じるのだが、彼らは僕を七光りだとか、親の子ひいきだとかいうが、僕は僕の力でこの地位に立っているんだ。


「お前はいずれ雷華軍を率いる立場になる器の男だ。他の人間や、礼者とは違う。私がそう育てたのだからな、久藍、お前は何から何まで私の期待を越えてきた。これからも期待しているぞ」

「…!はい!」


やっぱり僕は父上が言うように他の礼者とは違う、『本当の』天与礼者なんだ!普通の天与礼者は人々を傷つけるかもしれない、災いをもたらすかもしれない。大きな力を扱うには相応の責任がついて回るというのに、それを理解しない奴らとは違うんだ!

———――————――————――————――————――—

「もし僕に礼物があったら、ですか?」

「おう、欲しいと思ったことはねぇか」


そういわれても…今は礼物が欲しいとは思わないし、なぜか無性に無くてよかったとすら思う。きっと僕はそういう星に生まれていないのだろう。でも、もし礼物があったなら僕はそれを医学の発展に生かしたい。生まれてこの方どうしても軍に入りたいとは想ったことがなかったが為に軍に入ってその才能を生かすなんて僕には到底出来やしないんだろうとも思う。

 少なくとも、あの親父の言いなりにだけはなりたくないね。

短いですが、『もし久藍に礼物があったら』を書いてみました。このifでも天命礼記は存在していてif久藍はしっかりそれを読んでいますね。この久藍はなんだか個人的には薄気味悪くて好きではないです。

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