――管理者報告書No.03――
【記録種別】過去研究の調査報告/個人所感
【提出者】管理者X
【提出時刻】不定(協力者との接触後)
過去について調べてみたら、予想以上に面白い情報が手に入った。
私は考古学者ではない。だから、専門家に直接会って話を聞いてみた――驚いたことに、意外と気が合った。
彼女は、私の研究に協力してくれると言ってくれた。
生涯孤独だと思っていたこの研究に、まさか他者が加わるとは。正直、少しうれしい。
特に興味を引かれたのは「クローシス実験」という研究だった。
簡単に言えば、魔術や錬金術を用いたクローン作成技術の一種。
魔法なんて迷信だと思っていたが、文献を追えば追うほど――本当にあったのかもしれないと思えてくる。
では、なぜ今は失われているのか?
その問いに明確な答えはない。だが、失われた理由より、かつて存在したかもしれない事実の方が重要だ。
この実験は、ナスタ国というかつての大帝国で実施されたという。
不死身の兵士を生み出すため、テレパス能力者を使って、意識・記憶・人格をクローンにコピーする技術を開発したらしい。
死んでも、保存された情報をクローンに上書きすれば、見た目も中身も“同じような存在”が再現される。
それは、確かに“死なない兵士”と言えるかもしれない。
だが、それは本人ではない。
本人は、もうどこにもいない。
記憶や人格のコピーが、どれだけ似ていようと、それはただの模造品に過ぎない。
私が求めている“死の先にある本質”とは、違う。
……とはいえ、これは私の研究にも応用できる可能性がある。
“魂と肉体の乖離”に関する良質な資料になるだろう。
他にも、彼女から興味深い話を聞けた。
死ぬたびに2人に分裂する能力者がいたという。
再生ではなく分裂――それも、能力者ひとりの力で可能だったらしい。
中でも、その分裂体のひとつが「ドラキュラ伯爵の妻」になったという噂まである。
馬鹿げた話だと思っていたが、まったくの無価値というわけでもなさそうだ。
魂の体重測定と同じで、表面的には無意味でも、見方を変えれば有意義な示唆がある。
意外にも、有意義な報告書になった――そう思う。
(了)




