第62章:サイとムーイ
数日後……
「やっと戻ってきたな」とカイが嬉しそうに言った。昨日、二番街へ行っていた人たちが本部の前庭に集まっていた。
「みんな疲れているでしょう。もうすぐに休んでいいわよ」と、その子のそばに立っていたソフィアが言った。
「はい!」みんなはすぐに走ったり歩いたりして、本部の中へ入っていった。
サイもみんなの後を追って歩いた。
「待って、サイ」とソフィアが呼んだ。サイは立ち止まって振り返った。
「どうしたの、お姉さん?」と彼は言った。
「私にはまだいくつか用事があるの」とソフィアが言った。
「この子を、空いている女子寮の部屋まで案内してくれる?」そう言いながら、彼女はただうつむいているその子の肩に手を置いた。
「えっ? 僕が女子寮の階にいても大丈夫なの?」とサイが言った。
「大丈夫よ。もし誰かに注意されたら、私に頼まれたって言えばいいわ」とソフィアが言った。
「その後、会議室に来てね」と彼女は言った。
「わかった。じゃあ、僕についてきて」とサイが言った。その子は不安そうにサイを見つめるだけだった。
「心配しなくていいわ。ここの人たちは意地悪じゃないから」とソフィアが言った。
その子はうなずき、それからサイの後について歩き始めた。
***
「この本部は五階建てなんだ。一階には図書館、食堂、道具置き場、それから来客受付があるんだよ」と、サイは女子寮の階の廊下を歩きながら言った。
「僕が会員になる試験に合格できなくて、ここに住むことを許されたときは、まだ会員じゃなかったからお小遣いをもらえなかったんだ。訓練を受けていたときも、ずっとそうだったよ」と彼は言った。その子はただ黙っていた。
「でも、心配しなくていいよ。いくつかの必要なものは組織が負担してくれるんだ。食事なら食堂に行けばいいし、勉強したいなら図書館に行けばいい。それ以外にもいろいろあるよ」
「それから、二階は男子寮で、三階のここが女子寮なんだ」
「特別な用事がない限り、異性の寮の階をうろつくことは普通は禁止されているんだ。だから、エレベーターや階段で移動するときは、どちらかの階を通り過ぎることが多いんだよ」
「四階には医師の階級の部屋、警察の階級の部屋、ボランティアの階級の部屋、会議室、それから訓練教官専用の部屋があるんだ」
「そこは主に集まったり会議をしたりする場所なんだ。もっとも、会議は会議室で行うことのほうが多いけどね」
「そして五階にはメンターの部屋があって、リーダーの部屋もあるんだ」
「まあ、リーダーはほとんど本部にいないんだけどね」
「どうしてそんなに詳しく説明してくれるの?」とその子が言った。
「君が中を歩き回るときに、ここの場所がわかるようにだよ」とサイが言った。
「僕は……部屋にこもっていると思う」とその子が言った。
「それでもいいよ。慣れるまで時間が必要かもしれないからね」とサイが言った。
その子はただ黙っていた。
「あ、そうだ。こっちを見て」とサイは廊下の右側の壁のほうへ曲がった。そこには大きなバルコニーがあった。
二人はバルコニーの柵に近づいた。その子は感嘆した様子だった。そこからの景色はとても美しかった。
「どう? きれいでしょう?」とサイが言った。その子は小さく微笑んでからうなずいた。
「悩みがあるとき、僕はよく二階のここに来て、気持ちを落ち着かせるんだ」とサイが言った。
「ずっと部屋にいるより、ここに来るのもいいんじゃない?」と彼が言うと、その子はうなずいた。
「あ、そうだ。君の部屋はもうすぐだよ。さあ、ついてきて」とサイは廊下に戻り、その子も後に続いた。
「ここが君の部屋だよ」二人は一つのドアの前に立った。その子はただドアを見つめていた。
「それから、これが君の鍵だよ」とサイは三本の鍵を差し出した。
「ここの人たちはだいたい親切で優しいから、心配しなくていいよ。それに、ソフィアお姉さんだって君を弟子にしてくれたんだから」とサイが言った。その子はただうつむいていた。
「何かあったら、僕に頼っていいよ。できる限り助けるから」
その子の頬が赤くなった。「ありがとう」と、彼女はうつむいたまま言った。
「じゃあ、僕はもう行くね。僕の部屋は二階で、ラジ兄さんの部屋の隣なんだ」とサイが言った。
「困ったことがあったら、遠慮なく頼ってね!」サイは手を振りながら走り去った。
その子はサイのほうを振り返った。「待って!」と彼女は言った。
サイは立ち止まり、それから振り返った。
「私の名前は……」その子は緊張しているようだった。サイは嬉しそうな顔をした。
「私の名前はムーイ・エレガ……」
「ん?」サイは笑顔のまま言った。
その子の頬が再び赤くなり、それからうつむいた。「……ンティ」と彼女は言った。
二人はしばらく黙っていた。サイは彼女を見つめ、ムーイはただうつむいていた。
