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093⚫️対立ではなく 全てに差し向けられる手
どれほどの時が経ったのか、ヤリスギにはわからない。
意識の混濁の中で、彼は幾度も’彼岸の花園’の幻影を見た。
誇り高き体術も、鋭い知略も、飢えと病の前では無力だった。
痩せこけたその姿に、かつての’影の軍団’の’頭’の面影はない。
島には死の臭気が満ちていた。
蔓延する疫病、尽き果てた食糧。
子どもも老人も倒れ、誰もが静かに死を待つしかなかった。
追い打ちをかけるような嵐に、
島民も、山も海も、すべてが等しく死の淵に立たされていた。
その時、
漆黒の荒波を突き抜けて、一隻の船が入港した。
上陸した人々は、驚くべき手際で動いた。
身分も罪科も問わず、倒れた者すべてに治療を施し、
滋養に満ちた糧食を配り歩く。
地獄に差し込んだ、あまりに眩い救いの手。
それは王の法令を公然と踏みにじる反逆行為であった。
だが、もはやそれを咎める者は一人としていない。
人々はただ涙を流し、
泥にまみれた手で、目の前の救済に祈りを捧げた。
その救援部隊の先頭に立ち、
静かに指示を飛ばす男がいた。
かつての’将軍’は今、
命を繋ぐ’希望の灯’として、そこに立っていた。
・・・ガルド・バルハイン。
その名を、島の誰もが忘れないだろう。




