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起きたらびっくり? ①

3月24日

お留守番のお嬢様 ②(sideジーク)から魔術師を魔法使いと変えました。

 ぐぐぐぅぅ~っと体が振動したように感じたのは、もしかして私のいびき? いびきかくって言われた事ないよ。それなら何? お腹なの? お腹の音? お腹が空くくらい寝てるの?

 乙女として『いびき』は許されないけど、『お腹の音』は子供として許されると思う。成長期だし。

 起きないと、駄目かな。瞼の向こうは明かりがある気がするけど、陽の光じゃ無い気がする。なら、夜?

 起きたらご飯用意してくれる? 他所でご迷惑をかけるのは気が引けるわ。わがままな公爵令嬢だと思われちゃう。

 でも、ディ様のお家だから、大丈夫かな? 無理そうなら、ジークに荷物からクッキーでも出してもらえばいいかな?

 兎に角お腹が空いた。喉乾いた。身体中が空っぽな気がする。

 でも、起きようと思って起きられる訳でも無い。何となく惰眠を貪ってる感じ。

 蜂蜜レモンとハーブが時々口の中に広がるのを、美味しい夢だなって思ってて。でも、そろそろしょっぱいのが食べたいって思ったら、目の前にげっそりとした顔のジークがいた。

 こ、怖いよ?!

 思わずぱちぱちと瞬きをした。


「お嬢様?」

「ぉは、よう?」


 ざりざりとした自分の声と喉に、物凄く違和感を感じる。

 何か、風邪の引き始めの時のような?


「何処か、おかしな所は無いですか?」


 体を起こそうとしたら、ジークと侍女さんとで枕とクッションを背中に当ててくれた。

 喉が変って言おうとしたら、コップが口元に運ばれたから、助けてもらいながら飲んだ。

 まだ夢でも見てるのかと思うのは、口が覚えてる味というのと、コップの中のそれが青紫色をしていたからだ。何かちょっと、体に良い物に思えないんだもの。

 ちょうどしょっぱいのが欲しいって思ったところだったから、お腹が空いたって言ってみた。

 ジークと侍女さんの行動が一瞬止まった。


「駄目? でも、とってもお腹が減ってる気がするの」

「いいえ。お腹が空いて、食べられそうなのは元気の証拠だと思います。ご準備いたしましょうね。ですがその前に、お支度出来そうですか?」


 頷こうとしたけど、自分では動けない気がした。『よし、やろう!』と思ってるのに体がついていかないみたい、に。

 お手伝いしますねって侍女さん達に囲まれて、ジークが部屋を出てったのを見送った。




 まずおトイレ行って、新しい寝間着パジャマに着替えさせてもらって、髪も梳かしてもらった頃。ディ様と白い頭のおじいちゃんとローブ姿のおじさんが入ってきた。

 私を見たディ様が、明らかにほっとした様子なのは何でと思う。それにおじいちゃんとおじさんは何?

 おじいちゃんは、お医者さんだった。

 瞼をひっくり返されたり、口を大きく開けて覗かれたり…。聴診器で心臓の鼓動も呼吸の音も聞かれて、お腹の調子も悪く無いって言われた。手をにぎにぎしたり、足をばたばた。

 私の頭の中は疑問でいっぱい。

 何か気になる事はって聞かれて、「お腹すいた」と答えた。おじいちゃんは、お腹に優しいものからと言った。


「チーズリゾット食べたい」

「四日も寝たきりだったんじゃから、様子を見てからじゃの」


 意地悪には見えない顔で笑うおじいちゃん。意地悪じゃないけど、意地悪されてる気になっちゃう。

 ご飯が食べられるなら薬は飲まなくていいって、おじいちゃんは部屋を出て行った。

 あの青紫色のは薬だったみたいだ。

 そしてローブ姿のおじさん。おじさんは魔法使いさん。

 モノクル越しに私を見てるみたいだけど、目が合う事は、何でだか無い。

 手を持たれて、指先がバチッってなって、それが体の中をはしる。

 チリっとして痛かった。


「魔力は、問題無さそうだ」

「そうか。気を付ける事は?」

「魔力譲渡の必要はもう無い。後は良く食って、よく寝ればいいだけだからな」

「分かった。分かったな、ミシェイラ」


 ディ様は魔法使いさんに、そして私に言った。

 何が分かったの? よく食べるのはわかりますよ。お腹ぺこりんだもの。魔力譲渡って何? 起きたらお医者さんや魔法使いさんって何?