「よろしくね、アンティ!」サイは手を振り、満面の笑みで言った。
ムーイはそれを聞いて驚いた。
サイが考えていたこと:ElegANTIe
ムーイが考えていたこと:Auntie
「じゃあねー! また会おう!」サイは手を振りながら走り去った。
ムーイはただ、諦めたようにうつむいていた。
***
「私たちがここに戻ってくる一日前、ロッキーさんのところに八番街からメッセージが届いたの」と、会議室でソフィアお姉さんが言った。
「そのメッセージは、八番街で最大の学校である本校が主催する行事への招待状だったわ」
「いったいどんな行事なんですか?」とファッタが言った。
「すべての街の学校が集まって競い合い、どこが一番優れているかを確かめる行事よ。この行事は『ヌメシア都市対抗戦』と呼ばれているわ」とソフィアが言った。
「首都も参加するんですか?」とライアンが言った。
「たぶん参加しないわ。首都は、まるで私たちとは別の存在みたいだから」とソフィアが答えた。
「じゃあ、参加する学校のチームは九つだけですね?」とイワンが言った。
「いいえ、十チームよ」とソフィアは書類を読みながら言った。
「えっ? 首都を除いた街は全部で九つじゃないですか」とイワンが言った。
「確かに本来なら参加者は九チームだけのはずよ。でも、主催者側が私たちを特別に招待したから、五番街からは二つの学校が代表として参加するの」とソフィアが答えた。
「それに年齢制限もないから、みんなより二歳年下のサイも参加することになるわ」
「えっ? つまり、僕たちがそこへ行く代表になるってことですか?」とルーカスが言った。
「もちろんよ。アカデミーの生徒はあなたたちだけだから」とソフィアが言った。
「一つの学校から参加できる人数は十人よ」
「十人? でも、僕たちは八人しかいませんよ」とディオンが言った。
「だから、友達や知り合いを誘って、私たちに協力してもらえばいいのよ」とソフィアが言った。
「サイ、あの名前のない子を連れていけばいいんじゃないか?」とルーカスがサイに言った。
「えっ? どうしてあの子なんだ?」とサイが言った。
「あの子が参加すれば、少なくともあと一人探せばいいだけだろ?」とハリーが言った。
「それに、あの子だっていつまでも組織の中で何の役割も持たずにいるわけにはいかないだろ」とニコが言った。
「でも、あの子が参加したがるかどうかはわからないよ。あの子は、あんなことがあったばかりで、まだ時間が必要なんだ」とサイが言った。
「どうしてだよ? お前が買ったんだろ」とルーカスが言った。
「だったら、お前の言うことを聞くべきだ!」
「僕はあの子を自分のものにするために買ったんじゃない。自由にするためだ!」サイは苛立ち始めた。
「これも俺たちのためなんだぞ!」とルーカスが言った。
「俺たちはあの子に協力を頼んでいるだけだ」とハリーが言った。
「仮にその子がサイの所有物だとしても、連れていくかどうかを決めるのはサイだろ」とファッタが言った。
「サイが嫌だと言っているのに、あの子に無理強いしたって同じことだ。だから、こんなことで言い争う必要はない」と彼は言った。
「まったく、ただの普通の行事なのに、どうしてあの子は何もかもが怖いみたいな態度を取るんだ?」とルーカスが言った。
「それに、そんなに大変なことをさせるわけでもないのに」とディオンが言った。
「おいおい、もうやめろよ。どうしてサイを責めるんだ?」とライアンが言った。
「正確には、協力を頼んでいるだけだ」とルーカスが言った。
「でも、あいつが嫌がるせいで、全部が余計に面倒になっているんだ」と彼は言った。サイは不機嫌そうだった。
「はいはい、もうこの話は終わり。議題に戻りましょう」とソフィアが言った。
「招待が急だったから、私たちの学校のリーダーを誰にするかも、あなたたちの付き添いを誰にするかも、まだ決められていないの」
「付き添いについては、どの階級でもいいから、あなたたちと年齢が近くて、交流しやすい先輩を選ぶことを勧めるわ」
「誰か推薦できる人はいる?」と彼女が言った。
「付き添いについては、どの階級の先輩とも、僕たちはあまり知り合いじゃないし、親しくもありません」とハリーが言った。
「それは、僕たちが同じ仲間とばかり遊んでいるからだよ」とイワンが言った。
「他の階級の人たちと親しいのは……」とライアンが言った。みんながサイを見た。サイは気まずそうになった。
「ぼ、僕……」サイは困惑した。
「僕が推薦できる人は、一人だけかな……」
***
廊下を歩いていたラジ兄さんは、スマホを開いたときに足を止めた。メッセージが一件届いていた。
ソフィアお姉さん
ラジ
ヌメシア都市対抗戦の付き添い役になってくれない?
