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 ご満悦のディ様とドルレンさんを見送って、厨房へと戻る。

 料理長さんを初め、こっちで大人しく試食していた大人は、ご馳走様した食器を洗ってた。


「それで、お嬢様。残った米どうするんだい?」


 炊いたお米は、半分無くなってた。

 想定内? 想定外?


「ロアナ様。食べてみてどうでした?」

「お魚は、ごめんなさい。でも、それ以外は美味しかったわ。お米も、たくさんは無理だけど、好きよ」

「私も、白い米は初めて食べたが美味しかった」


 私が聞いたのはロアナ様。何でルー様も答えるの?

 王子様が食べたお米。どんなの食べたの?


「トマトとチーズで、もっとベタベタしてた」


 言い方! 美味しいものだったとは思えないよ。でも、人好き好き。


「ドナさん。天日干しに使うザルありますか?」

「あるよ。どうするんだい?」

「干します」

「炊いた米を態々かい?」

「はい。幻のお米です!」


 きりっとドナさんを見て、拳を握った。


「早くて三日。だいたい五日くらいで、お米がかちかちになります」

「それって、食べられるの?」

「心配ありません。美味しくいただけます」


 ロアナ様と一緒に、お米を広げていく。

 ここに来て、初めての作業。何をするでもなく、口だけ動かしていた私に、それくらいさせてもいいだろうなって事? まぁ、いいですよ。楽しいですから。


「そ、そんな疑わしそうな目で、見ないで下さい」


 残ってたお米の半分が広げ終わった。

 駄目にしたらもったいないって目で見られてるけど、これくらいは必要だと思うのよ。だって絶対食べたがると思うもの。


「乾燥したら、油で揚げるんです。揚げたてに、とろみのあるスープをかけると、じゅわじゅわぁってして、美味しい間違いないです」

「ねぇ、どんなところが幻なのかしら?」

「食べれば、きっと美味しいのが分かってもらえると思うんですけど、そのためにお米炊くところからしないでしょ? 炊きたて食べて、残ってたら焼き飯やリゾットしたりで、そこまでお米が残ってないからですよ。滅多に出来ないから幻」

「まぁ!」

「もしお米が手に入るなら、パンだね捏ねるより早く食べられるよ!」


 ドナさんも頷く。


「そうだね。浸してる時間におかずなんて出来ちまうからね」


 ですよねぇ~っで同意しておく。

 お話しながらお米ぺたぺたきゅっきゅっする。平たくしたのをフライパンに並べて焼いてもらいます。焼くのは、駄目みたいでした。

 甘いのと香ばしい匂いが再びですね。

 両面に焼き色がついたら、お醤油をひと塗り。じゅじゅぅって音がしてわくわくします。


「お焦げせんべいです。幻のお米は、これとは違う美味しさです! 冷めてもいいですけど、私は出来たてが好きですわ!」


 音を立てて食べるのは、淑女としてはどうかと思われるでしょう。ですが、ぼり、ざくっと音を出しながら食べるのは、親しい間なら許されると思います。音がする度に、お母様と笑いあってしまったのを思い出します。

 物思いしてたら、ルー様が、ぺたぺたきゅっきゅっしてます。これも気に入ったのでしょうか? というか、まだ食べられるの?

 ルー様を見てたら、おかしくって笑っちゃいました。


「あぁ。米は片付きそうだね。なら、他も片付けちゃっていいかい?」

「そうですね。もうお腹いっぱいです」


 ぽんっとお腹を叩いたら、ぽんっといい音がした。


「ドナさんっ! いい匂い!」

「駄目! もう腹減ったぁ」


 お開きにしようと思ってたら闖入者です。

 見習いのお兄さん達でしょうか、わらわらと五人、食堂に入ってきました。


「あんた達、騒がしいよ!」

「えっ?」

「あっ!」

「ロアナ様?」


 ピタッと起動停止して、すぐさま謝りだしました。

 思いもしない所に、ご領主さまのお嬢様が居たからびっくりですね。この場合の闖入者は、私達ですけど。

 ルー様が、焼けたお焦げせんべいと素揚げ蓮根を運んで行きました。


「何これ、見た事ない」


 皿を置いたルー様が、一つ取って「ぼりっ」。


「あ、あの、俺達…」

「美味しいわよ。召し上がってみて」


 戸惑いと好奇心。で、好奇心が勝った。あっ、食い気かな?


「しょっぱ美味い!」

「美味いけど、満たされないっ!」


 半端に刺激された食欲を満たすのは、やはり食べる事しか無いと思う。

 残りのお米でレタス巻きを作りましょう。

 ドナさんに材料をお願いしたら、ロアナ様が楽しそうです。

 レタス。お米。スティックきゅうり。甘い卵焼き。湯がいた三葉。魚のオイル漬け。

 順番に乗せて、くるくる巻き巻きですよ。

 残ってたスープとお皿をカウンターに乗せて、ドナさんが取りに来なと声を掛けた。

 おっかなびっくりの一口。味わいながらも無言の咀嚼。良い食べっぷりです。


「ミシェ。私の分は?」

「えっ? ルー様、まだ食べるの?」

「ミシェが作って」


 何でと思いながらも背中を押されては仕方がない。

 ぽんぽんぽんっと乗せてって、巻いたら終わりよ。

 皿にも乗せずに渡したら、ありがとうって言って食べ出した。

 カトラリーを使わないで食べてるルー様って、何か可愛いんですけど…。

 お行儀は悪いが、ルー様は、見習い達の中に入っていく。「お前も見習いに入るのか?」なんて聞かれて、「そうだ」なんて答えてるよ? その答えって合ってるの?

 嘘言っちゃ駄目でしょって見てたら、竜騎士団の見習いに入るからだって。

 まぁ、いい。私の事じゃないもんね。

 兎に角。お米は片付いた。


「ドナさん。今日は、ありがとうございました」


 ぺこりと頭を下げたら、頭を撫でられた。


「料理は、好きかい?」

「作らせてもらえないので、好きかどうかは分からないけど、食べるの好きですよ」

「私は好きの前に、作れるようにならないといけないわ。でも、こんな風になら、料理好きになれそう」


 ロアナ様に両手を握られた。

 嫌。だから、私お料理してませんからね。

 

お読み頂きありがとうございました。

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