22、予定
午後からの作業もトラブル無く、淡々と続いた。二人とも作業開始前に、軽く手を合わせてから戦車の周りの土を黙々と、スコップでどけていく。
16時頃にはほぼ全体の土を掘り起こし、クレーンで吊り上げる為のワイヤー取り付けに移った。落下事故が起きないように、ここはとくに入念に行った。ワイヤー取り付けが終われば、後はクレーンで吊り上げて回収用のトレーラーに載せて固定するだけだ。
クレーン車が重々しい音と共に、30トン以上ある車体を持ち上げる。土を掘り起こした甲斐もあり、ゆっくりと、だが確実にT-55は地面から離れていく。
「……」
エコーはそれをやはり複雑そうな顔で見つめていた。
「……花束供えてた人、これ、無くなってたら、がっかりするかな?」
トレーラーに車体が載った。この後はスクラップ工場で解体され、溶かされて、新しい資源に再生される事になる。
「さあ、ね。でも、私達が正しい事をしたのは事実よ。これでこの道はまた使えるようになる。資源も新しく生まれる」
「……うん」
砲塔の方も同じようにトレーラーにつまれた。これで今日の仕事は完了だ。
「……17時。思ったより早く終わったわね。最悪明日までかかるかと思ったけど」
マチルダは懐中時計で時間を見る。17時を少し過ぎたあたり。約束ならもう今日の仕事は終わりだ。
すると、朝仕事内容を話してくれたスクラップ業者の社員がやってきた。
「お疲れ様でした。おかげで今日中に撤去完了出来ました。それでは約束の報酬を」
労働者達は順番に報酬の入った封筒を受け取る。二人もそれを受け取り、すぐに過不足が無いか確認した。きっちり約束通り9000ブラック入っていた。
「よし、誤魔化し無し。良い業者だ!」
マチルダは満足げに報酬を懐へしまって大事に抱えた。
「……借金の返済しないと」
エコーは封筒をマチルダへ差し出した。だが、彼女はその中から1000ブラックだけ引いて残りをエコーに返す。
「分割払いで良いわよ。今夜の宿代や食費だっているでしょう?」
「良いの?」
「別にそこまでガメつくないわよ。でも勘違いしないで。残り2900ブラック、踏み倒すのは許さないから」
「ちゃんと計算してるんだ」
「当たり前でしょう」
マチルダはそう言って、別の話題に切り替える。
「それより、今日の報酬でなんか服買いなさいよ。これからの季節、一枚の服をずっと着るのはキツいって……」
「そうだね……」
エコーはもっともである、という感じでうなずく。マチルダはエコーを見ながら、少し何かを考える。
「決めた。明日は服を買いに行こう」
「服を?」
「服屋の場所、分からないでしょう? また案内するから。明日の予定は決まりね」
マチルダはそう言って、うんうんと頷いた。
「ま、今日の仕事は終わりだし、この後は食事にしましょうか」
「どこに行くの?」
「雪風屋。最近はカレーがマイブームなの」
鼻歌混じりで言うマチルダ。対してエコーは少し焦っていた。
「……俺、辛いのは」
「安心して、甘口頼むわよ!」
マチルダはそう言って、エコーの手を引いた。
「さ、帰りましょうか。ハマンへ」




