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 ルードルフ様。執拗い。

 どうして坊やか? どうして坊やなんだな!

 お母様やお祖父様を困らせた事があると言ったって、他人に困らせられていい事でも無い。因果応報という言葉があるが、具合いの悪い時はやめて。


「つまり、出発間際に異母妹に謝罪の機会を与えたのは、公爵家としてあるべきという理念からか?」

「どうでしょう?」


 おでこに乗せられた冷たいタオルをちょっとどかして、隣に座るルードルフ様を見上げる。

 眩しっ! 木漏れ日の下でもキラキラだ。


「お祖父様を困らせるのは、駄目です」


 色々言葉を探しても、あの時も今もそう思う。

 はっ! 私も、十分お祖父様に心配を掛けてる。

 歳を重ねて白い物が殆どのお祖父様。心労で抜けるって聞くけど、寂しくなっちゃったらどうしよう? どんなお祖父様でも好きだけど、直視出来るかは自信無いよぉ。

 兎に角。今は休みたい。ルードルフ様を黙らせないと。

 だけど、どうしてそんな事、一々口にしなきゃならないの? どうしてルードルフ様は聞きたがるの?

 お願いだからあっち行って下さいって、言って大丈夫かな? 駄目、だろうなぁー。


「ねぇ、ルードルフ様」

「何だ」

「……」

「だから、何だ」


 考えると、もっと頭痛くなりそ。 


「何故、ルードルフ様がご養子に選ばれたんですか? 選んだのディ様? それとも王様?」

「おいっ!」

「私が聞けない何かはあるのでしょう?」


 だるくて、息を吐き出す。

 そもそも、私にだけどうしてだって聞くのは理不尽よ。


「養子入は自分で決めた。何で私に声を掛けたかは、本人に聞いてみたらいい」

「…それ」

「あ?」

「それですよ。本人に聞いて。お父様達は、私が嫌いだからああなんですよって言えばいいですか? 跡取りとして能力が無かったから、お母様を娶ることになった鬱憤を、十歳の私に向ける馬鹿者って言えばいいですか? そう思ってますよ、私。でもね、嫌いや八つ当たりの理由って、それくらいしか思い浮かばないけど、本当はなんて私に分かる訳ないじゃないですか」


 一気にしゃべって、大きく息を吸い込む。


「曖昧に聞かないで、はっきり聞いて! だけど、分からないものは、分からないんです。それで納得して下さい!」


 ジークの送ってくれてる風が止まった。

 ルードルフ様が息を飲む。


「わ、悪かった」


 何故に、謝る?

 謝るなら、最初から絡むな!


「お前は…。ミシェイラは、あれらに、腹が立たないのかと聞きたかった。立ってるだろうと思ったから、それを聞きたかった」


 ぐずっと鼻がなる。私がべそっかきになったから、ルードルフ様が謝ってきたんだと分かる。

 ジークが目元をちょんちょんと拭いてくれる。濡れタオルだから気持ちいい。


「ごめんな。考え無しだった」


 ルードルフ様は、泣く子には優しくなるのかしら? 王宮でもそうだったよね。


「…ちゃんと謝ってくれたから、許してあげます」

「私が卑怯だったのが悪い」

「ひきょう?」

「あぁ。愚痴を言わせて共感する事で仲良くなろうとしたんだ。悪かったな。ミシェイラは、義父上とどんどん打ち解けるから、焦った」


 タオルをどけて、ジークに助けて貰って体を起こす。

 気まずそうな顔。整った顔が台無し。


「私。ルードルフ様と仲良くなってると思ってました。まだ、仲良しじゃ無いんですか?」

「…」

「そうですね。ルードルフ様の言う通り、ルードルフ様は卑怯者です」

「容赦ないな」

「だって、自分の事は言わないのに…でしょ?」

「そうだな。それがすまなかった」

「それだけ?」


 じっとりと見つめる。


「後は、執拗かった事、か?」

「そうですね。考え過ぎて、頭ずくずくです」


 頭は痛いのに、思わず笑ってしまう。


「ルードルフ様? 私、ルードルフ様がお迎えに来てくれた時には、仲良し出来るって思ってました。だから、仲良しして下さい」


 ぺこりと頭を下げると、「まいったな」と呟いて、顔を半分隠したルードルフ様がいる。


「ルードルフ様の事。ルー様って呼んでいい?」

「なら、私もミシェと呼ばせてもらおう」

「はいっ!」


 聞き出そうとされたのは迷惑の一言につきるけど、子供相手に謝る事が出来るのには花丸をあげましょう。

 私は、ぽふんと枕がわりのクッションに転がる。

 ルー様は、照れたのかはにかみさん。

 えへへっと私も笑う。けして、でへへじゃ無いよ。だけどさ、仲良ししてって自分で言うのって恥ずかしものですね。


「ルー様。私、あの人達の事は、馬鹿だなって思ってる」

「そうか」

「そうです」


 つい力が入った口調で言ったら、ルードルフ様改めルー様が、だよなって納得した顔で私を見た。

 ルー様も、あの人達馬鹿だって思うでしょ? と、確認で聞いたら、やっぱり馬鹿だと思うとお返事。その馬鹿に対して、私が良い子過ぎて我慢しすぎてるって心配したんだって。毒吐きですっきりを予想してたって言うけど、毒吐き慣れてないと難しいみたいですよ。

今話も、お読み頂きありがとうございました。

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