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③(sideお祖父様)

 残る要件を話したら離に行くと、ミシェイラを部屋から出した。

 不満を隠すこと無く顔に出した息子達と、訳も分かってないだろうもう一人の孫のシェリルが居る。

 ミシェイラの座っていた所に、シェリルを呼んで座らせた。


「シェリルは、今の話が分かったか?」


 そう問い掛けたら、渋々と座り、俯いていた顔が上がった。


「お祖父様が、あの子を大事にしてる事は分かりました。私の事なんて、これっぽっちも可愛いとは思ってないって事が」


 臆する事なく睨み上げてくるのを愉快に感じる。


「お母様は、物凄く肩身の狭い思いをなさってました。やっと認められる立場になったのに、何で悪い事のように言われなきゃならないのですか? お祖父様は酷いです。後継はお父様なんですよ!」

「話は、聞いていたな?」

「聞いてました。聞いていたから言ってるんです!」


 息子であり父親であるルファスを見れば、会った視線が逸らされる。今、この遣り取りが不味い事は分かるようだ。

 さて、どうしたものか。


「誰かの都合のいい事だけを鵜呑みにするのは辞めるように」

「う、うのみ?」

「認めないとは言ってない。方法が悪いと言った。もう、それはいい」

「酷いです。そんなにあの子が大事ですか? 王家に献上するシルクの権利をあの子になんて、認められないってお祖母様だって言ってました。それを話し合う事もしないであげちゃうなんて、酷いしずるいです!」

「理由は話したが」

「なら、私には何が頂けますか? どうせ貰うならシルクの権利がいいです。私、それでドレスを作りたいですわ。お茶会で自慢出来ます」


 欲しいというシェリルの目は、不満を消して輝き出し、口調も楽しそうで軽いものへと変わった。

 シェリルの口から出た『酷い』『ずるい』。そして『権利』と『自慢』。

 後継の話をしていた筈だが…。

 王都に居る時は、なるべくシェリルにも会うようにしていたが…。これまでの教育は妻と息子に任せていたのが悔やまれる。イライザが居て、ミシェイラを後継にと思っていた時ならそれでいい。イライザは当初の取り決め通り、ミシェイラ共々ミシェイラのお披露目の前に公爵家から引くつもりだったみたいだが…。領地を思えば、領地を良く知るミシェイラが、どう考えても相応しい。優先される嫡男が居ないのだから、ミシェイラが長子であり、次女であるシェリルは何処かへ嫁がせれば済む話だった。

 欲しがり、与えられるのが当たり前と思っている娘。このシェリルが公爵家を継いでいくというのは不安でしかない。


「権利だけではドレスは出来ない。シェリルは、紡績業を手に入れたら、爵位は要らないのだな?」

「どうしてですか? お父様の後、私以外に誰が居るというのです?」

「順番を言えば、お前の前に姉のミシェイラが居る」

「あ、あんな子なんて、姉なんかじゃない! 子爵の女が死んで、邪魔なあの子を追い出せるんですよ! お祖父様。いい加減に目を覚まして下さい」

「シェリルっ!!」


 声を荒らげてしまったが、子供を殴らなかった自分を褒めてやりたい。

 母と祖母が口にして、何時も耳にしていた言葉を言う孫に、頭が冷えるどころか、背筋が冷えた。


「お、お祖父様が怒ったぁ」


 そう言って泣き出した。

 十歳の子供。公爵家を継ぐのは自分だと言い含められて、そう思っている子供だ。


「よく考えて、言葉にするように」


 鉄は熱いうちに打てというが、片手間に言い聞かせても、すぐには理解しないだろうと思えた。

 泣いているなら、これ以上話をする事は無理だ。話を聞こうとしないだろうから。シェリルを部屋へと指示をだす。

 泣きながら立ち上がったシェリルは、扉の前で立ち止まる。退室の挨拶かと思えば、しゃくりあげを装いながら「シルクは、私がもらえますか?」だった。苛立つ心を抑えて「考えておく」と言えば、返ってきた言葉は「お祖父様ありがとう」だ。

 しゃくりあげているが、涙は止まっている。こんな子供になっていたとは…。

 どっと疲れが押し寄せてきた。


「お前達がどう思っていたか、どう思っているかがよく分かった。お門違いも甚だしい言い分だな。だが、王家の関心を引いている以上、シェリルがあのままじゃ不味い事は分かるだろう? 領地を引き継ぐ気があるのなら、あれを早急に何とかするのだな」


 もう今は話す事は無いと、手を振る。


「あぁ。ミシェイラの縁談を進めようとしてたな。それは止めておけ」

「王家から、何かそういった話が?」


 第二王子とを勘ぐっての言葉か。


「否。イライザが縁談を止めたかったのを、王妃様が知っているからだ。近衛の護衛も、このままミシェイラに付く。これ以上言わなくても分かるな。お前の正念場だ」


 もう、話す事は終わりだ。

 余計な策を弄する暇があるなら、シェリルを如何にかしろと言いかける。

 いっその事、シェリルを手元に置くか…。

 ミシェイラとの相性は、考えるまでも無く最悪だろう。

 だが、このままという訳にもいくまい。あの嫁に任せて、まともに教育が出来ると思えない。

 困ったものだと言うだけなら容易い。

 ミシェイラを自由にしてやるのは難しいと、ため息しか出なかった。

お読み頂きありがとうございました。

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