第58章:二番街へ
「みんな正式にボランティアになったから、明日は二番街への旅に参加してもらうわね」とソフィアが言った。サイと七人の仲間は、ある教室にいた。
「そういえば、あの最初のオーディションで、僕たちと一緒に合格したメンバーがあと三人いたんじゃなかった?」とイワンが言った。
「そうね。あの時は10人が合格したわ」とソフィアが言った。
「でも、あと三人はもう辞めたの。ここでの規則についていくのは無理だと言って、もっと良い教育を受けたいから八番街へ引っ越したのよ」
「そこへ行くのは、僕たちが六番街へ行った時みたいに大人数になるの?」とサイが言った。
「いいえ。あの時、六番街へたくさんのメンバーを送ったのは、六番街がヌメシアで一番貧しい街で、とても大きな支援を必要としていたからよ」とソフィアが答えた。
「でも今回は、六番街ほど大変ではないと言える二番街へ行くの。とはいえ、二番街は豪華な街ではなく、普通の街という感じね」
「二番街には二つの異なる区域があるの。右側の状態はもっと良くて、王国もそこにあるわ」
「でも左側はあまり恵まれていない。右側ほど暮らし向きが良くないから、私たちが支援をする必要があるの」
「そこの王様はどうしたの? どうして何もしないの?」とファッタが言った。
「右側では、住民がよく問題を起こすの」とソフィアが言った。
「酔っ払い、暴力、いじめ、夜の女性――」
「夜の女性って何?」とサイが言った。
「そ、それは……」ソフィアは困った様子を見せた。
「夜に外へ出る女性のことよ」と彼女は言った。
「じゃあ、お姉さんが夜に外へ出たら、お姉さんは夜の女性って呼ばれるの?」とサイが言った。
ソフィアはその言葉に驚いた。他のみんなも黙り込んだ。
「ち、違うわ。それは本当の意味じゃないの。ただ嘘をついただけ」とソフィアが言った。
「じゃあ、どういう意味なの?」とサイが言った。
「サ、サイ、それを知るのはまだ早いと思うわ」とソフィアは優しく言おうとした。
「おお、そうなんだ。分かった」とサイが言った。
「オーケー、話に戻るわね」とソフィアが言った。
「今のところ、派遣する上級ボランティアは多くないわ。あなたたち下級メンバーにも仕事をしてもらうためよ。あなたたちがどのように仕事をするのかを見るわ」
「それに、医師の階級と警察の階級からも参加する人がいるわ」
「そしてメンターからは、あなたたちの指導者である私も行くし、私の仲間であるカイさんも一緒に行く。それから、ロッキーさんが指揮を執るわ」
「距離が遠いから、飛行機に乗って行くわね」とソフィアが言った。サイは嬉しそうに見えた。
「ここまでで、みんな分かったわね? しっかり頑張ってね」とソフィアが満面の笑みを浮かべて言った。
「分かった、お姉さん」とサイが言った。
「分かりました、先生」と他のみんながサイと同時に言った。
まだ笑顔のソフィアは、腹を立てた。
「私はお姉さんって呼んでって言ったでしょう!」彼女は机を叩いて言った。
みんな驚いた。「は、はい、お姉さん」
「ふん! 私ってそんなに年上に見えるの?」とソフィアが言った。
「それじゃあ、もう出ていいわよ」
みんなその教室を出て行った。全員(ライアンを除いて)がサイより先に歩いていた。教室から出たばかりのライアンがサイを追いかけた。
「サイ!」と彼が呼んだ。
「え? どうしたの?」とサイが言った。前を歩いていたイワンも立ち止まり、二人を見た。
「明日、参加するんだよな?」とライアンが言った。
「う、うん。評価をもらうために、絶対参加するよ」とサイはぎこちなく答えた。
「前にも六番街へ行った時に、こういう旅に参加したことがあるんだよな? どうだった? 楽しかった?」とイワンが尋ねた。
「そ、それは……」サイはぎこちなく、少し考えた。
「楽しかったと言えば楽しかったけど、問題が起きると大変なことになるよ」と彼は言った。
「この後どこへ行くんだ?」とライアンが尋ねた。
「友達の家に行きたい」とサイが答えた。
「僕たちも仕事があるから、また明日な」とライアンがイワンと一緒に走って行った。
