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第69章:研究所

口の悪い失礼な奴


                   【おい!】

【お前が借りた俺の物はどこだ?】

【まだ返してないだろ!】

【早く答えろ!】

 【失礼な奴め、黙ってるんじゃねえ!】



【しつこくメッセージを送ってくるな、この馬鹿!】

【お前の物なら、もうお前の部屋に投げ返しておいた!】



カイは、連絡先に「口の悪い失礼な奴」と表示された相手からのメッセージが映る携帯電話の画面を見ていた。彼は本部の裏庭を歩いているところだった。


「ラジの奴、失礼にもほどがある!」


カイは左手で文字を打ち、右手には小さな本を持っていた。



           【俺と喧嘩したいのか?!】

     【そっちに乗り込んでやってもいいぞ!】



【ソフィア姉さんは確かにお前を呼ぶつもりだ】

【ついでに、手伝える若いメンバーを一人連れてこい】

【余計なことは聞くな!】



     【若いメンバーでなきゃ駄目なのか? 】

【俺たちは子供のメンバーが足りないだろ】



【連れていくのが子供だけなら、敵も警戒を強めないかもしれない】



                   【敵?】

  【ちょっと待て 】

 【どうしてソフィア姉さんは俺に直接連絡せず わざわざお前から情報を聞かせるんだ?】



【さあな】

【お前みたいな奴には連絡したくないんじゃないか】



「この野郎!」


カイは苛立ちながら携帯電話を強く握りしめた。


「もういい。ほかのことを片づけたほうがいいな」


カイは携帯電話をポケットにしまいながら、手に持っていた本を見た。


「これは母さんが残した記録だ。俺の体の中にいる奇妙な生き物についての情報が書かれている」


「この悪魔は悪魔の軍勢を呼び出せるらしい。なかなかすごいな」


「それに、以前訪れたことのある場所へ俺を移動させることもできる。ただし、使える機会は本当に、本当に少ないらしい」


「テレポートか? それなら、直接八番街へ行って、あいつらのところを訪ねられるな」


「だが、むやみに使うわけにはいかない。この悪魔は俺のことが嫌いだから、使えるのは二回までだ」


小さな風がカイのほうへ吹いてきた。カイは足を止め、前方を見た。


突然、強風がカイに向かって吹きつけた。カイは手で顔をかばいながら、前方を見ようとした。


「なかなかすごいな。誰の力だ?」


カイは手を上に向けた。地面から氷の壁がせり上がり、風からカイを守った。


風は吹き続けた。カイはその本を右のポケットにしまった。


「氷なんてほとんど使ったことがないが、これも役に立つな」


そう言って、彼は壁に触れた。やがて風は止んだ。


「ようやく止まったか」


カイの目の前にあった氷も消えていった。


反対側からムーイがカイに向かって走ってきた。


「カイさん」


そう言って、彼の前で立ち止まった。


「すみません。ここにいらっしゃるとは知りませんでした」


ムーイはそう言った。


「気にしなくていい。そんなにかしこまらなくてもいいぞ」


カイはそう答えた。


(ソフィア姉さんの生徒はなかなかすごいな。まだ習い始めたばかりなのに、元素を扱う技術はサイたちとほとんど変わらない)


「よく練習しているのか?」


カイが尋ねた。


「はい。ほかにすることがないので、こればかりやっています」


ムーイが答えた。


(これほどの腕前なら、ソフィア姉さんに頼まれたとおり、八番街へ連れていけそうだ)


「あの、カイさんはここで何をしているんですか?」


ムーイが尋ねた。


(この子の名前は何だったかな? 名前を尋ねたら、名前を呼んでもらえていないことを気にして、傷つくだろうか?)


