第63章:投票を集める
「本当にその大会に出るつもりなのか?」とレオンさんは、襲いかかってきた木の棒をカランビットで受け止めながら言った。サイとレオンさんはウィルダネスの丘で訓練をしていた。
「断れるわけないじゃないですか?」とサイはその木の棒でレオンさんに攻撃しながら答えた。
「それに、ラジ兄さんはあの大会も訓練や能力の向上の一環だと言っていましたし」とサイは木の棒をレオンさんに向かって振り下ろした。
レオンさんは両手のカランビットでそれを受け止めた。「後でお前がどれくらいの点数を取れるか、見てみよう」そう言って、サイの木の棒を斬り、真っ二つにした。
サイは驚いた。「おじさん、ずるいです!」とサイは言った。
「何がずるいんだ?」とレオンさんは言った。
「僕は剣の代わりに木の棒を使っているだけなのに、おじさんは刃物を使っているじゃないですか」とサイは言った。
「これは釣り合いが取れている。お前は長いものを使い、私は小さいものを使っている」とレオンさんは答えた。
「でも、僕が剣を使っていたら、さっきみたいに簡単には斬れなかったはずです」とサイは言い、大きな岩の近くにあった別の木の棒を拾った。
「分かった。もうこれは使わない」レオンさんの両手のカランビットが光を放った。その光は長く伸び、光が消えると、武器は先端が鋭く尖った青い氷の槍に変わっていた。
サイは驚いた。「ど、どうしてそんなことが――」サイは、レオンさんが槍を自分に向けて突き出したため、すぐに身をかわした。
レオンさんは槍をサイに向かって振り下ろした。サイはすぐにそれを受け止めたが、木の棒が折れてしまった。
レオンさんは槍を横薙ぎに振るった。サイはすぐに後ろへ下がった。レオンさんが再び槍を突き出すと、サイは折れた二本の木の棒でそれを挟み込んだ。
レオンさんは攻撃を続け、サイはそのすべてを受け流した。二人の動きはとても速く、サイは苦戦しているように見えた。
やがて、サイの二本の木の棒が遠くへ弾き飛ばされた。サイは自分の木の棒を見て驚いた。レオンさんはサイの顔に向かって槍を突き出した。サイはすぐに目を閉じた。
しかし、槍はサイの顔のすぐ前で止まった。サイはゆっくりと目を開け、槍の先端を見た。
「わああ、すごい!」とサイは言った。レオンさんは誇らしげに微笑みながら槍を引き戻した。
「どうして二つの武器を持っているんですか? 一人が持てる武器は一つだけじゃないんですか?」とサイは興奮しながら言った。
「その通りだ」とレオンさんは言った。槍が光を放ち、やがて消えた。
「だが、私の最初の武器であるカランビットは小さい武器だから、槍を作るのに十分な元素がまだ残っているんだ」
「僕も二つの武器を持てるようになりますか?」とサイは言った。
「お前はもう剣を持っているし、それもかなり強い武器だろう。いったいどんな武器が欲しいんだ?」とレオンさんは言った。
「さあ……ただ、今度の大会で優勝できたらいいなと思っているだけです」とサイは言った。
「ところで、お前たちは大会の投票を集めたのか?」とレオンさんは言った。
「大会の投票ですか? ソフィアさんからは何も言われていません」とサイは答えた。
「投票は、どの学校がより多くの支持を集めているか、あるいは勝つ可能性が高いかを住民たちが評価するために行われるんだ」とレオンさんは言った。
「一つの街の住民が、必ずしも自分たちの街の学校を選ぶとは限らない。投票は、タブレットに表示された学校の一覧から選ぶことで行われるんだ」
「じゃあ、僕たちは人々に投票してもらうために、あちこちを回らなきゃいけないんですか?」とサイは言った。
「そうだ。クラスメートたちと一緒にやることになる」とレオンさんは答えた。
***
「もっと早く終わらせるために、別々に行動して担当する地域を分けたほうがいいんじゃないか?」とイワンは言った。彼らは道路脇に立っていた。
「本当なら、二つのグループに分けるつもりだった」とルーカスは言った。
