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 二頭の竜の顔の間に私は座らされた。座らざるを得ない。離れようとすると、竜が、抗議の声をあげるのよ。

 竜は、大人しい動物では無い。でも、騎竜になる竜は人馴れ(訓練)してて、きちんと言う事を聞くんだって。…本来は。

 私が離れようとすると竜が騒ぐ。抑える為に竜に構うと、お兄さんとディ様がお話しが出来ない。仕方無いのよ。

 短い付き合いだけど、我が家縁の者はジークだけ。この状態で、セバスが信じろと言ったジークの側を離れるのは嫌だった。馬に騎士さんと同乗するのとはちがう。なので、ジークのお膝に抱っこしてもらった。巨体に挟まれて、ジークが太刀打ち(物理的)出来る訳無いのは一目瞭然なの。でも、私の心の安定には手放せないわ。

 そして、大人しくお昼の軽食をもぐる。

 後ろから給仕をしてくれるジークに守られながら、ひたすらもぐる。

 両脇から竜がちょっかいを出そうとするのを、ジークが交わし、私は見ない振りをする。

 目の前に座ったルー様は、そんな私を見てにやっと笑う。

 笑うな! 可笑しくなんか無いよ。さっさとご飯をお食べ!


「舅殿。その子はそもそも何だ?」

「マクラーレン公爵家のミシェイラ嬢だ。早馬で知らせてあっただろ? 大事な客人だよ」

「最初に話したけど、昨日から竜達が落ち着かなくて。スーリャもうるさいし、連れ出して気分転換させようと思ったら、キファも騒ぐ。舅殿が帰って来るのが分かるのかなって連れ出してみた。弟になる第二王子も一緒だろうからって、二人用の鞍を付けてきたぞ、ほら」


 キファという名前の竜を指す。

 そうか、空からのお迎えか。

 ディ様に息子は居ない。ルー様を弟って言うなら、お兄さんはお婿さん?

 もぐもぐが終わった私はご馳走様。そして、目の前にポケットの中を出して見る。何か竜の気を引く物を、私だけが持っているのかもしれない。


「上から舅殿を見つけたのはいいけど、勝手に降下しようとするしで、言う事聞かすの大変だった」


 ハンカチは三枚。携帯食の干し肉ちょっと。お肉に反応するなら、ご飯を運ぶ人に反応するよね。気にしてるみたいだけど、これじゃ無い。だけど、開いた口が食べたそうだったので、半分ずっこで分けてあげる。私の一口に満たない肉を、食べる意味があるのだろうか? あっ、ミントの葉っぱ。持ち上げて鼻先に寄せたらすんすんとぷい。スーリャと呼ばれる竜は、お気に召さなかった様だ。食べるのって、口元に近付けても、これには口を開けなかった。


「あれ、絶対里に連れて帰りたい」

「ドルレン。説明も無く、言うな」


 聞こえてるけど聞こえない。今口を挟んでも、良く分かりそうも無い。王都から帰ってきたディ様にも、状況把握が必要な様だ。花嫁衣裳を熱く語ったディ様が、現段階で何処かへ私をやるとは思わないでおこう。

 蜂蜜飴もあった。肉じゃ無いがどうだろう?

 手の平に一個ずつのせて、これは? と、二頭の鼻先に出す。


「あっ!」


 ルー様が声を上げた。

 竜が「グゥル」と鳴く。舌で、飴玉を弾いてしまったのだ。ころころと転がってく。

 私はもう一頭を見る。


「要らないの?」


 動かない様に見えていた。けどね、ちょっと口を開けてる。おいおい、可愛いじゃ無いの。ぽいって口に放り込む。

 ルー様が転がった飴を竜の前に出したけど、無視されてた。

 拗ねたルー様が、私の手に戻す。

 すんすんしてじゃりじゃりの舌が、飴を追って手の平を舐めるよ。

 ぞわわわって、これ駄目! 舐められるのに我慢出来なくて、口に突っ込んで飴玉を手放した。

 ベチョベチョの手を、拭いてもらう。

 もう、ポケットの中は空っぽ。色々入ってるのは背負いカバンの方で、ジークに持ってもらってたから、それも関係無さそう。

 ぺたぺたと胸を叩く。ポケットじゃ無いけど、あと一つ持ってるものがある。紐で首から下げた小袋を胸元から取り出す。


「キュゥ~」

「キィ~」


 えっ? 「ググゥル」じゃ無いよ。何だか可愛く鳴いた。反応の変わった様子に、再び注目? やだ、やめて! ディ様とお兄さんとキエナ領の騎士さん(竜をちゃんと知ってる人達)の眼力に体が引けた。

 これ? これが原因なの?

 ぶら下がって揺れるそれを、二頭の竜が鼻先でまた揺らす。

 餌付けでこれはあげられないよ。そもそも半分にならないし、食べ物じゃ無いもん。多分。


「お、お嬢様…」


 私を抱えるジークの肩には、竜の首が乗ってる。重たそう。

今話も、お読み頂きありがとうございました。

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