2、適応力
マチルダは地雷を処理した後、さらに別の地雷を探すべく、再び地面を金属探知機でさがしはじめた。
この場所に埋まっているはずの地雷はあれだけではない。
この場所は戦場だった。
旧都、ハマン近郊の草原地帯。かつて、ここには政府軍の陣地があった。突撃してくる敵兵を足止めする為に敷設された地雷は、現在ではこの場所に立ち入ろうとする人間を立ち入らせない悪趣味な罠と化していた。
「ちっ、Type72はプラスチック製だから探知機に反応しにくいのよ……」
マチルダは、そう1人愚痴を言った。
「政府軍の連中、後先考えずにばらまきやがって……」
思わず、口も悪くなった。
本来、この様な地雷除去など、侯爵令嬢の彼女がやるような仕事ではない。相応の理由がある。
***
ブラックバニア王国は変な国である。
なんと、21世紀の現在にいたるまで絶対王制を続けている。
自動車もある。飛行機もある。現代的な建築もある。ただ、近代的な仕組みと価値観だけは無かった。
世界地図の端っこ。資源も地政学的な価値もない小さな王国。それがこのブラックバニア王国だ。だからこそ、列強国に侵略される事も植民地にされる事も無く、古いまま生き続けてしまったのだ。
14年前。まだ、マチルダが7歳の頃。
国の仕組みに対し「こんなのおかしい!」と叫んで反旗を翻した人々がいた。当初は国を良くしたい、という善意だった。
が、理想だけを掲げて実務が伴っていなかった彼らもすぐに腐敗し、王党派の政府軍と革命派の反政府軍による泥沼の内戦が続くこと約12年。
国中をボロボロにした内戦は昨年、ようやく終結した。だが、終わった時には、すでにブラックバニアは元の国には戻れなくなっていた。
王侯貴族の大半は内戦の混乱の最中に死亡、行方不明。生き残りの第3王女の王党派派閥が国を再統一したが、死人は生き返りはしない。
……その死人の中にはマチルダの家族も入っていた。
***
「あと、2、3個は見つけたいな」
地雷を探しながら、マチルダはそう呟く。
彼女が幸いだったのは、貴族令嬢にしては妙にしぶとい所だった。
天涯孤独といえど腹は減る。食べ物を得るためには働いて稼がねばならぬ。
この社会の原則に、この元貴族令嬢はあっさりと適応した。このご時世の中、くじけず、よくやっていると言える。
……その仕事が日当20000ブラック。――地雷1個発見で追加報酬5000ブラックの内戦中にばら撒かれた地雷撤去の仕事なのは、あまりにも適応しすぎと言わざるをえないが。




