091⚫️珍事態
「どうしようかな。」
ウィルフレッダは、ウィルフレッドとして会議の席に座っていた。
公国のいつものメンバーたちが円卓を囲み、静かな緊張が漂っている。
「住むこと自体は問題ないと思うのよ。公国は流民も難民も亡命者も受け入れてきたし。」
ウィルフレッダは言葉を選びながら続けた。
「でも、その人たちが故国への反対勢力として活動するとなると・・・話は複雑よねえ。」
ヴァルターが腕を組む。
「懸念はわかる。だがウィル、あの国は既に何度も我らを侵略しておるのだ。何を今さら遠慮が要る。彼ら彼女らの反旗、ワシは後押ししてやりたいがな。」
「アリス、あなたはどう見る?」
問われたアリスは指を組み、慎重に口を開く。
「ウィル、これは歴史の教科書にある定番です。亡命者が組織化され、受け入れ国がそれを支援する。その先にあるのは、泥沼の勢力争いです。」
「公国がその渦中に自ら飛び込むのは、賢明ではないと思われますが。」
マギの静かな、だが断固とした指摘。
ヴァルターは豪快に笑い飛ばした。
「正論だな、マギ! だが、正論ばかりでは歴史は動かんぞ。」
「閣下、我らは歴史を動かすために生きているのではありません。民の安寧を守るためにいるのです。」
全員が正しく、ゆえに誰も譲らない。
常に一致団結してきたこの円卓で、合意の出口が見えない。
それは公国の’歴史’において、極めて稀有なことであった。
ウィルフレッ’ダ’が公の場ではウィルフレッ’ド’と名乗る顛末は、いくつものストーリーで描写していますが、例えば 第1部(「世界線をこえて」で「第1部」とはなっていません)の087●じゃじゃ馬ならし? https://ncode.syosetu.com/n7021lz/80/ をご覧ください。