「じゃあねー!」イワンが手を振った。サイはぎこちなく手を振るだけだった。
「明日、行くんでしょう? 向こうにいる間におやつが食べられるように、お母さんがお菓子を用意しておいたわ」とミシェルの母がサイに弁当箱を渡した。ミシェルの母、ミシェル、ルイス、そしてサイは食卓に座っていた。食卓の中央には、ビスケットが入った皿が置かれていた。
サイが箱を開けると、中にはきれいなビスケットがたくさん入っていた。
「日持ちするから、賞味期限を心配しなくてもいいわ」とミシェルの母が言った。
「お母さん、そんなに手間をかけなくてもいいのに。僕は数日しか行かないから」とサイが言った。
「お母さんは大変じゃないわ。それどころか、あなたのために作れて嬉しいのよ」と母が言った。
「わあ、美味しい」とルイスがビスケットを食べて言った。
「サイ、持っていきなさい。断ったら後悔するわよ」
「そうだよ。学校の友達も食べた時に、同じことを言ってた」とミシェルが言った。
「どこで買ったのって聞かれたから、母のルミおばさんが作ったって言っただけ」
「わあ、お母さんってここでは有名なの?」とサイが言った。
「まあまあね。みんなお母さんが作ったお菓子が好きなのよ」と母が言った。
「まあ、私たちに対してみんなが優しいわけじゃないけどね」と母は無理に笑った。
「お母さんは今、パンも作っているのよ」と言った。
「本当? 僕も手伝っていい?」とサイが言った。
「あなたにできるの?」と母がおどけてからかうような目で言った。
「もちろん。サイは料理が上手だよ」とミシェルが言った。
「彼のお母さんもパン職人だから、この分野には詳しいんだ」とルイスが言った。
「わあ、ちょうどよかったわ」と母が言った。
「あなたもサイみたいに料理が上手にならないとね、ミシェル」と母は食卓から離れていった。
「興味ない」とミシェルが言った。一方、サイとルイスは母についていった。
台所には、パンが入った大きなボウルがあった。床には、まだ焼いていないパンが入った天板がいくつか置かれていた。
「私たちは普段、たくさんの人に買ってもらえるように、できるだけ魅力的に包装しているの」と母が冷蔵庫を開け、リボンで結ばれたビスケットの袋を見せた。
「僕は何を手伝えばいい?」とサイが言った。
「お母さんと一緒に生地を作れるわ」と母が言った。
「ルイスとミシェルは、焼き上がったものを包装できるわね?」と母が言った。
「私に任せて」とミシェルが言った。
「う、うん。たぶんできる」とルイスが不安そうに言った。
サイと母は一緒に生地を作った。ミシェルとルイスは焼き終わったパンを包装した。ルイスは困った様子で、時々ミシェルに教えてもらっていた。四人は床に座っていた。
「あなたのお母さんはパン職人になってどのくらいになるの?」と母が尋ねた。
「僕の父と結婚してから、パン職人になったんだ。父はよく組織の任務に出ていたから」とサイが言った。
「僕はいつも母についてパンを作ったり料理をしたりしていたから、これ全部できるんだ」
「サイができるなら、ルイスもできるの?」と母がルイスの方を振り向いて尋ねた。
「え、僕は……」ルイスは困惑した。
「僕の母は料理をしないんだ。家には料理人がいるから」とルイスはぎこちなく言った。
「あなたはとても恵まれているわね」とミシェルが言った。
「じゃあ、お母さんは料理ができないの?」と母が言った。
「本当はできるよ。僕のために何度か料理をしてくれたこともある」とルイスが言った。
「ただ、僕の方が母の近くにいたくないんだ」とルイスは小さな声で言った。
***
「僕、帰ったよ」と学校から戻ったルイスが家に入った。
「おかえり、ルイス」とルイスの母がサイのところへ近づいてきた。彼女は仕事用の制服を着ていた。
「お母さんも今帰ってきたの?」とルイスが言った。
「そうでもないわ。少し前には帰ってきていたの」と母が言った。
「さっき少し用事があったのよ」
突然、ルイスが怒った様子を見せた。「ルーシーはどこ?!」