「ただ、投票を集める仕事をしているのは僕たちだけじゃない。五番街の代表でもある別の学校の生徒たちも、すでに左側を回っている。だから僕たちは右側を回って、終わったら担当を入れ替えるんだ」と彼は言った。
「二つの学校が回っているとしても、この街はこの仕事をするには広すぎないか? 一番街に次いで大きな街なのに、僕たちは合わせても二十人しかいないんだぞ」とファッタは言った。
「十八人だよ。サイの友達二人は合流するけど、この仕事には参加しないから」とライアンは言った。
「これは、僕たちがほかの学校と競い合うために、どれだけ努力するかを見るために行われているんだ」とサイは言った。
「それなら、すぐに始めよう」とルーカスは言った。彼らはその場を離れ、歩き始めた。
***
「投票をしてほしい?」と、道端で声をかけられた女性が言った。
「はい。これは八番街で行われる大会の評価の一つなんです」とイワンはタブレットの画面を女性に向けた。
「本当はあなたたちに投票したいんだけど……」女性はサイに目を向けた。
「この子に有利になってしまうから、私はもう一つの街の代表に投票するわ」女性は『ワン・シティ・ファイブ・スクールズ』という学校に投票した。そして、その場を去った。
「ああ、てっきり僕たちに投票してくれると思ったのに」とイワンはタブレットの画面を見ながら言った。サイは申し訳なさそうな顔をしていた。
「落ち着けよ。僕たちに投票してくれる人は、まだたくさんいるかもしれない」とファッタは言った。
「もういい。先に進もう」とルーカスは苛立った様子で言った。
***
彼らはさまざまな場所で大勢の人に声をかけ、人々は彼らのタブレットで投票した。
「次は遊園地に行こう。あそこなら、きっと人がたくさんいる」とルーカスは言った。
「でも、今のところ『ワン・シティ・ファイブ・スクールズ』のほうがリードしているね」とイワンは画面を見ながら言った。
「このままだと、僕たちはどうなるんだ?」とニコは言った。
「投票は大会で最も重要なことじゃない。誰が優勢に見えるかを確認するために行われているだけだよ」とサイは言った。
「サイの言う通りだ。少なくとも、僕たちは投票を集めるために努力している」とイワンは言った。
「よし、そこへ行こう」とディオンは言った。
***
「投票をお願いします」とイワンはタブレットの画面を差し出した。男性が投票した。
「投票をお願いします」とイワンは若い女性にタブレットを差し出し、彼女も投票した。
「投票していただけますか?」イワンは老人に声をかけ、老人も投票した。
「また『ワン・シティ・ファイブ・スクールズ』が優勢だ。ほかの学校にも何人か投票しているけど」とハリーも画面をのぞき込みながら言った。
「ああ、もう疲れた」とルーカスは言った。
「どうして僕たちだけで、これをやらなきゃいけないんだ?」とニコは言った。
「みんな、少し休むか?」とイワンは言った。
「少し時間が必要そうだな」とハリーは椅子に座って言った。全員が椅子のそばに集まり、サイも同じように近づいた。
突然、ルーカスはタブレットをサイに渡した。サイは戸惑った様子だった。
「お前が投票を集めに行ってこい」とルーカスは言った。
「えっ? 僕だけ?」とサイは言った。
「もちろんだ。僕たちがこんなことになったのは、お前のせいなんだからな」とルーカスは言った。
「おい、サイだって僕たちと同じように疲れているんだぞ」とイワンは言った。
「こいつには責任を取ってもらわないとな。そもそも、僕がこの仕事を任せたところで、役に立つとは限らないけどな」とルーカスは言った。
「分かった。もう一度回ってくるよ」とサイはすぐにその場を離れた。
「結果が同じだったら、罰を与えるからな!」とルーカスは言った。
(まあ、仕方ない。僕もこのことに責任を取らなきゃいけないんだ)とサイは諦めたように思いながら歩いていった。
サイは大勢の人に声をかけた。素通りする人もいれば、怒鳴る人もいて、投票してくれる人もいた。
