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「お部屋で、美味しいものを作ってるって言うから急いで来たのに、間に合わなかったのね」

「大丈夫ですよ。レシピはちゃんと料理長さんに渡しておきますから」


 そう答えたら、「そういう事じゃないのよ、ミシェイラちゃん」と、力強く言われた。

 ちなみに「様」が「ちゃん」に変わったのはお出掛けの後からです。私は「ロアナ様」と、呼び方は変えてはいません。「ディ様」「ルー様」みたいに「ロー様」と呼ぶよりは、「お姉様」と呼んで欲しそうなので、どうしたものだか戸惑っております。


「私も、お父様と同じようにそうならいいなとは思っているけど…。お父様の事は、放っておいていいと思うわ」


 何だか意味深だ。

 首を傾げる私の隣で、ロアナ様が力無く笑った。

 そんな様子は、物凄く気になります。ルー様もですよね。


「ロアナ義姉上」


 ルー様も気になると目線をよこし、ロアナ様を見る。


「ふふふ。ごめんなさいね。私達、何となく、奇跡があるといいなって思っていたから。お父様も、はしゃいでしまったのね」

「それって、ものすごぉーっく、気になりますよ」

「気になる?」

「気になります。ルー様も、ですよね!」

「はい。私も気になります」

「そっかぁ。そうよね」


 せっかくなので、お話を聞きます。 


「元々はね、竜がここで卵を産んでしまったのが問題で、始まりなの。竜は、里以外では卵が孵る事が無いと言われているでしょ?」


 ルー様は頷く。

 私は、そうなの? と、記憶を探る。

 里とは『北嶺の一族』の暮らす里の事だろう。竜の目覚めから眠りまでを守っていると聞いた。ロアナ様の言い方だと、目覚めは誕生だ。

 えっ? でも、それって? 里以外で孵らない卵。なら、あの卵達は孵るのだろうか?

 私の表情を読み取って、ロアナ様が次の言葉をくれた。


「ここの竜も、過去何度か卵を産んだ事があったらしいけど、殻を破った子はいないわ。他の場所での事例もそう。卵を里に持ち込んでも駄目。卵を宿した竜は、里に帰り里で産む。なら、何が違うのか。里のある辺りは、自然に結晶化したと思える魔石が多いの。だから土地自体も魔力が強くて、それを取り入れながら卵の中で竜が育ちきる事が出来るのではないかしらというのが、里の見解ね」


 それ即ち、魔力が少ない所では、竜は孵らない。産まれる事はあっても、孵らない。


「だから、駄目だろうって思っていたら、一つの卵に変化があったわ」

「あっ!」

「もしかすると、『精霊のゆりかご』というもので、一つの卵、二匹の竜が殻を割って出て来てくれるかもしれない。きっとそう…。事例の無い事だから、そう希望を抱いてるの」

「魔石なら、魔獣のは?」


 ここでも魔獣から取れた魔石をいっぱいにすれば、条件が揃うのじゃないかしら?

 ロアナ様は、首を振って否定した。


「魔獣の魔石は、竜が好まないみたいなの。それも、昔試したらしいわ」

「なら、自然石を集めれば済むのでは?」

「そうね、どれくらい集めたらいいのかしら…」


 この土地は、自然結晶の小魔石がある。だけど、それじゃ駄目なんだ。魔石にも条件がある? 必要な量は? そもそも、移動させた魔石でもいいの? 絵本では、教会の教えではどうだった?


「お父様とドルレンはね、ミシェイラちゃんが竜に好かれた事とか考えて、卵に触れさせたみたい」

「ふぇ?」

「験担ぎよ。後、胸のそれ。自然結晶の魔石じゃないかと思ったらしいのだけれどもね」


 言われて袋から取り出して見せる。

 何時から身に付けているのか覚えて無いけど、何時でも身に付けているようにと言っていたのはお母様だった筈。

 ぶにゅぶにゅっと弾力がある。これを石とは言わないんじゃないかな。

 ルー様が手を出してきたので、その手に乗せる。

 掌でにぎにぎ。指でつまんでぶにゅぶにゅ。

 あはは。面白いくらいの反発力でしょ。

 無表情っぽいルー様だけど、手の動きは正直だよね。


「こんな魔石は見た事がないが」

「うん。魔力はあるみたいだけど、魔石って言われた事ないよ」


 何度か、魔石の専門家に見てもらった事があるもの。魔石のようだけど、魔石とは言えないんだって。


「自然結晶の仕組みは解明されてはいないから、断定出来る根拠がないのも考えもの、か。そもそも、何故身に付けてる?」

「何となく…。習慣化しちゃってるから、かな。お着替え終わったら、こちらも身に付けましょうねって、首にかけてくれるんだもの」

「何か理由があって、御守りみたいな感じかしら?」

「そう、かも?」

「兎に角。そういう事があって、浮き足立ってるのよ。でも、自分が信じたいからって、押しつけは駄目よね。本当、お父様がごめんなさい」


 ディ様は、絵本の不思議とかを自分が信じたくて、私に読ませようとしたのかな。皆がそう思う事で、それが当たり前なんだって。来る時の馬車の中でも精霊とか妖精とか祝福とか言ってたもの。竜の卵の事もあって、余計にそう願ってるんだね。

 そう思ってて、突然胸のところがぎゅっとなった。

 なら、変化の無い卵は?

 ゆりかごの祝福が無いなら、竜は、卵から出てこない、の?

 あれから、お母さん竜とは仲良しだ。毎日卵に挨拶に行ってる。数日でも卵が気になるし、孵らないかもって思うと、悲しくなる。

 大人だって御伽を信じたいのかもしれない。

 全部の卵が無事に孵る事を、私も願う。




 昼の女神様。命を見守る女神様。欠けることなく産まれ出る事に力をお貸しください。

お読み頂きありがとうございました。

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