第9話 空白の評議会室
〜〜〜空白の評議会室〜〜〜
円形の机が並ぶ薄暗い部屋に、4人の人影があった。
赤いスーツに謎の仮面をつけた男
全身銀色の新人類
白塗りの厚化粧に着物を纏った元死刑囚
包帯巻きの軍服を着た女性軍人
この場にいる全員が街の最高責任者であり、赤いスーツを着た男はこの街を創造した管理人もしくは支配人と呼ばれる男である。
トントントン と少しイラついた様子で軍服を着る
女が無言で机を叩き、空間転写型ディスプレイを起動させる。
「そのクローシス、もう少し優しく叩いてくれませんか、そんな叩き方では壊れてしまうよ」
銀色の新人類は手持ち無沙汰でルービックキューブを触りながら呟く。
「だったら構造を変えてくれ。あと、そのルービックキューブをおろせ」
軍服を着るクローシスはそう答えながら、机の中央に浮かび上がるリスプレイを操作する。
「今朝侵入者の報告があった、性別は女性、年齢は15歳前後、髪色はピンクで髪型はショートボブ」
「不愉快だねぇ、侵入者なんて」
真っ白な化粧をした元死刑囚が閉じた扇子でトントントンと何度も机を叩く。
「やめろ島村不愉快だ」
「なんだいクローシス君…過去の遺産の分際でこの吾輩に刃向かうのか」
「老人は体も頭も硬いらしいな、今すぐ作り直してもらったらどうだ」
「貴様こそいつまで包帯巻いてるつもりだ」
「ダメですよ島村さん、あれはクローシスさんなりのファッションなんですから」
「ファッションで包帯なんて巻くもんじゃないぞ、そもそも似合ってないし巻き過ぎだ、ミイラ女じゃないか」
「厚化粧は黙っていろ、管理人の前だぞ」
「ダメですよクローシスさん、あれは島村さんなりのファッションなんですから」
「吾輩は普通にファッションだし、似合っているだろ」
「私にはバカトノにしか見えないがな」
「これは驚いた、旧世代の化石が今の芸人を知ってるとわね」
皮肉と罵りが飛び交う中、ただひとり、管理人は黙ってワインを揺らし、何も言わずただ3人を見る。
その無言の視線に気付いたのか3人の口が止まる。
「………」
「それで〜こいつは何者だい、何が目的だ?誰か裏にいるのか」
「おそらく単体だろうな、島村が言うように何者かの手引きがあるかもしれないが…これと言って街に害はないし、真実には気づいてはいないだろう」
「それならこの方は死ぬか帰るかのどっちかですね」
「それで〜君は無視しておくのか、警備担当のクローシスちゃん」
「変に動く必要はないかと、しかし…問題が1つ…この存在がE-2に接触している」
そう言いながら映像を切り替え、緑髪の少女を映し出す。すると沈黙を貫いていた支配人がわずかに動いた。
「おやおやこれは支配人。貴様のお気に入りじゃなかったか」
「そうか…彼女に猿渡 彩香か…」
「おっと…これは侵入者を知ってそうだな」
「彩香か…あの姿に目、母親に似てきたものだ、ここに来たのも運命か何かか」
「お父上、この侵入者様とどの様なご関係で…」
「イブ君と同じようなものさ、私によって作り出された存在」
「この女の存在を知っているのか管理人」
「無論」
「それなら目的についても心当たりあるか」
「さあ…私でも探しにきたのかな」
「なら放置で十分か」
しばらくの沈黙が続き支配人はジャッカルの被り物の口を開け、ワインを飲み始める。
「この件に関しては君に一任するよ、まぁ〜私の気は変わりやすいから、耳に連絡用のインカムをつけておけ」
「承知した」
「それと島村は念のために1体用意しておけ、何か起こるかもしれんしな」
「了解…1体って事はピンク髪はいらないの?」
「この街には必要ない、私の望むものだけあればいい」
「相変わらずの独裁者気取りだな、まぁ…貴様の望む様に始末しよう、だが1つ忘れるなよ」
「何をだ?君の姉のことか」
「覚えているならいいさ、約束は果たせよ」
「…難しいことを言うな、君の姉だけ特別扱いで復活させろと」
「そう言う約束のはずだ」
「別にした覚えはないが…今全力で取り掛かっているよ」
「その言葉を最初に聞いてからかなりの時間が流れている気がするが、気のせいか…」
しばらくの沈黙が続くが管理人は気にする様子はなくただワイングラスを揺らす。
「別に私はサボっているわけじゃない、君の願いが難しいと言うだけだ、君の姉は完全に消滅している、それを例外的に再臨させるのは……少々無理があるぞ」
「そうだそうだ〜、何百年前に死んだと思ってるんだ、そろそろ姉離れをしたらどうだ」
「黙れ」
「まぁ…いいかじゃないか島村、姉思いの可愛い妹なんて可愛らしい、市民から人気が出るんじゃないか」
「ハハハそうだな」
「お父上クローシスさんにその需要がないかと」
「黙れ、おしゃべりが好きならあの世でやるか」
「おお〜怖い怖い」
「別に私は構わないよ、だが…それをすれば君の居場所は無くなるがね。元の組織を裏切ってこの街に来たのを忘れたのか」
「今頃戻れないし…居場所もないだろうねぇ」
「戻る気もない、だが約束は果たしてもらうぞ」
そう言いながら女は立ち上がり評議会室の扉を開ける。
「そうだなクローシス、活躍を期待しているよ」




