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エプロン再び ①

「ところでミシェイラちゃん。お米というものを探させたと聞いたのだけど?」


 ロアナ様。何でそんな事知ってるの?

 にっこりさんの笑顔に隠された、私知ってますのよの視線。

 おかしい。ロアナ様の居ないところで、お願いしてたのに…。

 甘い匂いに釣られるようにやって来た歳上の美しい人は、お嫁様になる為の料理スキルを向上させる為に、料理人と、とても仲良くなったみたいです。

 別に秘密じゃないからいいけどさぁ。

 魔力量測定の予定が、お料理に差替えられました。

 ならばさっさと。

 前回お邪魔した厨房に行こうとしたら、進路変更。で、騎士団詰所の食堂に来ています。


「ミシェイラ・エイブ・マクラーレンと申します。本日は、よろしくお願いいたします」


 私は前回同様のエプロン姿。待ち構えていた料理長を無視して、この食堂の責任者であろうご婦人に礼をした。

 騎士(筋肉)の胃袋を相手にしてるのだもの、期待大!

 尊敬の眼差しで見上げれば、ちょっと困り顔のご婦人。


「私はドナだよ。お嬢様」

「ミシェイラです。ミシェでもいいです」

「館のお客さんだろ? まして、お貴族さまを気安く呼べないよ」


 いえいえ。是非とも気安く呼んでください。お願いしますと、今度は頭だけ下げた。


「ミ、ミシェイラちゃん?」


 ロアナ様の声に気が付いて表情を改めたご婦人。いいえ、ドナさん。ロアナ様に軽く挨拶すると、目線を合わせてきた。


「米を炊きたいと聞きましたが、どんな塩梅がご希望ですかね?」


 困り顔だが、炊き上がりの好みを聞いてくれるドナさん。素敵です。時間は有限です。食べると決めたら早く食べたいです。


「固めが好きです」

「十キロ全部ですか?」


 えっ、十キロ? 私がお願いしたのは五キロです。

 ちらっと料理長さんを振り向けば、期待の視線とぶつかった。

 色んな意味で、試食する気満々だ。


「んっと、五キロでお願いします」


 ドナさんがお米を洗い出したので、別作業を食堂のお手伝いさんに頼む。

 森散策で見付けた蓮の根っこ。蓮根を輪切りにしてもらって、水にさらしてもらう。味しみの為には優先作業なのだ。晒したら水切りです。

 料理長さんに話を振らないのは、ここは、料理長さんの持ち場ではないからだ。手を出せない事の不満を顔に出したけど、直ぐに引っ込めた。ドナさんのしてる事を観察する方に専念するみたい。

 単純に洗って浸すんだけど、お米は奥が深い。ドナさんが美味しく炊ける人かどうかは知らないけど、料理長さんはお米を炊くのをした事が無い人みたいだった。

 知ってる人に委ねる事が出来るのは好感なので、ロアナ様に、ウッドフィッシュを調味料で漬け込んで保存してた事を話しちゃったのは許してあげよう。どのみち試食するつもりだったし。

 醤油を使って甘じょっぱいタレを作ったでしょ? それに生姜と唐辛子を加えてウッドフィッシュのカマの部分を漬け込んでもらったの。ついでに味噌でも。

 これは、保存(お土産)の為にしてもらった。ここですぐに食べるなら、タレを付けながら焼けばいいのだもの。



 ウッドフィッシュのすり身に玉ねぎのみじん切り。ここにカマを取り出した後の醤油タレを入れて混ぜ混ぜ。森で取ったキノコの傘にたっぷり乗せます。挽肉でも美味しいよ。

 戻って来たドナさんに、「無駄が無くていいね」って言われて、気分上々。

 料理長さんからしたら有り得ない考え方かもしれないけど、私の考え方は、ドナさん寄り。お金に不自由は無いだろって言われたらそれまでだけど、お金があったって、手に入りずらい物はある。

 それがこの醤油や味噌、お米とか、東国から入ってきた食材。まして出先で私の手持ちは少ない。



 切った蓮根の三分の二を炒められるフライパンを用意してもらって、油と唐辛子を投入。

 唐辛子で辛くなる? 問題無いよ。その分甘くするから。

 分けた蓮根を入れて、しんなり炒める。

 料理酒、醤油、お砂糖で、汁気が無くなるまでお願いします。

 大雑把? 美味しいですから問題無いよ。

 汁気が無くなったからって、すぐに食べちゃ駄目ですよ。味が馴染むのを、少し待ちましょう?