「ただ歩き回っていただけだ。ところで、一つ聞いてもいいか?」


カイはそう言った。


「何ですか?」


ムーイが尋ねた。


「ソフィアは君のことを何と呼んでいるんだ?」


カイが尋ねた。


「あの、私はまだあまり人と話していなかったので、ソフィア姉さんを含め、ほかの人たちにも自己紹介をしていなかったんです」


ムーイはそう言った。


「でも、私のことを『お気に入りの生徒』と呼んでくれます」


「ちゃんと自己紹介しなきゃ駄目だろ。じゃあ、まだ誰も君の名前を知らないのか?」


カイが尋ねた。


「実は、知っている人は一人だけいます。サイです」


ムーイは答えた。


「それから昨日、ソフィア姉さんから、姉さんがいない間も練習を続けるようにとメッセージが届きました。そのときに、ようやく自己紹介したんです」


「そうか。じゃあ、君の名前は何だ?」


カイが尋ねた。


「ム、ムーイと呼んでください」


ムーイはぎこちなく答えた。


「わかった、ムーイ。俺についてくる気はあるか?」


カイが尋ねた。


「どこへですか?」


ムーイが尋ねた。


***


「ここは、ヌメシア市対抗戦が開催されるずっと前から計画していたプロジェクトを実行するために、新しく設けられた私たちの研究所です」


エリオさんはそう言った。八人とエリオさんは研究所の中にいた。


「そのプロジェクトはすでに終了したので、この研究所はもう使われていません。今では普通の部屋になっていて、許可された人なら誰でも入ることができます」


エリオさんはそう説明した。


「使い捨ての研究所ってことですか?」


サイが尋ねた。


「ところで、エリオさん。僕たちをここに呼んだのは、どんなプロジェクトのためですか?」


ルーカスが尋ねた。


「元素の薬だ」


エリオさんが答えた。


「元素の薬?」


全員が声をそろえて言った。


「そうだ」


エリオさんは答えた。


「この薬を飲めば、元素の使い方を学んだり練習したりしなくても、元素を使えるようになる」


そう言いながら、彼はテーブルの上に置かれた鞄から一粒の薬を取り出した。


「プログラムで設定した時間によって効果が変わる。制限時間に達すると、薬の効果は切れるんだ」


「どうしてこんなに大量に作ったんですか?」


ルイスが尋ねた。


「何に使うんですか?」


ニコも尋ねた。


「この薬は、第三試合に参加する全員に配る予定だ」


エリオさんが答えた。


「試しに、第三試合が何なのか聞いてみたらどうだ?」


ディオンが小声で言った。


「今のところ、まだ秘密にされているだろ」


イワンが言った。


「第三試合と、元素を使うことに何の関係があるんですか?」


サイが尋ねた。


「第三試合では、ゴールド・オーガニゼーション・アカデミーの君たちには、元素の使用が許可されるんだ」


エリオさんが答えた。


「だから、元素を使えないほかの参加者にとって、この薬が役に立つということですか?」


サイが尋ねた。


「そのとおりだ!」


エリオさんが答えた。


「薬の効果は、どれくらいの時間続くように設定されているんですか?」


サイが尋ねた。


「試合が終わるまでだ」


エリオさんが答えた。


「それなら、この薬は試合でとても役に立ちますね?」


サイが言った。


「もちろんだ」


エリオさんが答えた。


「それなら、第三試合では何をするんですか? どうして参加者は元素を使わなければならないんですか?」


サイが尋ねた。


「君たちは、私たちが作った、常に夜の状態になるようにしてある森に入って、そこで戦うことになる。相手は――」


「エリオさん、そこまでです!」


全員が声をそろえて叫んだ。


「えっ? どうしてだ?」


エリオさんは尋ねた。


「まさか、僕たちに試合の内容をばらすつもりですか?」


ルーカスが言った。


「ほかの参加者に対して不公平です!」


ファッタが言った。


「た、確かにそうだ! 気づかなかった!」


エリオさんは驚いた。


「エリオさん、彼には気をつけてください。こいつは時々、ずる賢くて危険な奴になるんです」


ルイスはサイを指さして言った。


「へへへ、冗談だよ」


サイはぎこちなく笑った。


「もし今ので全部ばらしていたら、お前をただでは済ませなかったぞ」


エリオさんは恐ろしい雰囲気を漂わせながら言った。


「もう二度としません」


サイは答えた。


「君たちのメンターたちとはすでに話し合ったんだ。彼らは、この研究所の警備を引き受けることはできないと言っていた。君たちのメンターは敵を捜索し、警戒するために各地を巡回している。一方、君たちの付き添いをしている先輩は、セミナーに出席しているそうだ。去年から参加を勧められていたらしい」