疲れた様子のサイは、友達のほうをちらりと見た。彼らは射撃ゲームの前に集まり、積み重ねられた缶を狙うゲームを楽しんでいた。ルーカスはそのゲームに挑戦していた。彼らの姿を見たサイは悲しそうな顔をした。
***
「結果は変わらなかったな」とイワンはタブレットを持ちながら言った。
「お前、本当にちゃんと仕事をしたのか?」とルーカスは言った。
「さっきサイが回っていたとき、あまり投票してもらえなかったみたいだな」とニコは言った。
「僕が声をかけても、みんな断ったんだ」とサイは答えた。
「当然だろ。みんなお前のことが好きじゃないんだから」とルーカスは言った。サイは傷ついた様子だった。
「もういい。騒ぎを起こすなよ」とライアンは言った。
「彼の言う通りだ。もうこんな時間だし、昼食を食べる場所を探したほうがいい」とイワンは言った。
「ちょっと待て」とルーカスは言い、イワンから再びタブレットを受け取った。
「五番街の郊外へ行け」と彼は言い、サイにタブレットを渡した。
ほかの全員が驚いた。サイも同じだった。
「おい、何を考えてるんだ?! そこは本部から一番遠い場所だぞ」とライアンは言った。
「昼まで探し回ったのに、まだ投票が足りないのは誰のせいだと思っているんだ?」とルーカスは言った。
「でも、そこまで遠くなくてもいいだろ」とイワンは言った。
「彼の言う通りだよ」とサイはタブレットを受け取りながら言った。
「五番街の郊外は、三年前に父さんが原因だと噂されている爆発の被害を受けなかった地域なんだ」
「だから、僕に対して特別な怒りを抱いている人はいないはずだよ」とサイは少し悲しそうに言った。ライアンとイワンは気まずそうな顔をした。
「それじゃ、先に行ってくる」とサイは歩き出した。
「ルーカス、お前はやりすぎだぞ」とファッタは言った。
「でも、この判断は正しいんじゃないか?」とルーカスは言い返した。
「おいおい、もういいだろ。喧嘩するより、昼食を食べに行こう」とディオンは言った。一方、ライアンはサイのほうを見続けていた。
***
サイは駅にいた。電車が停車すると、ホームに立っていたサイは車内に入った。電車は街中を通り抜けながら走り出した。
サイはただ黙って座っていた。それからパンの包みを開け、水と一緒に食べた。頬には涙がこぼれていた。
***
サイは、広大な庭園の前に立っていた。そこには大勢の人がいた。
「よし、さっそく投票をお願いしよう」とサイは言った。
「やっぱり、ここなら人がたくさんいると思った」と彼は歩きながら言った。
「サーーーイ!」と誰かが呼ぶ声が聞こえた。サイは後ろを振り向き、驚いた。
「ライアン?」と、こちらへ走ってくるライアンを見て言った。
「どうしてここにいるの?」とサイは驚いて言った。
「お前を追いかけてきたんだ」とライアンは言った。
「さっき昼食を一緒に食べた後、駅に行って、こっちまでの切符を買ったんだ」
「ルーカスは少しやりすぎだと思ったから、お前を手伝うためにここまで来たんだ」と彼は言った。
「なんだか申し訳ないよ」とサイは言った。
「もうここまで来たんだから、さっそくみんなに投票をお願いしよう」とライアンは言い、サイからタブレットを受け取った。
「うん」とサイは答えた。二人は再び歩き始めた。
「おーーーい!」と声が聞こえた。二人が振り向くと、今度はイワンがこちらへ走ってきた。
「イワン?!」と二人は驚いて言った。
「サプラーイズ!」とイワンは言った。
「いつ来たんだ? どうして気づかなかったんだ?」とライアンは言った。
「お前たちを驚かせるために、わざとお前とは別の便を予約したんだ」とイワンは言った。
「僕たちもここでお前を手伝うよ」とイワンは言った。
サイは微笑んだ。「ありがとう」
彼らは再び歩き始め、話したり、一緒に笑ったりした。
***
「今日はヌメシア市対抗大会に出席するため、八番街へ出発します。みなさん、準備はできていますか?」とソフィアは言った。彼女の右側にはレオンさんとラジ兄さんがいた。