 ドナさんは、お米を炊く作業に入りました。

 お米…。期待が高まります。

 ですから、お魚を焼き始めてもらいます。

 網の上にウッドフィッシュのカマとキノコ。じっくりと焼いてね。

 お米を炊きあげる湯気は甘さを含んでる気がしますが、お魚の、お味噌や醤油の焦げる匂いは香ばしいです。

 お米が蒸らしに入った頃。海老とほうれん草のソテー。甘い卵焼き。海老出汁にたっぷりの三葉と柚のすりおろしのスープが出来ました。

 海老出汁は殻を煮出して瓶に詰めたスープストックですよ。

 ああ。本当に美味しそう。

 うっとりと見渡した厨房の中。一つ忘れてました。三分の一の蓮根です。

 これは油で素揚げしてもらいます。そしたらお塩をぱらぱらですの。



 一人一カマという訳にはいかないので、焼き上がりを解してもらう。

 大葉を敷いて、カマの味噌タレと醤油タレ。蓮根の二品。海老とほうれん草のソテーと卵焼きにキノコ。

 七品がワンプレートに盛り付けられた、ロアナ様達用。

 ご飯とスープも用意されて、さぁ召し上がれ。

 食堂のテーブルに運ばれてくのを見てたら、ルー様とロアナ様に並んで、ディ様もドルレンさんも居た。



 誰が居てもいいです。兎に角食べたいんです。



 カマのところはぷにゅっとでありながら噛みごたえがある。もぐもぐとご飯を口に運ぶ。これを食べる為にご飯があるのか、ご飯を食べる為にこれがあるのかって考えちゃうくらい美味しい。

 私の好みでは醤油タレだけど、お祖父様なら味噌タレだろう。

 出発直前に仕込むとしても、帰りの行程の半分…は無理でも、五日から六日に縮めたいな。

 このカマの部分に対して、味は良くても食感が駄目なロアナ様。美味いが、何か足りないと言うディ様とドルレンさんの好みも味噌タレだった。


「お祖父様は、穀物のお酒を飲みながらがきっと好きだと思うんです。だから、ディ様達もそうなのかな?」


 お祖父様へのお土産にって考えてたからか、お祖父様の顔が浮かぶ。


「穀物の酒か。確かに葡萄酒では無いな」


 ドルレンさんも乗っかってお酒の名前を上げていく。

 聞いてても分からないから無視だ。

 ディ様とドルレンさんの前に、貴重なカマときんぴらが追加されてる。やっぱり味の濃いのに手が出るのね。

 私は、噛むとほんのり甘いお米で口の中をリセットしながら食べる。


「ミシェのところでは、何処から手に入れてるんだ?」

「お味噌は領地で作ってますよ。沢山じゃないけど。お醤油は、東国からのとルカト領から半々です」

「ルカト領?」

「ルカト領は、文化交流で来た東国の民がいますでしょ!」

「…文化交流」


 素揚げ蓮根をぱりぱりしながらルー様。

 塩だけでも美味しいよねって見たら、素揚げ蓮根が乗った皿。お米も食べながら、何でそんなにお腹に入るの?

 ロアナ様と目が合って、自分の前のプレートを見て、思わずのため息が重なった。

 これ、試食だよね? 何、がっちり食べてるの? 美味しく食べられるのはいい事だと、喜ぶべき?

 でも、蓮根美味しいよね。領地で栽培出来ないかな? 蓮根分けてもらえれば? 池を一つ。収穫のしやすさを考えたら、土からだよね。

 脳内食材補完計画が展開する。

 しゃくしゃくもぱりぱりも好きだもん!

 

 

お読み頂きありがとうございました。

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