「先に昼ご飯を食べて、それから探した方がいいわ」と母が言った。
「嫌だ! 僕はルーシーと一緒に食べる!」とルイスが言った。
母はため息をついた。「いつもの場所に閉じこもっているわ」
ルイスはすぐに走り去り、母を置いていった。
ルイスは古びたように見える扉を叩いた。「ルーシー? 中にいるの?」
物置の中に隠れていたルーシーは、ただ黙っていた。
ルイスはすぐに中へ入った。「また母に何をされたの?」とルイスが言った。
「何も」とルーシーが言った。
「お母さんは仕事から帰ってきて、ただ疲れているだけみたい」とルーシーが言った。
(きっとまた母に叩かれたんだ)とルイスは思った。
「なのに、ルーシーはそんな乱暴な扱いを受けていいわけじゃない」とルイスは言い、ルーシーの手を引いた。
「昼ご飯を食べよう」とルイスが言った。
「でも、後で母が怒るよ」とルーシーが不安そうに言った。
「怒らないよ。兄さんが一緒にいるから」とルイスは彼女を物置から連れ出した。
「それだけじゃない。いつもルーシーととても仲が良い父も、ルーシーが母に傷つけられている時には何もしない」とルイスは思い出した。ルーシーが父の前で母に叩かれた時、父は悲しそうな目をしながら、うつむいて黙っていることしかできなかった。一方、ルイスはとても怒っていた。
***
(どうして父はいつも、家族の後継者になれないルーシーのことを母が問題にするのを放っておくんだろう)とルイスはぼんやり考えた。
サイと母は天板をオーブンに入れ、ミシェルはまだパンを包装していた。
「ねえ、どうして黙っているの?」とミシェルが言った。
ルイスはすぐに我に返った。「どれを僕がやればいい?」
***
サイと七人の仲間は、本部の前の敷地に立っていた。ルーカス、イワン、ファッタ、ライアンが前にいた。ニコ、ディオン、ハリー、そしてサイが後ろにいた。
彼らの列の右側には、医師の白衣を着た19人が二列で並んでいた。サイの右隣は空いていた。
彼らの左側には、警察の制服を着た人々の列があった。警察の列の隣には、私服の人々が何人かいた。
全員の前には、数枚の紙を読んでいるソフィアがいた。
「それじゃあ、ここにいる人たちはほとんどがまだ下級メンバーで、上級なのは数人だけだから、みんなの任務とその他のガイドラインを読み上げるわ」とソフィアが言った。
「全部聞く必要あるの?」とルーカスが愚痴をこぼした。
「もちろんだろ。僕たちの任務を知っているのか?」とハリーとニコの隣に立っているディオンが言った。
「向こうの人たちを助けるだけだろ?」とルーカスが言った。
「でも、詳しい内容はまだ分からない」とニコが言った。
「僕たちはまだ子供で、大きな任務を任せられないから、食べ物や飲み物を配ったり、環境の掃除を手伝ったり、重要な情報を集めたり、その他いろいろなことをするだけだよ」とイワンが言った。
「その一方で、医師の階級はそこの住民の健康状態や病気を調べ、警察は安全を守ったり、そこの問題を処理したりする」
「一方、警察の列の隣にいる人たちの中には、そこの教育を手伝うアカデミーの教師が何人かいて、残りの人たちも僕たちと一緒に働く」
「わあ、ずいぶん詳しいな」とハリーが言った。
「だから前にいるソフィア姉さんの話をちゃんと聞けって言ってるんだ!」とイワンが苛立って言った。
「ねえ、僕たちちょっとうるさすぎない?」とファッタが言った。
「ここではまだ全然素人なんだぞ」
「大丈夫だよ。医師の列の近くにいるライアンとサイは黙っているから、たぶん大丈夫」とニコが言った。
「でも警察の近くにいる君とルーカスは、さっきからずっと騒いでいるだろ」とファッタが言った。
サイはただ黙っていた。
「もういい! さっさとそこに立て、この頑固者!」とサイは後ろから声を聞いた。
サイは後ろを振り向いた。すると、ラジ兄さんがサイの隣に空いていた医師の列へ押し出された。ラジ兄さんは後ろを睨みながら、腹を立てているようだった。
「え? お兄さんも参加するの?」とサイが小声で言った。