実は、お願いしているわけじゃないの。
あなたを選んだって知らせているだけよ。
じゃあね!
ラジ兄さんはしばらく黙っていた。
「誰が俺を推薦したんだ?」と彼は言った。
***
「リーダーになるのは、やっぱり嫌なんですか?」とファッタが言った。
「私はあなたたちの先生でしょう。そこはまた別の話よ」とソフィアが言った。
「ロッキーさんはどうですか?」とハリーが言った。
「それでもいいんじゃないか? いつもロッキーさんだろ?」とニコが言った。
「ロッキーさんは仕事がたくさんあるから、無理なの」とソフィアお姉さんが言った。
「じゃあ、他の人を試してみたらどうですか? 例えば、オーロラさんとか」とディオンが言った。
「オーロラさんは、命令された場合を除いて、自分から出かけるような人じゃないわ」とソフィアが言った。
(それならラジ兄さんと同じだな)とサイは心の中で思った。
「それなら、レオンさんはどうですか?」とイワンが言った。
「レオンさん? あの子の訓練教官だってことを忘れたのか?」とルーカスはサイを指さして言った。
「それがどうしたんだ? 誰と親しいかなんて関係ないだろ」とライアンが言った。
「付き添いには、自分の兄みたいな上級の先輩を選んだんだろ? そのうえ、今度は自分の訓練教官まで? それじゃあ、あいつに都合がよすぎるんじゃないか?」とルーカスが言った。
「それって縁故主義みたいなものだろ!」
「僕はさっきから黙っていただけなのに、みんなが僕に先輩を選べって言ったんだ。先輩たちと親しいのが僕だけだからだろ? それに、レオンさんを提案したのも君たちだ。僕のどこが縁故主義なんだ?」とサイは反論した。
「そりゃあ、お前は知り合いが多いからな。ラジ兄さんっていう上級の先輩と親しいだろ。あの人だって、医師の階級とは関係のない任務までよく受けているから、いろんな人と協力する機会が多くて、知り合いも多いんだ!」とルーカスが言った。
「ラジ兄さんを巻き込むな!」サイは苛立って言った。
「それに、お前はカイさんとも親しい。お前のほうが友達が多いのは明らかだ。そのせいで、同い年の俺たちと過ごす時間だってないんだろ」とルーカスが言った。
「僕たちがサイを避けているんじゃないのか?」とディオンが言った。その言葉にサイは傷ついた様子を見せた。
「もう、喧嘩はやめなさい!」とソフィアが言った。
「レオンさんを選ぶこともできるし、私もあなたたちの指導役として一緒に行くわ」
「今、私たちが考えなければならないのは、残り二人の参加者を補うために、あなたたちに知り合いがいるかどうかよ」
みんなは黙り込んだ。
ソフィアはサイに目を向けた。「サイ、あなたはどう?」
「えっ? 僕がまた選んでもいいんですか?」とサイが言った。
「今のところ、それができるのはあなただけよ」とソフィアが言った。
「実は、参加者になってくれそうな友達がいるんだ。ちょうど二人」とサイが言った。
「わかったわ。その二人を誘ってきていいわよ」とソフィアが言った。
***
「ヌメシア都市対抗戦に参加するの?」とルイスが言った。サイ、ルイス、ミシェル、そしてルイスの後ろに座って背中にもたれているルーシーは、ミシェルの芝生の庭に座っていた。
「うん。僕たちは二人足りないんだ」とサイが言った。
「君たちが参加してくれれば、ちょうど人数がそろうんだ」
「本当に僕たちを選ぶの? あの口の悪いガキが、また文句を言うんじゃない?」とミシェルが言った。
「あいつは僕たちより二歳も年上なんだぞ」とルイスが言った。
「それなのに、どうしてまだあいつらと友達でいようとするの? あんな態度を取られているのに」とミシェルが言った。
「友達でいるって、どういう意味? 向こうが僕を避けているんだよ」とサイが言った。
「それなら、お前が買った女の子と友達になればいいじゃないか」とルイスが言った。
「でも、僕たちはアカデミーでクラスが違うんだ。僕は二階の八年生のクラスで、彼女は一階の七年生のクラスなんだよ」とサイが言った。
「僕がクラスでずっと一人のままなら、そんなことは関係ないよ。それに、彼女が僕と友達になってくれるかどうかもわからないし」
「そうなの? 君の話を聞く限り、助けてもらったことで、彼女がお前を好きになる可能性もあるんじゃない?」とルイスが冗談を言った。
「そんなわけないよ」とサイが言った。