「ディ様? 何のお話ですか?」

「ミシェイラは極度の魔力欠乏。早い話、枯渇だな。それで四日間意識が無かった」

「へ?」


 事の他真面目なディ様に対して、思わず出た間抜けな声。

 魔力欠乏? 枯渇? 何で?


「君は魔力を使った覚えはあるか?」


 ぶるぶると横に首を振る。


「なら、今までに魔力を使った事は?」


 また、ぶるぶると横に首を振る。


「そもそも私に魔力なんてあるの?」

「魔力がそもそも無ければ、魔力欠乏になんかならないだろう」

「そうなの?」


 魔法使いさんは、また私の手に触れた。

 ビクってなったのは仕方無いです。バチッは、嫌です。


「さっきは魔力の反発をみただけだ。今度は、どうだ?」


 指先が温かくなって、体もぽかぽかってしてる気がする。

 温かいと言えば、直ぐにその手は離された。


「これは魔力譲渡。君は魔力持ちだ。器だけなら高位の魔法使いに匹敵するかもな」


 分からない事考える事がいっぱいで、頭が痛くなりました。

 魔法使いさんが言うには、私は、卵に向かって魔力を放出したそうです。普通なら、危ないと体が認識すれば、自然と魔力放出は止まるそうです。気を失うとかで。でも私は、ジークがおかしいと卵から引き離すまで魔力を出し続けていたらしい? 普通に止まるところで止まらなかった。命の危機だったそうです。目が覚めて呑気に「お腹空いた」と言えるのは、魔力譲渡出来る魔力の多い人間がいたから。

 魔力の放出に引っ張られながらも、ジークが引き離してくれて、魔力譲渡の出来るこの魔法使いさんと、ディ様ルー様のおかげ…。

 私は顔を上げて、「心配かけてごめんなさい」と「ありがとう」を言う。ここに居ない人にも言わないといけない。

 四日も寝込んだ事の重大さで、心が重くなる。でも、もっと大変だった人は何人も居るよね。反省もするけど、何でだか理解しないとね。

 魔法使いさんは、私の魔力について、まだお話があるようだけど、もう少し元気になったらって事になりました。

 はっきり言って、頭いっぱいいっぱいです。


「因みに、君は、頭のそれが何だか知っているか?」


 頭の、何ですか? 私は、皆の頭を見る。


「君の頭のだよ」


 頭に両手を乗せてみる。特に、何も? 起きた時、顔と一緒に蒸しタオルで髪の毛も拭いてもらったよ?

 ジークが鏡を持ってきた。


「気が付いたら、張り付いていたんだが…」


 ディ様の、歯切れの悪そうな声を聞きながら、鏡を覗き込んだ。

 顔の向きを変えながら、手も動かしてみる。

 ん? 何? と、見えたものに見入る。


「何これ?」


 私の頭に、白い丸もこがくっついてた。触ろうとすると弾かれたように動く。指先の静電気で触ろうとして避けるわたぼこり的な?

 私も分かってないと確認すると、魔術師さんはまた後でと部屋を出て行った。

 ご飯の乗ったワゴンが運ばれてきて、ディ様も、また後でと部屋を出た。

 部屋に居るジークも侍女さん達も、私の頭の丸もこを無視して食べる支度を進めてる。

 ご飯食べたいって言ったけど、説明放置しないで!


「お嬢様。取り敢えず、食べてみましょう? お腹に入れてみないと、本当に元気になったかとか分からないですからね」

「ジークは? ご飯、食べてる?」


 げっそりとした顔のジークの方が、よっぽどご飯が必要な気がする。


「お嬢様が、きちんとお食事を取られて、安心できたら、私も頂きます」


 やっぱり食べて無いんだ。きっと寝てもいないんだろう。


「ごめんなさい」

「はい?」

「ううん。いただきます」


 頭のこれは気になるけど、取り除こうって騒いでないんだから、無い事にしておこう。そもそも、鏡を見るまで分からなかったんだし。後回しでいいから、ディ様も魔法使いさんも部屋から出たんだもんね。

 ポタージュスープに林檎のゼリー。

 おかしいな。もっと食べたいって思ってるのに、思ってたより食べられなかった。


「四日も寝てて、本当に食欲全開の方が恐いですよ」


 もういっぱいって、スプーンを置いたのを片付けながらジークが言う。


「もう少し、休みましょう」


 起きたらばかりだから眠くないよ。

 でも不思議。背中のクッションが退けられて寝転がったら、自然と瞼が閉じた。

 引き込まれると感じたのは、私が寝落ちしたって事なのね。

お読み頂きありがとうございました。

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