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第25話 規制の首輪

 私は壁にもたれかかりながら、交差点を眺めていた。猿渡さんはスマホを充電するのを忘れていたみたいで、実家への帰り道を検索中に充電が切れちゃった。


 だから今は操作できるぐらいの充電が貯まるまでのんびり待っている。


 信号が変わるのをもう3回は見ているけど、点滅では走るのに、赤になるとゆっくり歩く人ばかりだった。


「やっぱり変だよ」


「なにが?」


「なんでみんな赤信号で歩くの? 点滅してる時は走る癖に」


「それは……あれだよ、うん…その……横断歩道に入った時点で横断歩道を渡らないといけないじゃん」


「それはわかりますよ」


「だから一度入ったら、どんだけゆっくり行こうが変わらないじゃん、だから赤信号で歩くんだよ」


「なるほど、でもなんで点滅で走るんですか」


「そりゃ…一応間に合わせる努力をしましたみたいな体制じゃない」


「意味あるんですか、そもそも危険だから赤信号なんですよね、轢き殺されるかもしれないのになんでちんたら歩くんですか」


「車側の信号が変わるまでに時間があるからね」


 理由を聞かれてもやっぱり納得できないや。


 そんなことを思いながら横断歩道を眺めていると、通行人の人達の中に首輪の様な装置をつけている人がいることに気づいた。


 1人…だけじゃない2…3……4人、何人かが同じ首輪をつけてる。


「ん?」


 ふと横断歩道以外のところに目を向けてみると、街を歩く人達の中にそんな首輪をつけてる人が少なからず居た。


 人によっては少しデザインが違うけど、パッと見た感じ5人に1人はつけてる気がする、おしゃれ…じゃないだろうし、なんなんだろうあれ。


 それに首輪をつけている人とそうじゃない人に距離の様なものを感じる、ほんの少し…ひと3人分ぐらいの距離がある、そんな気がする。


「…………ん?」


 何の気なしに、辺りを見渡していると学校の帰りだろうか、同じ制服を着た高校男子達が視界に映った。


 10人ぐらいのグループでその中の9人は鞄を持っていない、首輪をつけた1人の男性が10人分のバックを持って少し離れた位置で歩いていた。


 その男性はとても疲れている様に見えるが、残りの9人はそんな男性が見えないみたいに会話をしている。


「それでよ」

「てかそろそろ電車くるくね」

「マジやん、おい甲斐田」


「な、なんだい」


「そろそろ荷物返せよ」

「もう名古屋駅ついたしよぉ」

「あんがとな甲斐田」


 そう言いながら集団は甲斐田と呼ばれた男性に預けていた鞄を持っていくと、解散の雰囲気になっていく。


「じゃあそろそろ解散すっか」

「せやな、にしても今日で今年の部活終わりかぁ」

「てかよ明日クリスマスだし、みんなで集まんねー」

「いいじゃん、それ最高」


 集団が話す中、甲斐田は鞄の中を開け、首をかしげる。


「集まんのいつにする」

「そうだなぁ」


「お、おい」


「とりあえず夜でよくね」

「だよな夜中にここで…」


「なあ春!!」


「ん?どうした甲斐田」


「お前俺の鞄と間違ってないか」


「え?嘘だ……あ、マジじゃん、すまんすまん、そっから投げてくれん」


「全く気をつけろよな」


 そう言うと鞄を投げ春と呼ばれた人は鞄をキャッチし、春も甲斐田の鞄を投げると鞄はあらぬ方向に飛んで行き地面を転がった。


「あ」


「あ、悪ぃ、変な所に…」

「うわぁお前まじかよ最低だな」

「違うってわざとじゃねえよ、練習で疲れててさ」

「お前謝っとけよ」

「ごめんねごめんねー」

「いつのネタだよそれ」


「ハハハ、アハハハハ、別にいいさこれぐらい…」


 あからさまに作った様な笑い声をしながら鞄を拾いにいく。


「てか甲斐田も来るか?明日のクリスマス」


「え、あ……どうかな、親がなんて言うかだけど」


「甲斐田の親厳しいもんな」

「バリバリの差別主義者だもんな」

「規制されてる能力者が嫌いだからってさ、息子相手にも同じ態度はなくね」


「そうだねハハハハ、いけそうだったら連絡するよ」


「りょ」

「じゃあ帰るか」

「だな〜部活マジでだるかった」


 高校生達はバラバラに分かれて人混みに消えていく、そんな中、甲斐田は鞄の埃を軽く叩くとため息をついた、そのため息に連動するみたいに首輪のランプが一瞬赤くなった。


 そのランプの変化に気づいた甲斐田は


「…クソが」


