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 骨を取り出したスープは濾して、色々入れる前に味見をさせてもらった。塩気は無くても美味しいとロアナ様と顔を見合せた。


「骨だけでも出るもんですね」


 何が? 出汁が!

 兎も角。厨房の、皆の雰囲気が少し変わったのかな? 良かったよ。

 どう変わったかというと、意見とか、庶民はこうやって食べてますよ的な事を言ってくれる。覗きに来ていた侍女さん達も、うんうんって相槌を打ったりなんかしてくれる。

 下町じゃ頭や身の付いたままの骨をブツ切りにしてスープで飲んでますって聞いたロアナ様は、目をぱちくりとさせて固まった。そうやって食べる人も居るってだけだから、骨は無くてもいいんだよ。私は骨無し派。

 問題のブロッコリーとベーコンを投入してぐつぐつ始める。残ってた玉ねぎとお芋もついでに入れちゃって下さい。

 お芋煮溶けると、とろんとして美味しいのよ。

 そして包み終わったパンは、オーブンとフライパンで焼いてもらう事に。

 フライパン? って不思議そうだけど、何も言わずに試して下さいね。

 そして蓋をしたフライパンと砂時計を前に、そわそわしてるロアナ様って可愛い。

 そういえば、お肉って、何を用意してくれましたか? 骨付きリブ…ですか? 何か問題でもですか? 半分あって、半分無いですよ。


「クレープ生地を作ってくれませんか、お願いします」


 今度は何をと思うでしょ? あのね、乙女は好きな人の前で大口は開けないものなんだよ!

 私のお願いは直ぐに叶えられた。

 持ち込み瓶詰めから醤油を出し、蜂蜜と合わせて煮詰める。甘じょっぱいタレの出来上がり。これを一人前のお肉を骨から外してスライスしたのにかける予定。そして玉ねぎをあらみじん切りで、我が領地のお魚のオイル漬けと混ぜておく。


「ロアナ様。クレープ焼いて下さい」


 フライパンから取り出した焼きたてパンに感動してるロアナ様に、次のお仕事です。


「上手に焼けるかしら?」

「何でも練習ですよ」


 因みに私は焼けない。焼いた事が無いからね。本当に口先だけでごめんなさい。

 落とし込んだ生地がじゅうっと音をたてる。フライパンを傾けながら大きく回して伸ばす。上手くいったんじゃないかな、見えないけど。ひっくり返す時に、ロアナ様が声をあげてた。破れちゃったみたいだけど、スプーンで生地をぬりぬりして補正。取り敢えず六枚焼いてもらった。


「今度はどうするの?」

「葉物を、レタスあります? そう、それを乗せてお肉。タレかけて下さい。下味の付いてるお肉だから、ちょっとで大丈夫」


 順番に乗せて半分に折ってくるくると巻く。


「これも、同じ様にすればいいのかしら?」

「そうです。そうなんですが…。ロアナ様、どう思います?」


 そう言ってスプーンを渡す。

 玉ねぎと合わせたオイル漬け。これをそのまま巻くだけで良いのだろうか? 味付けであったり、色味であったり…。ここまで、私に従って料理の手を進めてきたロアナ様に、あえて聞いてみる。


「私は、まだ子供だからですけど、玉ねぎの辛みが苦手です。好みの問題ですね」

「そうね…。私は、オイルが執拗い…かも」


 なら、どうする。私達二人は顔を見合せた。

 レタスを敷いただけでたっぷりこれを乗せるのもいいが、もう一捻りロアナ様から引き出したい。

 少し考え込んだロアナ様が、料理長を見る。


「生のお野菜で、サラダみたいに食べれないかしら?」

「きゅうりと、パンの具で使いましたが人参でしょうか? 煮豆も悪く無いと思いますよ」


 きゅうりと煮豆頂きま~す。と、早速レタスの乗ったクレープの上にスティックきゅうり、オイル漬けと赤い煮豆が乗った。


「人数分。数は作らないのですか?」

「何を?」

「このクレープです」


 ロアナ様が焼いた生地は六枚。二品を二個ずつで、問題無いんじゃない?

 こてっと首をかしげた。


「御領主様には…」

「ああ、別に要らないんじゃないのかな? クレープにしたのは、ロアナ様がお肉食べやすい様にだから。ドルレンさんと二人で仲良く気にせず食べてもらいたいでしょ? それだけなの」


 恋する娘の目的は、父親でも義弟の為でも無い。未来の旦那様の為。前者の二人は、たった一人のついででしか無いのだよ。


「サラダっぽい方は、作ってもいいよ」


 そう言って丸投げした。

 急いで生地を焼き出すのを、腕を組んで眺める。

 何か足りない。そう、ちょっと物足りない気がする。

 二種類のパンの方は、丸と楕円に形成。気が付かなかったけど大小二つのサイズで作ってる。まさにロアナ様とドルレンさんのパン。

 ロアナ様は侍女に手伝ってもらいながらレースペーパーで包み始めてる。あくまでも二人分(笑)。

 後は二人分のスープもバスケットに入れるだけなんだけど…。水筒のお茶とコップにスプーン。忘れ物は無いよね…。


「スープの方はどうですか? くたくたに煮えてるのがいいんですけど」


 小皿が手渡される。

 皮をむいたからか、料理人心配の口に残るブロッコリーの筋ぽさは無い。煮溶けたお芋もよろしゅうございます。


「ロアナ様。お味の調整お願いしますです」


 仕上げの塩胡椒ですよ。

 火を止める直前に、乾燥麺をバキバキと砕いて投入した。食事の予定時間には、予熱で丁度いい筈。

 私のお外用の荷物から、一人分用の保温ポット二個を出してもらってスープを入れる。

 思ってもみなかった方法に、不安よりも楽しそうなお顔のロアナ様。

 是非、調理法なんかも話題の一つにして下さい。

 温かいお弁当って、がっつり男心が掴めるそうですよ。(領地のお姉さま談ですが)

 無事にお二人の分はバスケットに詰められた。

 そしてロアナ様は自分のお出掛けのお着替えへとこの場を後にする。

 私? エプロン外してポンチョを着るだけですよ。




 ディ様を初めとした皆のご飯が他のバスケットに詰められていくのを見ながら、私は料理長さんとお話を。

 主に、瓶詰めの保存食の事。

 我が領地は、保存食に対する意識が高い。私が生まれる前。お母様を公爵家に迎え入れる元となった災害で、餓死者を出してしまった事とかが理由ならしい。料理長さんも、その災害には思い当たる事があるようだったけど、キエナ領はそれ程でも無かったんだって。何でも必要に迫られないと創意工夫はされないって事だね。

 ウッドフィッシュをオイル漬けにしたらどうなるのか気になってたから、残ってたほぐし身を塩とハーブを入れて作って貰う事にした。

 後、幾つかの仕込みをお願いする。

 残ったのは賄いで? どうぞ食べて下さい。散らかすだけ散らかしてすみませんと頭を下げたら、料理長さんが笑った。



 

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