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Dータウン・ライアー 〜〜ようこそ死者の街へ〜〜  作者: 神川 真琴
E-3編 もしも私が街を出なかったら
47/55

――報告書No.596 ――

【記録種別】音声記録/管理人・クローシス会話記録

【提出者】アーティカル

【提出時刻】対象個体帰還後


 

《録音開始》


クローシス

「……どういうつもりだ」


管理人

「どの件だい」


クローシス

「今回の件全般だ。今頃になって命の尊さにでも気づいたか?

殺さないどころか、何もせず帰すだけとは。甘すぎやしないか」


管理人

「クローシス……君は、血が持つ特別な力を信じるかね」


クローシス

「くだらない。また脱線か」


管理人

「大切な話さ。

たとえば震災が起きた時、有象無象の人混みの中から特定の誰かを見つけるなんて、普通は不可能だろう」


クローシス

「当然だ。場所によっては何百人もが逃げ惑う。

探す側だって気が動転している。そんな状況で見つけられるわけがない」


管理人

「普通はそうだ。当たり前の話だよ。

だが、そういう状況で家族を見つけた者の話が、実際に存在している。しかも一つや二つじゃない」


クローシス

「それがどうした」


管理人

「他にもある。

遠く離れた場所にいながら、重病の家族の異変を感じ取った者。

双子や血縁者が、同じ日に同じ物を買っていたとか、水を飲むタイミングまで一致していたとか——」


クローシス

「それで桶屋が儲かるとでも言いたいのか」


管理人

「そうじゃない。

私はね……人間の血というものは、ただ遺伝子を運ぶための器ではなく、もっと目に見えない“運命”のようなものと結びついているのではないかと思っている」


クローシス

「それが科学者の見解か。素晴らしいな。

私には、どこら辺が科学なのかさっぱり分からなかったよ」


管理人

「科学者だって、幽霊や宇宙人のような非科学的存在を信じることはあるさ。

信じるからこそ確かめたくなって、科学者を志す者もいる」


クローシス

「そうか」


管理人

「私自身、さっきまでああいう話は偶然だと思っていた。

だが、こうして遺伝子だけでは説明のつかない“血のつながり”を見せられるとね……

やはり血というものは、運命か何かで結ばれているのだと思わざるを得ない」


クローシス

「血のつながり……それが理由で逃したのか」


管理人

「それもある。

だが、ある人との約束があってね。

私情だと笑いたければ笑えばいい。

案外、約束というものは研究よりも人を動かすものだ」


クローシス

「お前の言う通り血が運命を手繰り寄せるというのなら、奴らはまた来るぞ」


管理人

「血は隠せんさ。

彼女たちが来るというのなら……それもまた運命だ。

あるがままに従い、楽しもうじゃないか」


クローシス

「私の仕事が増えなければいいがな」


管理人

「人生には緩急が必要だと思うよ」


クローシス

「私の人生は常に急だったよ。そろそろゆっくりさせてくれ」


管理人

「有給申請はいつでも受け付けているよ」


クローシス

「有給中に奴らが来ない保証はあるのか」


管理人

「さあ」


クローシス

「はぁ……」


管理人

「君がため息とは、珍しいな」


クローシス

「悩みの種が増えそうだと思ってな。

……それより、もう三年か」


管理人

「ん? 三年? 何の話かな……

……ああ、そうか。ここに来てから、もうそれぐらいは経つか」


クローシス

「時が経つのは早いもんだ。お前の失敗作が増えるたび、そう思うよ」


管理人

「失敗? ははは、失敗ではないさ。

“未来への投資”と言ってもらおう」


クローシス

「だといいがな。

……今回も準備は出来てるんだろうな」


管理人

「無論。出来ていなかったら、追い出してはいないさ」


クローシス

「それなら、これで三体目になるな。

今度は失敗するなよ」


《録音終了》

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