「アカデミーの生徒は君たち八人だけなんだろ? じゃあ、彼女がアカデミーに入ったら、七年生のクラスでは一人きりになるの?」とミシェルが言った。
「そうだよ」とサイが答えた。
「ところで、あの子の名前は何?」とミシェルが言った。
「アンティ」とサイが答えた。
「はあ?」ルイスとミシェルは困惑した。
「フルネームは?」とルイスが言った。
「確か、ムーイ・エレガンティーって言っていたと思う」とサイが答えた。
「どうやら、呼び名を間違えたみたいだな」とルイスが言った。
「でも、あの部分を強調していたんだよ」とサイが言った。
「私の名前はムーイ・エレガ……」
「ん?」サイは笑顔のまま言った。
その子の頬が再び赤くなり、それからうつむいた。「……ンティ」と彼女は言った。
「まったく、あの子の名前はムーイだろ」とミシェルが言った。
「えっ? そうなの?」とサイが言った。
「それで、お兄ちゃんとミシェルお姉ちゃんは参加するの?」とルーシーが言った。
「悪くないね。兄さんも参加しようかな」とルイスが答えた。
「君たちが参加するなら、私も参加するよ」とミシェルが言った。
「じゃあ、みんなが行っている間、私は一人になっちゃうんだね」とルーシーは悲しそうに言った。
「心配しないで。僕たちは少しの間だけ行くんだから」とサイはルーシーの頭をなでながら言った。
「本当? どのくらい?」とルーシーが言った。
「一か月」とサイが言った。
「い、一か月?!」ルイスとミシェルは驚いた。
「そ、そうだね。短い期間だよ」とルーシーはぎこちなく言った。
「わかった。あの七人がどんな姿をしているのか見られるなら、参加してもいいな」とルイスが言った。
「彼らには、少しわからせてやる必要があるかもしれないね」とミシェルが言った。
「おい、そんなことをする必要はないよ」とサイが言った。
「僕たちが参加すれば、君はもう一人きりで寂しくならずに済むよ」とルイスが言った。
「私も君がどんな気持ちなのかわかるから、力になれて嬉しいよ」とミシェルが言った。
サイは嬉しそうに微笑んだ。「ありがとう」
「どうしてみんな、お兄ちゃんにあんなに意地悪なの? お兄ちゃんと友達にさえなろうとしないなんて」とルーシーが言った。
「うーん、どうだろうね?」とサイが言った。
「僕に友達がいないとしても、それは彼らのせいじゃないと思う。誰と友達になるかは、彼らが自分で選ぶ権利があるから」
「でも、そういうことじゃないよ。一人でいるのは楽しくないよ。静かな雰囲気に落ち着かされることはあってもね」とミシェルが言った。
「君の言うとおりだね」とサイは悲しそうに言った。
「僕は静けさが好きだけど、孤独は好きじゃないんだ」と彼は言った。
***
「席を交換しよう」と翌日、ルーカスが言った。彼らは教室にいた。ルーカスはサイの席のそばに立ち、サイはまだカバンを背負ったまま、ルーカスの前に立っていた。
「どういう意味? どうして君が僕の席に座っているの?」とサイが言った。
「聞こえなかったのか? 席を交換しようって言ったんだ」とルーカスが言った。
「僕はあいつと座りたいんだ」とルーカスは、ぎこちなく笑っているハリーを指さした。
「前に座っているやつはつまらないんだ。いつもお前の味方ばかりする」とルーカスが言った。サイは黙っているライアンに目を向けた。
「ファッタの隣のやつも同じようなものだ」とルーカスが言った。
「僕のことを言っているのか?」とイワンが振り返って言った。
「クラス委員長だからって、好き勝手にしていいわけじゃないぞ」とファッタが言った。
「でも、これはみんなにとってもいいことだろ。僕はハリーと座るし、ライアンは僕みたいな面倒なやつじゃない人と座れるんだから」とルーカスが言った。
「わかった。僕が移るよ」とサイは言い、カバンをライアンの隣に置いた。
「これからうまくやれなかったら、ごめんね」とサイは気まずそうに言いながら座った。
「気にしないで。僕はむしろ君と座れて嬉しいよ」とライアンが言った。
「あのうるさいやつと座るよりはね」とライアンはルーカスをちらりと見ながら言った。
「誰のことを言っているんだ?」とルーカスが言った。
サイはため息をついた。(僕はこんなふうに仲間外れにまでされるんだ)と心の中で思った。
(それでも、ライアンは僕を受け入れてくれた。今のところ、少しでも僕の味方をしてくれるのはライアンとイワンだけだ)
(いつまでこんなことが続くんだろう?)
