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森へ行こうよ!

 今日は、キエナ領の東側に広がる森に来ています。

 こっちは、広葉樹が広がっています。新芽や若葉が目に優しいです。

 ディ様は帰宅翌日の昨日丸一日遊んでしまったので、今日はお仕事。ルー様はお披露目前でする事がないから一緒にお出掛け。朝も早くから馬で二時間の道のりの村にやって来ました。

 そして散策中ですよ。

 うわぁ~! これ、もしかして、砂糖楓の木じゃないの?

 木を見上げ、足元に視線を落とす。

 わくわくっとした期待感が胸にわく。

 下草が刈らた木立の中を、村からの位置を確認しながら歩き回っていたら、良いものを見付けた。

 甘いもの。蜂蜜も好きだが、メープルも好きだ。甘いは正義! クヌギ、コナラの木の分布を調べに来て凄いものを見付けてしまった! …のかもしれない。惜しむらくは自領でない事。

 腰に下げたポーチから、ツールナイフを取り出す。


「何をする気なんだっ!」


 幹に傷を付けて採取する気満々だった私のその手を、ルー様が掴んで止めた。

 今日。私が何かをしようとして止められたのは何度目だろう?


「そんな危ないものは仕舞え」


 そんな目で見ないでもいいじゃない?

 目を細めて見上げたルー様は木漏れ日を浴びてきらきらしてるけど、じっとりと咎める目をしてた。

 私のポーチの中は、お祖父様が許可してくれた物しか入ってない。本当ならもうちょっとちゃんとしたナイフや、枝を打ち落とすナタとかを装備したい(正確にはナタはポーチには入らないから別装備)。そういうのは、まだお祖父様から許可されて無い。

 ポーチの中身は、移植スコップと熊手とフォークとツールナイフ。後は採取用の小瓶とピンセット。

 領内を歩く時には背負い籠も装備だけど、キエナ領に来るにあたっての荷物には入れてこなかった。あんまり大荷物での移動は好かないし、大荷物を運んでもらうの悪いから。シンプルイズベストよ!

 芽吹いた青葉を見上げても、落ち葉の中から綺麗な葉っぱを拾い上げて見ても、砂糖楓の特徴だと思う。思うが、私は樹木のスペシャリストではない。楓って一口で言っても、葉っぱの形が違う種類がいっぱい。だから「これだっ!」て、確証を得るには樹液が必須。それも、傷付けた所が甘ければという訳にはいかない…。集めた樹液をある程度煮詰めないと、あの甘い味には出会えないの。


「何本か、樹液が取れる様に傷を付けて!」


 見たところ、木に、今まで採取した跡は無い。

 樹液採取に、時間はかけてられない。どのみち子供の力。同行の大人の手を借りる事にした。本当なら、中心に向かって穴を開けた方が効率がいいんだけど、道具が無いから仕方が無い。

 そしてルー様と向かい合う。

 眉の間に縦じわが寄ってるかもしれない。深ぁ~く刻まれる事になったとしたら、それはルー様のせいだと思う。

 馬を下りてから、ルー様、ぴったり隣か後ろに居るから困ってる。


「ルー様。私のしてる事じゃなくて、別の事に気を向けてくれないですか?」

「ミシェが何をするのかが気になって着いてきてるのだから問題無い」

「も~ん~だ~い~、大ありですぅ~!」


 ぷいっと背を向け、腰を落として熊手で地をかく。

 この作業にも、今日のお出掛けの意味がある。土中の魔石の有無を見てるのだ。魔道具に使える程の大きさが無くてもいい。役に立たないような小さな結晶粒でも多く含まれている所を探してる。


「ちゃんと見てないと、知らないところで面白い事してるじゃないか」


 ぼそっと言った。

 面白い事って、海老さんフィーバーの事ですか?

 首を傾げて考えるも、心当たりはそれくらいだ。

 海老さんフィーバー。それは昨日の湖で、時間つぶしに勧められた岸での海老釣り。何度か手応えを楽しめるよって事だったのだけど、物凄い大漁で、船から下りてきたルー様は、驚きながら拗ねてましたね。ルー様をのけものにしたつもりはありません。ルー様は、お魚釣りを選んだじゃないですか。思った当たりがなかったからと、そっちの方が面白そうだったみたいなのは受け付けません。

 兎に角。ルー様の心の内は分からないけど、もう少し明確な目的を持って欲しいです。見られているのは、とても気になります。


「樹液をどうするんだ?」

「砂糖楓だと思うんですよね。だから、確かめるんです」


 表皮を剥がした所に、滲み出る樹液。それをルー様は指で触れ、ぱっと開けた口に入れた。

 滲み出した樹液はちなみに透明。


「甘く無いぞ?」

「もぉ~っ! だから確かめようってしてるんじゃないですか。手のひらみたいな葉っぱ! はっきりした三本の葉脈! 葉先と葉先の間は丸みのカーブ! なら、後は樹液を確かめるですが、樹液を煮詰めて甘いかどうかなんですよ!」


 拾い上げた落ち葉の葉脈を、裏表とくるくる回したり日に透かして見てるルー様に手を伸ばして、何となく頭を撫でた。


「ミシェは、そんな事まで知ってるんだな」


 年下の私に頭を撫でられるのは面白く無かったのか、さっと避けられて、ぽんっと頭に手を乗せられた。ぽんぽんって…ちょっと屈辱。


「調べました。ど~しても食べたくて、調べました! 図鑑片手に自領の森を歩き回りましたっ!」


 ぷいっとして、ピンセットに持ち替える。


「態々探さなくても、頼めば手に入れて貰えるだろ?」


 公爵家なんだからとか続きそうです。

 そうですね。メイプルシロップは、勿論お祖父様が手に入れてくれました。お祖父様が手に入れたという事は、自領では見付ける事が出来なかったのです。楓の木は多々有れど、甘い樹液のものはなかったのだ。

 兎に角。かっぱいて出て来た土から砂粒のような結晶をピンセットで摘んで集める。

 ちまちまとした作業をする私を、ルー様は黙って見ていた。

 集めるの、手伝ってくれてもいいんだよ?




 葉っぱや木に産みつけられた卵…の、スケッチ。覚え書きメモ。書くのはジークにまるっとお願いしていた。滞在時間と滞在期間があるから時間を有効に使わないとね。

 私は見て回るのと採取で忙しい。

 スケッチした後の卵は、あったように戻しておいたよ。持ち帰る気にはなれないでしょ? だって、何の卵だか分からない虫のだよ、虫の。

 ものはなんであれ、ジークの絵は上手い。メモも詳しいから、図鑑で調べるのも楽そうだね!

 後日の為に採取ポイントの地図を書いてくれたのはキエナ領の騎士様。また来る予定だからありがたい。

 だって、ほら。ディ様は繭をご所望だから。

 『見付けた』『気付いた』が沢山。 

 キノコもあった。 持ち帰って美味しくいただきますよ!

 でも、ルー様? 真似してキノコ取るのもいいですが、それは食べちゃ駄目なキノコだよ? 手を出す前に、取っていいものかどうか聞いた方がいいよ?

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