エリオさんは説明した。


「仲間の一人が裏切ったせいで、情報が漏れてしまったんだ。そのため、悪人たちがいつこの場所を襲撃しに来てもおかしくない」


「だから、君たちのメンターはこの警備任務を君たちに任せることにした。全員が警備する必要はないが、例えば、一晩につき三人ずつという形だ」


「メンターたちは、試合の運営側は警備に参加しないほうがいいと言っていた。危険なうえに、私たちには大会の運営という仕事もあるからな」


「私も、ここで襲撃が起きたら、私たちはかえって足手まといになると思っている。君たちは薬を守るだけでなく、私たちまで助けなければならなくなるからな」


「とはいえ、私たちも君たちを手伝わず、ここで足手まといになっているような気がしているんだ」


「問題ありません。これはゴールド・オーガニゼーションの一員である僕たちの任務です。僕たちはこれを任務、あるいはミッションとして受け止めます」


サイが言った。


「ありがとう。君たちは本当に優しいな」


エリオさんが言った。


「発表のときは、あんなに淡々としていたのに」


ライアンが言った。


***


「カイさん、私たちはここで何をするんですか?」


クリサンのアパートの部屋の前に着くと、ムーイが尋ねた。


「人に会いに行くんだ。たぶん、俺たちを助けてくれるはずだ」


カイはそう答え、ドアをノックしようとした。


(最後にラジと一緒にここへ来たときは、あの女にもう少しでひどい目に遭わされるところだった)


「コンコンコン」


「すみません」


カイが呼びかけた。


「すみません、誰かいませんか?」


「ちょっと待って!」


中から声がした。


(あのときみたいに怒り狂わないでくれるといいんだが)


