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第7章 交流?

「子どもにしては、なかなかやるな。」


仮面の男はサイのほうへ歩きながら言った。


「そのリュックを背負ったまま家の屋根を飛び越えて走っていたのか。」


「さっき俺たちが向かい合った場所から、もう三キロは走っている。」


サイは黙ったままだった。


体が固まり、一歩も動くことができない。


仮面の男はそのまま近づいてくる。


「だが、それくらいではまだ足りない。」


「お前はまだ、ゴールド・オーガニゼーションの一員になるには相応しくない。」


「だから――」


男は片手を持ち上げた。


サイは反射的に目を閉じる。


「皆に、お前が最年少で合格できるだけの実力があることを証明してみせろ。」


男はサイへ向かって手を差し出した。


サイはゆっくり目を開く。


殺されなかった……?


「怖がる必要はない。」


「さっきロープの試験を担当していた試験官だ。」


男は仮面を外した。


やはり、先ほどの試験官だった。


サイは何も言えなかった。


差し出された手を握り、そのまま立ち上がる。


「だが、お前は慌てすぎた。」


「だからここへ落ちてきたんだ。」


「本当なら、まだ先まで走れたはずだ。」


「さっきは焦ってしまいました。」


サイは評価用紙を差し出した。


「よし。」


「実力どおりに評価しておこう。」


試験官は用紙に評価を書き込んだ。


「B……。」


サイは少しだけ残念そうな表情を浮かべる。


「健闘を祈る。」


「次の試験へ行け。」


そう言うと、試験官は屋根へ飛び乗り、そのまま去っていった。


サイは大きく息を吐く。


「Cだけは取らないように頑張ろう。」


そう言って、その場を駆け出し、次の試験会場へ向かった。


***


「第三試験です。」


試験官が参加者たちに向かって言った。


「この試験では、皆さんが優れたボランティアとしてふさわしいかどうかを評価します。」


「人を助け、人を支えることができるかを見ます。」


「試験中は、この町の中で自由に行動してください。」


参加者たちは町の中心にある広場へ集められていた。


「それだけですか?」


一人の少女が尋ねた。


「ああ、それだけだ。」


試験官はうなずく。


「残りは試験を受けながら、自分で理解してください。」


その時、以前サイを見下していた少年がようやく到着した。


息を切らしながら列へ加わる。


「どうだった?」


「大変だった?」


サイは少年を見て言った。


少年はサイを睨みつける。


試験官は再び口を開いた。


「では、第三試験の流れを説明します。」


「まず、この町の住民と交流し、皆さんのことを好きになってもらってください。」


「どうしてですか?」


サイが尋ねる。


「この試験は数日間続きます。」


「その間、皆さんは泊まる場所が必要になります。」


「住民に気に入ってもらえれば、自宅へ泊めてもらえるかもしれません。」


試験官は参加者たちを見渡した。


「この試験で最も重要なのは、人との交流です。」


「そのことを忘れないように。」


「はい!」


参加者たちは声をそろえて返事をした。


「それでは始めてください。」


「自由に行動して構いません。」


参加者たちはそれぞれ別々の方向へ散っていった。


「どこへ行こうかな。」


サイは辺りを見回した。


もう広場にはほとんど誰も残っていない。


何をすればいいのか分からなかった。


「とりあえず、商店街へ行ってみよう。」


そう言うと、サイもその場を後にした。


***


商店街へ着いても、サイは何をすればいいのか分からなかった。


辺りを見回しながら、手伝える人を探す。


「どうすれば、誰かが家に泊めてくれるんだろう。」


サイは歩きながら店を一軒ずつ見ていく。


一軒の軽食店だけが、とても賑わっていた。


年配の男性が次々と客の相手をしている。


「これをください。」


「私は三つお願いします。」


「私もお願いします。」


店の前には多くの人が集まっていた。


「はい、少々お待ちください。」


店主は忙しそうに対応している。


サイはその様子を見つめていた。


しばらくして、ようやく客がいなくなった。


店主は腰を下ろし、ほっと息をつく。


「いやぁ、今日は本当に疲れた。」


帽子であおぎながらつぶやく。


「すみません。」


サイが声をかけた。


店主は振り向く。


「何が欲しいんだい?」


「いえ。」


「買い物ではありません。」


「お手伝いをしたいんです。」