「さあな。悪魔が俺の耳元で囁いて、ここに立てと無理やり俺を連れてきたらしい」とラジ兄さんも小声で言った。
「誰がお兄さんをここに押したの?」サイが後ろを振り向いた。そこには右足を上げているカイがいた。
「蹴ったの?」とサイが言った。
「誰が悪魔だって?」とカイも小声で言った。
「だって、間違ってないんじゃない?」とサイが言った。
「い、いや、そうかもな?」とカイが言った。
「お兄さんは、こういう活動にいつも派遣されて幸運だね」とサイが言った。
「俺はいつも行きたいわけじゃない。誰かに無理やり行かされているんだ」とラジ兄さんが言った。
「お前がいなかったら、誰に俺の仕事をやらせればいいんだ?」とカイが言った。
「働かずに給料をもらう奴め」とラジ兄さんが言った。
「おい! 俺がお前に仕事をやらせたとしても、その分の給料が支払われないんだぞ!」とカイが言った。
「それに、俺がお前を推薦したんだから感謝するべきだろ。そうすれば、この活動の後に金をもらえるんだから」
「俺に金がないとでも?」とラジ兄さんが言った。
「それに、組織からの月々の給料もあるだろ?」
「この頑固者!」とカイが苛立って言った。
「カイ! どうして今来たの?」とソフィアが前から呼んだ。
「早くこっちへ来て!」
「わ、分かった!」カイはサイとラジ兄さんの列の間を走っていった。
「ドン!」
彼はわざとラジ兄さんにぶつかった。ラジ兄さんは腹を立てているようだった。
***
一人の少女が、父親によって大きな家から引きずり出されていた。
「離して! お父さんは何をするの?」少女は父親の手を振りほどこうとしながら言った。
彼女は外へ引っ張り出された。家の敷地には黒い車があり、二人の男が彼女に邪悪な笑みを向けていた。家のテラスには母親もいた。
「これは何? あの人たちは誰?」少女は不安そうに言った。
「まあ、もうこの子に言ったの?」と母親が言った。
「まだだ。先に言っていたら、きっと拒否するから」と父親が言った。
「あなたたちは何をしようとしているの? 変なことをしないで」と少女が言った。
父親はその後、彼女の前にしゃがみ込んだ。「可愛い我が子。私たちと一緒に良い暮らしができて、きっと感謝しているだろう?」
少女は不安そうな顔で、ただ話を聞いていた。
「私たちはいつもお前が欲しがるものを与えてきた。それでもお前は甘えたりせず、謙虚で、好き勝手なこともしなかった」
「本当に良い子だ」と父親は彼女の頭を撫でた。少女の表情は変わらなかった。
「でも、我が子。お前もきっと、私たちがしてきたことに恩返しをしたいと思ったことがあるだろう? 愛情を込めて育ててきたんだから」と母親が言った。
「本当は何が欲しいの?」と少女が言った。
「可愛い子、私たちは借金を抱えているんだ」と父親が言った。
「彼らについて行ってくれるか?」
少女はそれを聞いて驚いた。「あ、あなたたちは私を売るの?」
「最初は……お前をあの人たちに質に入れるだけにしようと、話を持ちかけたんだ」と母親が言い、娘をさらに驚かせた。
「でも彼らはそれを望まず、借金の返済としてお前自身を渡せと言ってきた」
「そ、そんなの駄目!」少女は受け入れられず、悲しそうな様子を見せた。
「私の気持ちを考えてくれないの?」
「借金を返せるだけのお金を持っているんじゃないの?」
「今はない。でも、これから先ならきっとある」と父親が言った。
「その後、あなたたちは私を迎えに来てくれるの?」と少女が言った。
「約束はできない」と父親が言い、少女は落胆した様子を見せた。
「今は私たちの経済状況が良くない。お前が彼らについて行けば、私たち二人だけの生活費を払えばいい」と母親が言った。
「こ、こんなことをするなんて信じられない」と少女は泣きそうになりながら言った。
「おい、旦那さん! いつまで別れをやっているつもりだ?」最初の男、借金取りの男が呼んだ。
「今、彼女を連れて行っていい」と父親は少女を車へ近づけた。
「待って……嫌、お父さん!」と少女が言った。
「イヤァァァァ!」