「できています!」と全員が答えた。そこにはルイスとミシェルも加わっていた。彼らの列のずっと後ろには、出発を見送る大勢のメンバーがいた。
「必要な道具や荷物は、全部持ちましたか?」とソフィアは言った。
「持ちました!」と全員が答えた。
「本は?」
「持ちました!」
「筆記用具は?」
「持ちました!」
「医療用品は?」
「持ちました!」
「スマホは?」
「持ちました!」と全員が答えた。その一方で、サイは慌てていた。
「ま、待ってください。スマホを部屋に置いてきてしまいました」とサイは言った。
「急いで取りに行きなさい。時間は十分しかないわよ」とソフィアは言った。
「はい!」サイは走り去った。
***
サイは部屋のドアから出て、鍵をかけると、廊下を走った。
「まずい! 急がなきゃ!」サイはエレベーターのほうへ走った。慌てながら、横にあるボタンを押した。
やがて、ドアがゆっくりと開いた。サイは少し驚いた顔をした。中にはムーイがいて、小さく泣いていた。
サイを見たムーイは驚き、すぐに涙を拭いてうつむいた。
サイはためらいながら中に入り、一階のボタンを押した。ドアが再び閉まった。
サイは黙ったままだった。一方、ムーイは壁のほうを向いていた。
「どうして……僕たちが出発するのを見送りに来てくれなかったの?」とサイは言った。
「行くつもりよ」とムーイは言った。まだ悲しそうな様子だった。
「そうなんだ」とサイは言った。二人は再び黙り込んだ。
「何かあったの?」とサイはムーイのほうを向いて言った。
「何でもないわ」とムーイは答えた。
「また僕の友達が君に嫌がらせをしたの?」とサイは言った。ムーイは少し黙った。
「私はここに来る前から、何度も同じことを経験してきたの」
「昔から友達がいなくて、いつも一人ぼっちで、仲間外れにされていた」
(僕たちは似ているんだな)とサイは思った。
「昔は私も普通の子供と同じだった。でも、だんだん黙って人混みから離れるようになったの。だから、友達が私を変だと思うのも無理はないわ」
「話したがらないから変な子だと思われて、ここの人たちは私の名前さえ知らないの」とムーイは答えた。
「拾われた子、変な子、二番街の子、白髪の子、ソフィアの弟子、役立たずの子……みんな、私にいろいろなあだ名をつけたわ」と彼女は言った。サイは気の毒そうな顔をした。
「でも、どれも好きじゃない。私が黙っていることしかできないから、そうなったのも分かっているけど」
「これからここで、私はどうなっていくんだろう」とムーイは言った。二人は黙ったままだった。
「ムーイ」とサイは言った。ムーイは驚いて彼のほうを向いた。
「それが君の名前だよね?」とサイは微笑みながら言った。ムーイの顔はすぐに赤くなった。
「もし誰も君の名前で呼んでくれなくても、君の名前を知っている僕がいるよ。最初は間違えちゃったけどね」と彼は言った。
ムーイは恥ずかしそうにした。「あ、ありがとう」と彼女は言った。
「わ、私はあなたが帰ってくるのを待っているわ」と彼女はうつむいて言った。
「すぐに戻ってくるよ」とサイは言った。
エレベーターのドアが開いた。
「あっ、急がなきゃ」サイはすぐに走って外へ出た。
「じゃあね、ムーイ! 帰ってきたら、お土産を買ってくるよ!」とサイは振り返って手を振りながら言った。ムーイは彼を見つめ、それから微笑んだ。
***
「バイバーイ!」メンバー全員が飛び立つ飛行機に向かって手を振った。
「バイバーイ!」ハリー、ニコ、ディオンは飛行機の通路側の窓から身を乗り出し、大声で叫びながら手を振った。サイ、ライアン、イワン、ファッタはただ手を振って微笑んでいた。一方、ルーカスは外を眺めているだけだった。
その後、サイは人だかりの後ろにいるムーイを見つけた。ムーイはその場で黙って立っていた。サイはすぐに彼女に向かって手を振った。ムーイは小さく微笑み、それから手を振り返した。