「手伝い?」


「どうしてだい?」


店主は不思議そうに尋ねた。


「僕はゴールド・オーガニゼーションの入団試験を受けています。」


「だから、お手伝いをして評価をもらいたいんです。」


「そういうことか。」


「もちろん構わないよ。」


「ありがとうございます!」


サイは嬉しそうに頭を下げた。


その笑顔を見た瞬間――


店主は突然黙り込んだ。


アグラタと同じように、その顔を見て誰かを思い出したようだった。


「君……。」


店主は小さくつぶやく。


「どうしましたか?」


サイが尋ねる。


「悪いが……。」


「やっぱり手伝いは必要ない。」


店主は立ち上がり、店の片付けを始めた。


「えっ?」


「どうしてですか?」


「お前は嫌いだ。」


「帰ってくれ。」


「でも、お金はいりません。」


「お手伝いしたいだけです。」


「そんなことはどうでもいい!」


「帰れ!」


「お願いします。」


「評価が必要なんです。」


店主はサイを見た。


「試験だろうが何だろうが関係ない!」


「さっさと出て行け!」


そう言って、手に持っていた布巾をサイへ投げつけた。


サイは驚いて布巾を受け止める。


「帰れ!」


「お前がいると店が暇になる!」


サイは何も言わず、布巾を返した。


そして力なくその場を離れる。


「お前なんか合格しなければいい!」


店主は怒鳴った。


小さな声で続ける。


「あの父親みたいには、なるなよ……。」


***


「僕、何か悪いことしたのかな……。」


サイは困ったように言った。


「どうして急に怒ったんだろう。」


「休憩の時間を邪魔したからかな。」


その時――


ドサッ。


誰かの荷物が地面に落ちた。


サイは振り向く。


大きな箱と買い物袋をたくさん抱えた女性が立っていた。


「手伝わなきゃ。」


サイは女性のところへ駆け寄る。


「こんなにたくさん、一人で運ぶのは大変だわ。」


女性は困ったように言った。


「大丈夫ですか?」


サイが声をかける。


「荷物が多すぎてね。」


女性はサイを見ないまま答えた。


「それなら、僕がお手伝いします。」


「ありがとう。」


女性はそう言ってサイのほうを向いた。


しかし、その表情はすぐに変わった。


「結構です!」


女性は立ち上がり、その拍子にサイへぶつかり、サイは尻もちをついた。


「あなたみたいな子には手伝ってほしくないわ。」


女性は冷たく言った。


「どうしてですか?」


サイは戸惑いながら尋ねる。


「あなたには関係ないことよ。」


女性はそのまま立ち去っていった。


サイは立ち上がり、リュックを背負い直す。

辺りを見回した。


「どうしてだろう。」


「僕は助けようとしただけなのに。」


「ほかの人も同じなのかな。」


***


「君はゴールド・オーガニゼーションの受験者か?」


ある店の主人が尋ねた。


「はい。」


「評価をもらうために来ました。」


サイは答えた。


「そうか。」


「ちょうど頼みたい仕事がある。」


「本当ですか?」


「ありがとうございます!」


サイは嬉しそうに言った。


しかし、その店主も、先ほどの店主と同じように、サイの顔を見ると黙り込んだ。


「それで、何をすればいいですか?」


サイが尋ねる。


店主は我に返る。


「何もない!」


「お前に頼む仕事なんてない!」


「帰れ!」


「どうして急に……。」


「僕、何かしましたか?」


サイは残念そうに尋ねた。


「してない!」


「だが、お前に店を任せる気はない!」


「帰れ!」


(さっきと同じだ。)


サイは小さくため息をついた。


「分かりました。」


「ありがとうございました。」


サイは振り返り、その場を去った。


ちょうどその時、一人の受験者が店へやって来た。


「すみません。」


その受験者が声をかける。


「何だい?」


店主が尋ねた。


「僕はゴールド・オーガニゼーションの受験者です。」


「お手伝いをしに来ました。」


「評価のためだろう?」


「もちろんいいよ。」


店主はすぐに受け入れた。


「ありがとうございます。」


受験者は頭を下げる。


「終わったら、うちに泊まっていくといい。」


サイにもその会話は聞こえていた。


それでも振り返ることなく、そのまま歩き続けた。


***


サイは商店街を歩き続けていた。


まだ、自分の助けを受け入れてくれる人は一人も見つかっていない。


その時、一つのボールがサイのほうへ転がってきた。


サイは足を止める。


(誰のボールだろう。)


