25、白い小鳥
「だいたい何よ、シマエナガの君って」
マチルダは訝しげに、白髪の美形男を眺める。
彼はテリーに注文を告げると、ニコニコしながら自身の長い髪を指に絡めてクルクルと弄んだ。
「ほら、白い」
それから、頭頂を押さえる。
「ちんまい」
そして、自身の顔を指さす。
「それから顔が可愛い。だからシマエナガ」
「いや、自分で可愛いとか言うんかい」
「事実だぞ? そういう君達はジュリアの友人かい?」
「友人、ってか、顔見知り。たまにここで会うのよ。夕食食べるタイミングがかぶるから」
「そうかそうか」
『シマエナガの君』はそう言って納得した様にうなずいた。
「ジュリアにも会社以外の友人がいる様で何よりだ。うちの元兵士社員、内戦期の反動で内側で身内同士で閉じこもる傾向があるから」
「って事は、シマエナガさんはジュリアさんと同じ会社……BWIWの人?」
エコーの気づきに、ジュリアは微笑んだ。
「そう。それもただの同僚じゃない。……前に従軍してた話はしたよね? その頃からの付き合い」
「……元軍人、って事?」
そう言ったエコーに、シマエナガの君は軽く笑みを浮かべながら答えた。
「御名答。内戦期にゃ少年兵として15の時からジュリアと同じ部隊……第666特別大隊の一員として戦場にいた」
彼はそう言って、人差し指を動かして引き金を引く動作をする。
「……ああ、そうだ。俺を見た時、チビな男だと思っただろ?」
シマエナガの君にそう聞かれ、マチルダは言葉に詰まった。まさか面と向かって「はい。そうです」とも言えない。
「いや……その……」
「皆まで言うな。顔に書いてある。……10年近く戦場にいたせいで、栄養失調と睡眠不足で思春期半ばで身長の伸びが止まっちまった。おかげで26にもなってこんなチビだ!」
「それは……」
「だから国に伸びなかった分の身長分の賠償金を請求しようと思ってる」
シマエナガの君はそう言って、一瞬沈んだ空気を笑い飛ばした。おそらく、本気で訴訟しようとは思ってはいまい。ブラックジョークだ。
「AKS-74Uって銃知ってるかい? 俺と同じくらいチビの銃だ。そいつを抱えてなんとか生き延びたんだ」
「ごめんなさい。銃についてはあんまり詳しく無いわ。ごめんなさい。どんなやつか分からない」
「残念だ」
「……軽いノリの人ね。この人。嫌いじゃないけど」
少し話して愉快な男だ……とマチルダは思った。嫌いなタイプではない。
「いやー……軽口好きなだけで、割とこう見えて執念深いよ。この人」
「おいおい、ジュリア。なんだ人を問題人物みたいに」
シマエナガの君は不満げに口を尖らせた。エコーはそれを微笑ましく見ていた。
「仲良しなんですね。お二人」
「ジュリアとは10年来の付き合いだからな。元666大隊のメンツと一緒に作った会社でも一緒。もう熟練夫婦みたいなもんだ」
「夫婦……っていうか、家族?」
「そうそう。家族だ。家族。アットホームな職場だぞ。BWIW」
そう言ってシマエナガの君は楽しそうに微笑んだ。頭のアホ毛がぴょこぴょこと揺れ、本当に動き回るシマエナガを彷彿とさせた。