カイは不安に思った。


ドアが開き、そこにはクリサンが立っていた。


「またあんた?!」


彼女は言った。


「す、すみません、お邪魔します!」


カイは慌てて言った。


「今度は何の用よ、ああ?! またいやらしいことをしに来たの?!」


クリサンが言った。


「ち、違います!」


カイは慌てた。


「カイさんはいやらしいことをしたんですか?」


ムーイが尋ねた。


「違う! 彼女が誤解しているだけだ」


カイは言った。


「この前のことは、ただの偶然だったって、もう説明しただろ! 勝手なことを言うな!」


カイは慌てて言い返した。


「それで、今度は何の用なのよ、ああ? 変なことをしないでよ」


クリサンが言った。


「君に会いに来たんだ」


カイが答えた。


「私に会いに?」


クリサンは笑みを浮かべた。


「あんた、私のことが好きなの?」


彼女はからかうように言った。


「勘違いするな」


カイが言った。


「いいじゃない。あんたなら、付き合ってあげてもいいわよ」


クリサンは言った。


「この前は俺の友達が好きだったんだろ。今度は何なんだ?」


カイが尋ねた。


「あの人にはきっぱり振られたのよ。私の心は本当に傷ついたわ」


クリサンは胸を押さえ、わざとらしく嘆いた。


「でも、よく見たらあんたもなかなかのイケメンね。私の彼氏にならない?」


「君、何歳なんだ? どうしてそんなに恐ろしい態度なんだよ?」


カイが言った。


「私はまだ二十三歳よ。それがどうしたの?」


クリサンが答えた。


「年上の女性とは付き合いたくない」


カイが言った。


「ただの言い訳だってわかってるわよ」


クリサンは言った。


「俺には好きな人がいるんだ」


カイが言った。


「ええー、またなの?」


クリサンは不満そうに言った。


「そんなに怖い態度を取るのはやめてくれ。子供も連れてきているんだぞ」


カイはムーイを指さした。


「い、いつからそこにいたの?!」


クリサンは驚いた。


「ずっと前からですよ」


カイが答えた。


「さ、さっきのは冗談だからね。真似しちゃ駄目よ」


クリサンは言った。


「は、はい」


ムーイはぎこちなく答えた。


「まさか、こいつが君みたいになりたいと思っているとでも?」


カイが言った。


「それがどうしたのよ、ああ?!」


クリサンは怒った。


「い、いや、何でもない」


カイは怯えた。


「まあいいわ。話があるなら、どうぞ入って」


クリサンが言った。


「ほかの場所で話さないか?」


カイが尋ねた。


「必要ないわ。それに、あんたは私に変なことをしたりしないでしょう?」


クリサンが言った。


「俺がそんなにろくでもない奴だと思っているのか?」


カイが言った。


「入って」


クリサンが言った。


三人がメインルームのソファに座ると、クリサンが尋ねた。


「それで、何を話したいの?」


「俺たちは、あることについて協力を頼みたくて――」


「しーっ! またリアンのことじゃないでしょうね?」


クリサンが言葉を遮った。


「そのとおりだ」


カイが答えた。


「もう、どうしてあんたたちは、あの子と対決するために、そんなに私に協力してほしがるのよ?」


クリサンが言った。


「彼について詳しく知っているのは君だけだからだ。以前、彼と一緒に仕事をしていただろ?」


カイが尋ねた。


「確かに知っているわ。でも、もう彼とは関わりたくないの。あの子が押しつけてくる変な任務から解放されて、ようやく平穏に暮らせるようになったんだから」


クリサンが答えた。


「頼むよ。今回だけでいい。これが終わったら、もう無理に頼んだりしない」


カイが言った。


「嫌よ。どうしてそんなに私の力が必要なの? あんたと友達が、うっかりここをのぞき見したときとは何が違うのよ?」


クリサンが尋ねた。


「多くの人の命がかかっているんだ」


カイが答えた。


「どういうこと? あの子は普段、市長か村長しか殺さないでしょう?」


クリサンが尋ねた。


「確かにそうだ。でも、最近、六番街の市長が殺されたというニュースを知らないのか?」


カイが尋ねた。


「知っているけど、犯人までは読んでいなかったわ。まさか、またあの子なの?」


クリサンが言った。


「そうだ。あのとき、彼はもう一人と一緒にいた。どうやら、二人はあのとき六番街を壊滅させる任務を受けていたらしい」


カイが答えた。


「俺たちが得た情報によると、二人は八番街に来ている。そこでは、俺たちのアカデミーの生徒たちが試合に参加している」


「どうやら、狙われているのは俺たちだけじゃない。ほかの参加者たちも狙われているようだ。さらに、最新の報告では、大会の警備をしていた職員の一人が、夜間の警備中に命を奪われたらしい」


「そうなの。つまり、あの子はさらに多くの犠牲者を出したということね」


クリサンが言った。


「以前は、誰が犠牲になろうと気にしていなかった。でも、多くの人の命が関わっているとなると、まして子供たちまで……」


クリサンは考え込んだ。


***


(どうして俺がこいつらと一緒の当番にならなきゃいけないんだ?)


ルーカスはそう思いながら、サイとルイスと一緒に、研究所のガラス壁に面した椅子に座っていた。彼らは、四つのリュックサックが置かれたテーブルのそばに座っていた。


(まあいい。こいつらと揉め事さえ起こさなければ、チームの状態は問題ないはずだ)


ルーカスはそう思った。


「ミシェルは当番に入っていないのに、うらやましいな」


ルイスが言った。


「彼女は女の子だから、エリオさんは警備に参加させなかったんだろう? そのおかげで、三人ずつ、三晩に分けて警備するのに、ちょうどいい人数になったんだ」


サイが言った。


「それにしても、どうしてこんなに大量に作ったんだ? 四つの鞄をいっぱいにできるほどなんて、数えきれないぞ」


ルーカスが言った。


「数えられないからじゃないか?」


ルイスが言った。


「川から水をくむのと同じだ。バケツに何滴入るか、お前に調整できるのか?」


彼はそう言った。


「でも、これだけ大量にあるから、悪人たちが奪おうとしているんだろう。しかも、これは売り物じゃないしな」


サイが言った。


「幸い、この薬のことを知っている外部の人間は、裏切った仲間とその友人たちだけだ。だから、この薬を奪おうとする可能性があるのは、きっとそいつらのグループだけだろう」


