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女子高生、人助けをする

 「はー、帰ろ帰ろ。今日のケーキは苺ショートにしようかな」


 オークキングを瞬殺し、ドロップアイテムを回収した私は機嫌よくダンジョンの出口へと向かっていた。


 その時だ。


 ダンジョンの壁面に埋め込まれた通信端末から、悲鳴のようなノイズが響いた。


『キャーッ! み、みなさん! シロナちゃん、ピンチですぅ!』


 聞き覚えのある声。いや、この間抜けなハイトーンは――。


 私は思わず足を止め、壁のモニターを睨んだ。


 そこに映っていたのは、ピンク髪をツインテールにした少女。全身にフリルを纏い、胸元にはリボン。そして手には特大の杖。


 あれは人気配信者の赤井シロナだ。私でもその存在を知っている。


 背後には、灼熱のブレスを吐き出すドラゴン。赤黒い鱗に、溶岩のような瞳。サイズは大型トラックほどもある。


 ドラゴンが口を開け、炎が渦を巻く。


『きゃぁぁぁ! 助けてくださーい! これ、配信事故ですぅ!』


 モニターの向こうでシロナちゃんが可愛らしく悲鳴を上げる。


 コメント欄は大混乱。


『やばいやばい』

『警察呼んだ?』

『誰か助けて!』


『スタンプ連打してる場合じゃない』


 私はため息をついた。


 ――めんどくさ。


 でも、見捨てるのも後味が悪い。


 前世の記憶が脳裏をよぎる。ブラック企業で倒れた時、誰も助けてくれなかったあの感覚。


 ……はぁ、仕方ない。


 私はモニターを睨み、配信コメントに向かって口を開いた。


「そこのドラゴン、うるさい」


 瞬間、ドラゴンがこちらを振り返る。


 ギロリと金色の瞳が私を捉えた。灼熱のプレッシャーが肌を焼く。


 (きっつ。これ、普通の人が見たら失神するやつだね)


 でも、私には関係ない。


 私は剣を構え、一歩踏み出した。


「今日のノルマは達成したんだけど、仕方ない。助けてあげる」


 ドラゴンが咆哮を上げ、ブレスを吐き出す。


 炎が渦を巻き、熱波が襲いかかる。


 私は剣を一閃。


 炎が真っ二つに裂け、後方の岩盤を溶かす。


 シロナちゃんの悲鳴が、歓声に変わった。


『す、すごい! 誰ですか、あなた!』


「通りすがりの高校生。名乗るほどの者じゃないよ」


 ドラゴンが翼を広げ、突進してくる。


 地面が揺れ、砂塵が舞う。


 私は剣を握り直した。


 (はぁ、これ終わったら絶対にケーキ2個食べよ。)


 ……そして、私は剣を振り下ろした。


 金色の瞳が、驚愕に見開かれる。


 轟音と共に、ドラゴンの首が地面に落ちた。


 静寂。


 配信コメントが爆発的に流れる。


『やばい、誰だよ』

『とんでもない強さ』

『通りすがりって何』


 私は剣を肩に担ぎ、ため息をついた。


「はぁ、疲れた。帰ろ」


 振り返ると、シロナちゃんが目を輝かせていた。


『待ってください! あなたのお名前を――』


 私は背を向け、手を振った。


「女子高生。それ以上はナイショ」


 こうして私は、面倒事の始まりを予感しながら、ダンジョンの出口へと歩き出した。


 (早期リタイア計画に、不穏な影が――)


 ドラゴンのドロップアイテムを回収しながら、私はそう思った。

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