「お兄ちゃん!」


小さな子どもがサイを呼んだ。


「そのボール、投げて!」


サイは微笑み、ボールを拾い上げる。


返そうとした、その時――


「何をしているの!」


子どもの母親が突然やって来た。


「どうしてあの子のほうへボールを投げたの!」


サイは動きを止め、親子のほうを見る。


「どうして?」


子どもが尋ねる。


「あのお兄ちゃんがボールを返してくれるのに。」


「駄目よ。」


「あの子とは関わってはいけないわ。」


サイは黙ったまま、その母親を見ていた。


「ボールはもう拾わなくていい。」


「新しいものを買えばいいから。」


「さあ、行きましょう。」


母親は子どもの手を引き、その場を離れていった。


サイはその場に立ったままだった。


***


「帰れ!」


「もう二度と来るな!」


一人の男がサイをレストランの外へ押し出した。


「でも、僕は手伝いたいだけです。」


サイは言った。


「必要ない!」


「従業員を雇う金くらいある!」


「帰れ!」


男はもう一度言う。


「分かりました。」


サイは素直にうなずき、その場を離れた。


***


「そんなに手伝いたいなら、これを片づけろ。」


男は段ボール箱をいくつもサイの前へ放り投げた。


ドサッ。


「店を片づけろ。」


「ここにいさせてやるだけでもありがたいと思え。」


「はい。」


サイはすぐに店の片づけを始めた。


一方で男は、友人と一緒に座り、たばこを吸っていた。


「本当にあいつに片づけさせるのか?」


友人が尋ねる。


「放っておけ。」


男はたばこを吸いながら答えた。


「今日はただ働きの手伝いができて助かった。」


友人は男を見る。


「あいつ、ゴールド・オーガニゼーションの受験者らしいぞ。」


「お前の家に泊めてもらえることを期待してるんじゃないか。」


「ふん。」


「泊めるつもりなんてない。」


「店は手伝わせる。」


「だが、家には入れない。」


サイにも、その会話は聞こえていた。


それでも何も言わず、与えられた仕事を続けた。


***


夕方になり、空は茜色に染まり始めていた。


夜が近づいていたが、サイはまだ泊まる場所を見つけられずにいた。


サイは一軒の家の壁にもたれかかって座る。


ぼんやりとした表情でパンを食べていた。


ほかの受験者たちは町の人たちに気に入られ、この試験の間、泊まる場所を確保していた。


何人かの受験者は、自分たちが手伝った住民と一緒にサイの前を通り過ぎる。


楽しそうに話しながら歩いていたが、誰もサイに声をかけることはなかった。


サイは静かにため息をつく。


誰も自分を受け入れてくれなかった。


これからどうすればいいのか分からない。


サイはリュックを開けた。


中にはパンが一つだけ残っていた。


(もっとたくさん持ってくればよかった。)


(この町の人たちは、僕に物を売ってくれないなんて思わなかった。)


(お母さん……。)


(パンを見ると、お母さんのことを思い出す。)


(お父さんもお母さんも、きっと僕のそばにいてくれるよね。)


「これは夜まで残しておこう。」


そう言ってリュックを背負い直し、再び歩き始めた。


どこへ向かうのか、自分でも分からなかった。


もう誰かを手伝おうとはしていなかった。


「お願いだよ……。」


道端に座っていた一人の老人が、サイに声をかけた。


老人は段ボールを敷いて座り、物乞いをしていた。


サイは老人の前で立ち止まり、自分の手を見つめる。


(何をあげればいいんだろう。)


「少し待ってください。」


サイはリュックの中を探した。


老人は静かに待っている。


「これしかありませんけど……。」


「どうぞ。」


サイは、夜に食べようと思っていたパンを老人へ差し出した。


「ありがとう。」


「優しい子だね。」


老人は感謝しながらパンを受け取った。


「どういたしまして。」


サイは嬉しそうに答える。


老人は微笑み、その場でパンを食べ始めた。


サイはしばらく老人を見つめていた。


その時、何かを思いついた。


***


夜になった。


泊まる場所を見つけた受験者たちは、それぞれ世話になる家でゆっくり休んでいた。


一方、サイは一軒の家の横で長い段ボールを広げる。


「よし。」


「少なくとも、寝る場所はある。」


そう言うと、その場に腰を下ろし、リュックも隣へ置いた。


「お腹が空いたな……。」


サイはお腹を押さえながらつぶやく。


食べる物はもう何も残っていない。


サイにできることは、月と星だけが照らす夜空の下で休むことだけだった。


「まあ、明日になればきっと大丈夫。」


そう言って横になり、リュックを枕代わりにして目を閉じた。

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