第19話 身長
「つまりだ、出口を設定しなければ出口には辿り着けない。君達がこの図書館に入った時点で逃げることなど不可能なのだよ、これで理解できたかな」
仮面越しでも分かるほど口元を歪めながら、管理人さんは私たちを蔑むように睨みつけ見下ろしていた。
管理人さんの言葉の全てを理解はできてない、けど空間拡張技術は空間と空間をつなげる技術で、空間の先を自在に設定できる。
管理人さんの言ってることが本当なら、今…この図書館に出口はない、もう逃げられない。
「くっ…」
最初から最後まで手のひらで踊らされていただけだった。
「滑稽とまでは言わないが、なかなか面白かったよ、まるで虫籠で飛び回る虫を見るようだったよ」
「それ滑稽にしてるでしょ」
「捉え方次第さ、まぁ君らが滑稽だと捉えたのなら滑稽なのだろうね」
「むっきー…ムカつくわあれ」
「まぁ妥当な判断だな、一般的な感覚と言えるし、私も同じ立場であるなら似た発言をしただろう」
だったら言うなよ。
「な、なんなのこいつ」
「………私はこの街の管理人で最高責任者だ」
そう低い声で言い放った瞬間、場の空気が変わった、わかりやすく私達の呼吸するテンポが速くなり、私は固唾をのんだ。
「本題に入ろうか」
そう言うと椅子から立ち上がる。
「猿渡 彩香 外の世界から来た来訪者であり、この街への不法入国者。15歳 A型 12月28日の山羊座 もう少しで16歳だな」
「え、ああ…そうだけど、なんで誕生日に血液型まで知ってるの」
「知っているからとか言えないね、それに今は質疑応答の時間じゃない、この街の管理者として判決を与える時間だ」
「………」
猿渡さんは何か言いたげな口を閉じ下を向いた。
「能力は複合型の重力操作、本来のスペックならその糸を引きちぎりその場で私をペットボトルのようにぐしゃぐしゃにすることだって可能であろうが…
何故かそれを行わない、私にはそれが疑問でならない、それに100kg以上の物を操作すると疲れると言う制限も疑問だな」
「そんなこと…できるわけがない」
「そう…言い聞かされているのだな、能力規制法によるゆとり教育で君の能力は本来のスペックの1割も出せていない」
能力規制法…雷華ちゃんに聞いた事がある、外の世界だと能力が規制されているらしい、具体的な規制は興味ないし雷華ちゃんも知らなかったぽいから聞かなかったけど
外の世界だと自由に能力を使えないみたい、猿渡さんの能力はその法律の影響を受けてる…って事なのかな。
「あんな法が無ければ君は世界をその手に出来たかもね、いや世界を取るというのは大袈裟に言いすぎた、まぁとても勿体ないとだけ言っておこう」
「私の能力が判決に関係あるの」
「ない」
ないんだ。
え、ないの。
「単に先程の疑問…あぁ〜いや、正確に言おう。何故糸を引きちぎらず、私を潰さないのかという疑問が浮かんでね、とても気になったから聞いただけさ」
「…………」
「………」
こいつ隙あれば脱線するな…と言いたげな猿渡さん。と言うか普通に言いそうな表情を浮かべながら管理人さんを呆れ顔で見つめる。
てっきり関係あると思って真面目に聞いてたのが馬鹿みたいだ。
「身体167cm 高校1年生の平均身長が158〜160ぐらいのことを考えるとかなり身長が高いな」
「…………」
「………」
どうしよう、これ絶対に関係ない話だ、ツッコミ入れた方がいいかな、でも入れたらまたドレミがどうとか言い出すな……
「これは君の能力を考えれば妥当とも言える」
「………は?」
「成長期の間、無意識に自分の体への重力を軽減していたことで骨や関節にかかる負荷が少なくなり、身体が伸びた可能性がある」
「「……へ〜」」
「朝は重力の影響を受けておらず、夜にかけて重力で背骨の椎間板が圧縮されるため、夜のほうが背が低いと言う話がある」
そう言いながら腕時計を操作し、図書館のアームを操作すると人間の肉体について詳しく書かれた本を持って来させ。
話に出ていた椎間板の絵を見せてくれた。
…見せてくれるのはいいけど、本題入ってくれないかな。
「宇宙飛行士の身長は宇宙空間では最大3%伸びるこという結果も出ている、常に重力の影響を受けない場合、この椎間板以外の箇所も伸びる可能性がある
それを考えれば君の背が男子高校生レベルで高いのは、それが理由かもしれないね。それか普通に両親の遺伝子かもしれないが」
「…そ、そうなんですね、朝と夜で身長変わるんだ」
「知らなかった、というか気にしたことなかった」
「そして体重は56kg、まあ身長を考えれば妥当と言える。B:87W:63 H:90…」
「は!?おい…え?ちょ…」
突然のスリーサイズ公開で猿渡さんの顔が真っ赤になり、芋虫の様にジタバタ暴れ始める。
どうせ関係ない話だから適当に流してたけど、さらっと、とんでもないことを言い始めたよ管理人さん。
「は、え…なになになに、なに人のスリーサイズバラしてくれてんの、と言うか身長も体重もだけど何で知ってんの」
「……知っているからとか言え…」
「知ってる理由を聞いてんの!! と言うかさっきからなに判決関係あんの!!」
「多少脱線しているが、身長や体重やスリーサイズなどは君が猿渡彩香本人であるかの確認にすぎない」
「その確認必要!?」
「…………」
「絶対にいらないじゃん」
「絶対に必要ないと言うことは君が判断する事ではない」
「管理人よ言われてもらうが…必要ないぞ」
クローシスさんが必要ない事を強調するようにゆっくりと話た、この場にいる全員がそう思ってる。
「そうだな必要なかった、研究者だからかな色んなことが気になって仕方がないのだ」
「研究者だからじゃない、お前だからだ、研究者全員がそうみたいに言うんじゃない」
「…手厳しいな君は、わかった本題に戻ろうか」
緩んだ空気を正す様に管理人さんは持ってる本をアームに片付けさせ、わざとらしく咳をする。
「猿渡彩香。その共犯者であるライリー。私は今よりそんな君達の処遇を決める」