 そう呟きランプが見えないように手で隠しながら大きく一呼吸して吐くと、ランプは緑色に変わり手を離す。


「チッ…こんなんで反応すんなよ」


 そんな悪態をつきながら人混みに消えていく。


 これも一種の日常なんだと思うけど、なんだろうとても違和感を感じる、その…感情が薄いというか、怒りを感じないというか……ない。


 いや…怒っていないんじゃない。怒れないようも見える。


 あの首輪が関係してるのかな。


「あの猿渡さん」


「ん、どした。あ、やっと電源ついた、これで調べられる」


「ちょくちょく首輪つけてる人がいますけど、アレなんなんですか」


 私が首輪をつけている人を指さそうとすると、猿渡さんが慌ててその手を下げさせた。


「こら、指差さないの」


「ご、ごめんなさい」


「で…首輪?」


 スマホから目を離し横断歩道をチラ見すると、「あぁ〜」と言うような声をあげて視線をスマホに戻す。


「な、なんですかその反応」


「いや、確かに何も知らなかったら首輪に見えるなぁ…って」


「首輪じゃないんですか」


「アレは首輪じゃなんて能力規制装置、第3能力者以上はつけないといけないやつ」


「(゜〜゜)」


「な、なにその顔」


「……あの、もう少し噛み砕いて説明して欲しいです、いきなり謎の専門用語並べられても分かりません」


「せ、専門用語って言われても」


「だって分からないものは分からないんです」


「簡単に言うと…ほら、街中でさ危険な能力ってあるじゃん」


「私みたいな」


「そ…うだね、うん、そう。そう言う危険な能力を使わせないようにするための道具」


 能力の規制か…話でしか聞いたことないし、そんなのがある程度にしか思ってなかったけど、あんな感じで規制してるんだ。


「でも…あんな首輪で何ができるんです、パッとみた感じディカナスデュウムは使われてないぽいですけど」


「……ディ…ナ…ウ……え?なにそれ、いきなり変な専門用語出さないでよ」


「専門用語じゃないですよディカナスデュウムは…えーっと……その物凄く安定してて反応しない分子で、その性質が能力使用時の分子変容を阻害することで能力を…」


「ごめん…何言ってるかわかんないし、多分そんなの使われてないよ」


「え?じゃあどうやって能力を規制してるんですか、ディカナスデュウム以外に規制できなそう方法が思いつかない気が…」


「えーっとね、嘘発見器って分かる」


「わ、分かりますよ馬鹿にしないでください」


「してないって。その…なんだろう私も詳しく知らないからなんとも言えないけど、能力を使う時独特の生体電気があるんだって」


「能力信号のことですね」


「そうそれ、それを感知するとその信号を……なんだっけな、乱すと言うかなんと言うか……その電気信号を電流で阻害するとかなんとか」


 なんとなく言おうとしていることはわかる。


 多分あの装置は能力を使う時に体に出る電気信号を感知した瞬間に、その電気信号を阻害する電流みたいな物を与えて能力を抑制するのかな。


 うんうん…電流を流して……ん?


「………え?待ってください、電流流すんですか」


「え、まぁ…そんな感じだった気がする」


「理屈はわかりますけど、それって危険なんじゃ…だって生体電気で反応するって考えたら、手を動かそうとした瞬間に電流が流れるってことですよね」


「そんなんじゃないよ、あくまで能力を使おうとした瞬間に流れるの」


「いやいやいや、だとしてもダメじゃないですか、いくらなんでも電流は」


「けど、それ以外の方法はないし、あったとしても量産が無理なんだと思う、対象者は何億っているからね」


「納得しかねます、それにあんな小さな機械で能力信号と生体電気の区別がつくんですか」


「それに関しては色々言われてる所はあるし、なんなら能力によっては感情の起伏でも反応するんだっけな…」


「ダメじゃないですか、そんな欠陥だらけの道具を使うなんて」


「その欠陥だらけの道具のおかげで、平和が保たれてる、道具のおかげでライリーの言う人と人の距離が近い世界が出来てる」


「…そう……ですか」


 納得はできない、けどこれを否定する資格は私にはない。だって別の方法を思いつくわけでもないし、この街にはついさっき来たばかりだから。


 でも…なんだかな。


「スマホ使えるようになったし、そろそろいこっか」


「………はい」

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