***
サイは屋上で腕を組み、校庭を眺めていた。
ルーカス、ハリー、ファッタ、ディオン、ニコ、ライアン、イワンは、そこでサッカーボールを蹴って遊んでいた。
(昔は僕にも友達がいた)とサイは心の中で思った。
彼は、草原でレイ、ジャッキー、メラティ、カリンと追いかけっこをして遊んだときのことを思い出した。道端の壁に落書きをしたこと、かくれんぼをしたこと、そして食堂で一緒に食事をしたこと。
(みんな、今どうしているんだろう?)
(昔は簡単に人と打ち解けられたのに、みんなに避けられるようになってからは、自分から人に近づく勇気があまりなくなった気がする)
サイはため息をついた。
(母さんも父さんも、あの四人も、本当に僕を一人きりにしてしまった)
(それでも、僕はここで早く親切な人たちに出会えた)
サイは近くの椅子へ歩いていき、その上にパンの袋が置かれた椅子に座った。
「僕はきっと、これを乗り越えていける」と彼はパンを食べながら言った。
***
「はあ……当番のせいで帰るのが遅くなっちゃった」とサイは廊下を歩きながら言った。すでに夕暮れで、夕日の光が廊下の窓から差し込んでいた。
「この後は、レオンさんとの訓練もあるんだ」と彼は言った。
サイはある教室の前を通り過ぎようとしたが、窓越しにムーイが教室の椅子を机の上に上げているのを見て、足を止めた。彼女はまだ四脚しか上げていなかった。
(このクラスには彼女一人しかいないから、全部一人でやらなきゃいけないんだ)とサイは思い、ドアを開けた。
「やあ、アンティ」とサイが言った。
ムーイは振り返った。「サイ?」と彼女が言った。
「まだ帰っていないの?」とサイが言った。
「ま、まだよ。掃除をしないといけないから」とムーイはぎこちなく答えた。
「手伝おうか?」とサイが言った。
「えっ、いいよ。君に迷惑をかけるだけだから」とムーイが言った。
「僕は迷惑だなんて言っていないよ」とサイは椅子を持ち上げながら言った。
「君は床を掃いていて」とサイが言った。
「う、うん」とムーイが言った。
こうしてサイがすべての椅子を持ち上げている間、ムーイは床を掃いた。
***
「一人で教室を掃除するのは大変だったでしょう」とサイが言った。二人は一緒に道を歩いて帰っていた。
「そうでもないよ。君のおかげで助かったから」とムーイが言った。
「そういえば、ありがとうね」とムーイが言った。
「どういたしまして、アンティ」とサイが言った。ムーイは気まずそうだった。
「どうして僕たちと打ち解けようとしないの?」とサイが言った。
「みんな、そうしたくないみたいだから」とムーイが言った。
「みんながからかってきたり、私のことを嫌っているように見えたりするのは、わかっているよ」
「でも……みんな、私のことを変な子だって言うの」
「そんなの気にしなくていいよ!」サイは納得がいかない様子で言った。
「みんな本気で言っているわけじゃないよ。僕たちは全員男の子で、女の子の友達もいないから、君とどうやって友達になればいいのかわからないだけなんだ」
ムーイは微笑んだ。「君の言うとおりかもしれないね」と彼女は言った。