ルーカスが言った。


「奴らはそれほど大人数じゃないらしい。だから、そんなに心配する必要はないかもしれないな」


ルイスが言った。


「ずいぶん甘く見ているな」


ルーカスが言った。


「ミシェルと交代したい。すごく眠いんだ」


ルイスは不満を漏らした。


「昼寝するように言われていただろ?」


ルーカスが言った。


「実は、さっき昼寝をしなかったんだ。図書館で、ほかの参加者たちに勉強を教えていた」


サイが言った。


「はあ? あいつらの頼みを聞いたのか?」


ルーカスは驚いた。


「うん。学校の成績がよくないって言っていたからね」


サイが答えた。


「おい、敵チームを手伝うなって言っただろ!」


ルーカスが言った。


「彼らは学校の成績を上げるために教えてほしいと言ったんだ。前の試合みたいに、競い合うためじゃないよ」


サイが言った。


「それに、おかげでみんな仲良くなったし、もう冷たい態度を取らなくなった」


彼はそう言った。


「それでもだ。俺だって、あいつらの頼みは断ったぞ」


ルーカスが言った。


「二人は違うだろ。お前は五位以内で最下位だったけど、サイは一位なんだから」


ルイスが言った。


「お前、どういう意味でそんなことを言ったんだ、ああ?!」


ルーカスは納得がいかず、言い返した。


「お前の言っていることが間違っていないのはわかっている。でも、自分の態度を気にしたことはないのか? お前は何でも自分が仕切ろうとしすぎるんだ」


ルイスが言った。


「それがチームリーダーとしての俺の仕事だ!」


ルーカスが言い返した。


「二人とも、喧嘩しないで。僕はルーカスに注意されても、わざと感情的にならないようにしていたんだ。そうすれば、喧嘩にならずに済むから」


サイが言った。


「僕にも悪いところがあった。直すよ」


彼はそう言った。


「そういう意味じゃない。お前は学校の外でも、リーダーみたいに振る舞っているだろ?」


ルイスが言った。


「今まで俺とミシェルは、チーム内で揉め事が起きないように、お前にはこのことを言わずにいた。でも、お前は時々、黙って見過ごせないほどひどい態度を取る」


「サイとの個人的な問題があるからって、クラス全員にあいつを避けさせる必要はないだろ?」


ルイスが言った。


「お前は失礼すぎる!」


彼はそう言った。


「おいおい、やめろって」


サイは二人を押し離した。


「僕は大丈夫だから、喧嘩しないで」


サイが言った。


「お前に何がわかるんだ?!」


ルーカスが言った。


「お前だって失礼な態度を取っていると思わないのか?! 忘れたのか、俺はお前たちより二歳も年上なんだぞ。それなのに、お前には礼儀というものがないらしいな!」


「誰にでも礼儀正しくする必要はない!」


ルイスが言い返した。


「そんなふうにあいつをかばったら、あいつは守ってもらうことしかできないオカマみたいに見えるだろ!」


「こいつは優しすぎて、時々馬鹿みたいに見えるんだ。だから俺が、暴力ってものを教えてやらなきゃならないこともある」


ルイスが言った。


「おお? 殴り合いをしたいのか、ああ?!」


ルーカスが言った。


「かかってこい! 怖くなんかないぞ!」


ルイスが言い返した。


「二人とも、やめろ!」


「ゴツン!」


サイは二人の頭を殴った。


「あいつのことは放っておけ! ここで決着をつけてやる!」


ルーカスは痛そうに頭を押さえながら言った。


「いいだろう! どっちが勝つか、はっきりさせてやる!」


ルイスはルーカスの襟をつかんだ。


「ガシャーーーン!」

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