081⚫️盟主 & 082⚫️立つんだ!
081⚫️盟主
「盟主様。時は満ちてございます。」
盟主と呼ばれた男は、’影の軍団’の頭、ヤリスギからの伝言を受けた。
そうか。ついに、ラスカルが・・・。
皇太子の第三妃は、遠い親戚のひとりだった。
この膝の上で眠っていた日が、昨日のことのようだ。
だれも知らんことだがな。
盟主は外套を着て家を出た。
妻の寝顔をもう一度みると
バルハインは王城に向かった。
082⚫️立つんだ!
戦略とは、常に不確定要素との戦いである。離職票を手に入れた彼は、「高年齢求職者給付金」の手続きという重大任務を完遂するため、旧拠点の家への迅速なる移動計画を立案していた。
明朝八時三十分。ハローワークの開庁と同時に敵陣の最前線へ切り込む。それが、緻密な情報収集の末に導き出した最短の攻略ルートであった。しかし、その作戦は「あの家の近くの美容室にいこかな」という妻の最大の不確定変数によって、脆くも崩れ去ろうとしている。
「一緒に行くわ、車、乗せて」という進軍の合図があったかと思えば、「やっぱりやめとく」と撤退の報が入る。さらに数刻後には「どうしようかな」という、軍師をも絶句させる曖昧な中立宣言。時計の針は無情に刻まれ、完璧だったはずのタイムスケジュールは、音を立てて瓦解していく。
オトコは並行処理が苦手だというが、まさに今、彼は「役所の手続き」と「妻の心理的揺らぎ」という二つの世界線の狭間で翻弄されている。かつて彼が描いたバルハインのような、静かなる覚悟はどこへ消えたのか。
だが、これもまた人生という名の「推敲」なのだ。予定通りの朝を失う代わりに、彼は予測不能な物語を手に入れる。戦略的な勝利より、この不条理な日常の平穏こそが、守るべき「安寧な生活」の本質なのかもしれない。
ヤリスギな準備を整え、彼はただ、その「時」が満ちるのを待っている。
そんな彼の、明日はどっちだ! 立つんだ、ジョー!!
いや、ジョーって名前じゃないんだよなあ。




