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第17話 追跡者

 現在私達は街の警備をしているクローシスさんから逃げるため図書館を走り回っている真っ最中。


 逃げながら小麦粉とマネキンをばら撒いてるのに、足音が一切ブレずに真っ直ぐ私達の方に向かってきている。


「だ、ダメだ、追いかけてきてる」


「しぶといなあいつ、ライリー近くに窓とか…裏口とかない」


「ま、窓?」


 きょろきょろと辺りを見渡してみるが、近くに窓は見当たらない、クローシスさんに襲われた窓がある……えーっと…何エリアだあそこ。


 多分Gエリアだ、Gエリアから離れて今居るのはFエリアだけど、Fは他のエリアの中間にあるところだから…窓がなかったはず。


 なんで私こんな道来たの。


 いや…出口までの最短の道ではあるんだけど、そっかわざわざエントランスから出なくても、窓から出ればよかったんだ。


「えーっと窓があるエリアは隣のDかさっきのGだけど…ここまで来たらエントランスのEに行った方が早いよ」


「で、そこに行くまでに追いつかれない?」


「…………」


「…………」


「…………」


「なんか言えよ」


「えー…あ……うん」


「ダメじゃん!! 逃げるなら逃げるでもう少し作戦考えてからにしなさいよ、あいつ普通にその時間くれたよ」


「ごめんなさい」


 私達が息切れせず、机とかの障害物を無視して全速力で走れるなら問題はないんだけどそんなのできるわけがない。


 やばいどうしよう、普通に追いつかれる。


 壁なんて作ってもあの人普通に壊すだろうし、落とし穴とかも糸で復帰するから無駄。爆弾は……いや銃使わせないために小麦粉巻いてるところに爆弾はダメでしょ。


 まずいな、どうしようどうしよう。猿渡さんの言う通りもう少し考えてから動けばよかった。


「どうすんのよライリー!あいつ今度は絶対に逃さないよ」


「わ、わかってるよ…でも、うーん…どうすれば」


 そう考えていると視界の端に小さく緑色に光る何かが見えた。


「あのピクトグラムは……非常口?」


 その緑色の光は普段そこまで気にしない非常口の案内看板だ。


 そっか非常口に障害物は無いだろうし、障害物を気にしないで全速力で走れる。それに前に地図を見た感じ外まで真っ直ぐな道だった。


 だったら…


「作戦変更。非常口で逃げよう」


「いいけど、はぁはぁ…そもそも…私元の作戦聞いてないけど」


「そうだっけ」


「そうだよ、はぁはぁ…と、とにかくピクトさんの方向に行けばいいんでしょ」


「非常口の人の事そう言うふうに言う人居ないと思うけど…って!!」


 猿渡さんが突然私を抱き抱えると大きくジャンプし、軽く10台もの机の上を飛び越えると、非常口の目の前で着地した。


「え?すこ……え?……すごっ」


「はぁ…はぁ……まぁ…ざっとこんなもんよ」


「なんでそんなに疲れてるんですか」


「100kg以上の物に能力使うと滅茶苦茶疲れんのよ」


「わ、私100kgも無いですよ」


「2人合わせたらそれぐらいでしょ、私にも能力使ってんの」


「あ、そっか……あれじゃあ猿渡さん54kg」


「ゴホゴホ、その話広げないとだめ、小麦粉と全力ダッシュで喉バグってるんだけど」


「ごめん」


 息切れを起こしながら猿渡さんは非常口の扉を開け、私達は中に入ると…扉の向こうは図書館が広がっていた。


「………あれ」


 地図で見た感じ、避難通路は一直線のはずだけど…なんで図書館が?


「……ん?これが避難通路」


「え、いや…そんなはずはないと思うけど」


 私はあたりを見渡すが、どこをどう見ても避難通路には見えない、それどころか壁にはJエリアと書かれている。


 Jは2階のエリアで私達がいたのは1階、なんで避難通路が2階に繋がっているの、そもそもどうやって2階に来たの?


「な、なにこれ」


「……気づかない間にエレベーターに乗った?」


「そんなわけないでしょ」


「ですよね。猿渡さん…なんかおかしいよこれ」


「そんなのこの街に来てからずっと思ってる事よ。まあでもここは窓がすぐそこにあるし、どうであれ図書館から出れそうね」


 そう言いながら猿渡さんは窓を開け、私を抱えたまま窓から出ると、窓の先は小麦粉が舞うGエリアだった。


「………え?」


「は?なんで…いや…なんで」


 猿渡さんは唖然としながらゆっくり私を下ろした。


「私達…今窓から出たよね」


「は、はい」


「それなのになんで図書館にいんのよ、と言うかここは…」


 戸惑う間もなく、真っ白な空間から糸が飛び出し私達をぐるぐる巻きに拘束する。


「くそ…この糸……」


「逃走から2分」


「カタカタカタ」と、金属が床を叩く音が近づいてくる。


「素人にしてはよく持った方ではないかな」


 クローシスさんがクルクルと鉄パイプを振りながら私達の前に現れた。


 小麦粉で銃使えないからって鉄パイプ出してきたよこの人。と言うかなんでここにクローシスさんが居るの


 私達を追ってFエリアに来てたはず、隣のエリアとは言え戻るのに1分近くかかるはずなのに。


「ぐっ…この……」


「なにが…どうなってるの」


「その疑問は管理人に答えてもらおうか」


「え?」


 誰かがパチンと指を鳴らした瞬間、私が空中に撒いた小麦粉が一瞬にして消え、図書館中の電気がつき、本棚がひとりでに動き始めた。


 さっきから喧しいほど鳴っていた童謡が、ぴたりと止んだ。


 まるで神話のモーセの海みたいに1つの道を作り出し、その道をゆっくりと歩く人影があった。


「まぶし…」


「あの姿…まさか」


 人影はゆっくり ゆっくりと開いた道を進みながら、口を開く。


「空間拡張技術というのは…私個人としては名称が不適格だと思っている、ただ名前を直そうにもマップ切り替えやらルーム移動やらゲームみたいな名称しか出なくてな」


 間違いない。


 この潰れた喉で喋ってるようなくたびれた声。あの無駄に高そうな赤いスーツに成金みたいな金の腕時計…


 そしてなんでつけてるかわからない狐のお面を被ってるこの男性は…間違いない、と言うか間違えるわけがない、あの人は…


「か、管理人さん」

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