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第27話 電車内

「これって…どう言う」


「さ、さあ」


 まるでさっきまでの静けさが嘘みたいに、電車の中は騒がしくなっていた。私はスマホを持ってないから詳しい状況はわからないけど、多分全員のスマホが使えなくなったんだと思う。


 誰もが一斉に狂ったように画面を叩いてる。


 でも…全員のスマホが使えなくなるなんてこと、あり得るのかな。


「なによこれ、まさか通信障害?」


「こう言うことってよく起こるんですか」


「起こるわけないでしょ」


「だよね」


 ただの通信障害で終わる気がしない、何かが起こる前兆のにしか思えない、いや——もう始まってる気がする。


 そう思った矢先、電車に乗っていた能力者さん達がつけていた能力規制の首輪のランプが一斉に赤色に点滅し始めた。


「は?」


「なんで」

「お前なんで能力を」

「違う違う違う、俺使おうとしてないって」


「おいどう言うことだ」


 あの装置は能力を使ったら電流が流れるらしいけど、あの警告って…もしかして、いやもしかしてなくても。これって……


「う"!!」

「痛い!!」

「ダダダだだだだだだ!!」


 首輪が激しい警告音を鳴らしながら電流を流し、首輪をつけた車内の能力者全員が苦しみ始め首を押さえ、崩れ落ちる。


「痛い、やめ……」


 ざわついていた車内が一気に騒がしくなり、絶叫と悲鳴が溢れだす。


 全員がパニック状態になるも狭い車内で、逃げ道などあるわけがなく、逃げ場のない車内で、悲鳴と絶叫がぶつかり合っていた。


 そんな異様な光景を私ただ突っ立って見ていることしかできなかった。


「……は?え、な…何これ、何が起きてんの」


「こ、こんなのおかしいです…よね」


「いやいやいやいや、こんなのあり得ないって、スマホ使えないならまだしも、首輪の誤作動が一気にこんなに起こるなんて、絶対にあり得ないってこんな事」


「で、ですよねこんなのおかしい、絶対におかしいですよ」


「う、うん…でもどう言う事、なんでこんなことが起こるの、自然現象…なわけないし、人為的な…と言うかもしかしてテロ」


「でもテロだとしても誰がなんのために」


「知らないわよ、でもテロでもないとこんな事起こらないって」


 自然現象でもテロでもこの状況を早くどうにかしないと、人がいっぱい死んじゃう。


 でもどうにかって言ってもどうすれば……そうだあの首輪自体はただ電気が流れるだけだし、私の分子操作ですぐに無効化できる。


 そうと決まればすぐに能力で……いやだめだ人が多すぎて全員回るのは無理だよ。


 それに多分他の車両でも同じことが起きてて、この人混みの中移動するなんて無理だしできるわけがない。


「ゔっ!!あ!!」


「大丈夫ですか」


 目の前の席に座っていた男性が突然苦しみ始め、猿渡さんは屈んで男性の肩に優しく触れた。


「あ…あ……が……」


 この人は首輪を付けてない、それなのになんで苦しんでるんだ。


「猿渡さんその人怪我とは…」


「して…ないけど、でも物凄く苦しんでる、なんかのアレルギー反応かな」


「あ、あの」


 男性の隣に座っていた女子高生が手を振るわせながら男性のカバンについてる赤い札のようなストラップを見せてきた。


 その赤い札のストラップには白いプラスとハートのマークが書かれてる、けど…なんなんだろうこれ。


「もしかしてヘルプマーク」


「な、なんですかそれ」


「え?待ってライリーの世界ってこれないの」


「はい」


「体に障害とか病気とかを持ってる人がつける奴、その…ほら見た目だけじゃわからない病気とかあるじゃん、そう言う人のためのやつ」


「あ、あのあの、その…その人多分……心臓が機械の…」


 そう言いながらヘルプマークについてるメモを猿渡さんに渡し、私も猿渡さんの後ろからそのメモを見る。


 VAD?を装着してます…バッテリーで血液を循環させてる…みたいなことが書かれてる。


「もしかして…スマホや首輪だけじゃない」


「電子機械全部が誤作動!?そんなバカなことある」


「猿渡さんなにか出来ることって」


「できるって…何すりゃいいのこれ、人造心臓が壊れた時の対処法なんて知らないわよ、心肺蘇生とかすればいい」


「でもその機械説明見る限り、ポンプで血液を循環させてるんですよね、そのポンプが動かなくなってこうなったなら、心肺蘇生って意味ないんじゃ」


「ならどうしろって言うの」


「え、えーっと……こうなった原因を取り除くしか…」


「出来んのそんなこと、そもそも何が原因でこんなことが起こってるかわかんないのに」


「でもそれしかないですよ、逆に猿渡さんはこの状況をどうにかする方法わかるんですか」


「と、とりあえず…警察に連絡して助けを呼べばなんとかなるかな」


「スマホ使えないのに?」


「…………」


「…………」


「う、うっさいわね、そもそも私達に何かできるわけないじゃない、ヒーローでもなんでもないんだから」


「だからってただ見てるつもりは…」


 ギシ


「ん?」


 なんだろう…一瞬電車の上から何か音が聞こえた気がした。


 明らかに電車が動く時になる音とは別の音…まるで強力な磁石を剥がした時みたいな音だ。そんな音が規則的に聞こえてくる。まるで足音みたいに


「なに…どうしたのライリー」


 いや…まるでじゃない、これ足音だ。猿渡さんの言うみたいにテロだとしたら…


「お、おーいライリー」


 間違いない、この上に犯人がいる。


 逆にこんな状況で電車の屋根の上にいる人が無関係のわけがない。


「……後ろの車両に移動してる」


「え?何が、ちょっとライリーさっきから何を…」


 警察が来るとは思えないし、来たとして解決するのに何分かかるかわからない、それに時間が経てばこの人以外にも人が死ぬ、なら…


「やるしかない」


「待って何やる気ライリー」


 このままだとたくさん人が死んじゃう。


 天井の分子を人が通れるレベルで空気に近い状況にして天井に穴を開けると、ハシゴを作ってよじ登る。


「よいしょっと」


「は!?ちょっとライリー何してんの、戻ってらっしゃい、ちょっと聞いてる!!」


 穴から体を出し周囲を見渡す。当たり前だけど風がものすごく強い、落ちないように気をつけないと…


「…って……なんだあれ」


 電車の屋根には体から青白い電気を放っている男が明らかに怪しい男がそこにいた。


 その男は電車の中で聞いた異音を足から鳴らしながら後ろの車両に向かって歩いていた。間違いない…絶対にあいつだ。


 逆にあいつ以外いないでしょ。


「ねえ!!」


「アハハハ、順調順調超順調この調子なら後1分もかからねえよ」


 風で振り飛ばされないようにゆっくりと屋根の上に登り、落ちないように電車に手すりを取り付け強く握りしめる。


「ねえ!!」


「これで世界が変わる、そんで俺は金がっぽがっぽよ、アハハハ」


 電車の音のせいか声が全然届いてない、こうなったらメガホン作って…


「きーーーーーん!!!!」


 メガホンに向かって全力で声を出したら、ノイズキャンセルか何かが発動したのか、私の声は届かず、耳をつんざくノイズだけがそこら中に響いた。


 その音に私が顔を顰めるように男の髪が逆立ち足を止めた。


「チッ!!うっせな!!このや…あ?」


 男の人が怒りながら振り返り男と目が合った。


「…………」


「……………」


「…あ、どうも」


「…は?」

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