第49章:四番街
ドレズは手探りでハンドルを探していたが、誤ってハンドルの近くにあるボタンを押してしまい、彼らの隣のドアが開いた。
ドレズはサイの手を左目から払いのけ、前方に曲がり角があるのを確認すると、慌てて右にハンドルを切った。
全員がそのまま左側のドアの外へ押し出され、崖へと落下した!
ステラ、カイの母親、ヴィオナは恐怖で叫び声を上げ、一方でラジ、カイ、ナツはショックを受けたような顔をしていた。
ミシェルも、はるか下にある地面を見て慌てた様子を見せた。彼女はすぐに右手を上げると、そこに緑色の光が現れた。
突然、はるか下の地面から一本の木が急速に成長した! その巨大な木は勢いよく高く伸び、彼らのいる方向へ向かっていった。
***
「何だこれは?」とミシェルがショックを受けたように言った。彼女とラジ兄さんは、先ほど自分たちが落下したときに生えた巨大な木のほうを見た。その木は彼らからかなり離れた場所にあった。
「さっきのはお前がやったのか?」とルイスもその木を見ながら言った。
「え、反射的にやっちゃった」とミシェルが言った。
「さっきは、私たちを助けられるように、葉っぱが茂った木を生やそうとしただけなの」
「でも、あんなに大きくなるとは思わなかった」と彼女は言った。
「どうやら、お前たちの元素は、状況が厳しくなるほど力を発揮するようになってきたみたいだな?」とラジ兄さんが言った。
「昨日の僕のケースと同じなのかな?」とサイが言った。
「そうだな。おそらくこれからしばらくの間、お前たち二人の元素も、ルイスのように働き続けるだろう」とラジ兄さんが答えた。
「私たちは、元素を使えるようにするために、いつも怖がっていなきゃいけないの?」とミシェルが尋ねた。
「前にも言っただろ。だからこそ、お前たちは中立的な状態で元素を使う練習をする必要がある。そのほうが制御しやすい」とラジ兄さんが言った。
「だが、ここにいる間は、この状況を利用して練習することもできる」と彼は言った。
「あっ、そうだ! 他のみんなはどこ?」とサイが言った。
「そうだな」とルイスが周囲を見回した。
「俺たちはみんなと離れてしまった」とラジ兄さんが、先ほどミシェルが生やした木によって皆が別々の場所へ飛ばされたことを思い出しながら言った。
「じゃあ、これからどうする?」とサイが言った。
ラジ兄さんは目を閉じ、何かを聞いているようだった。
「お前たち、聞こえるか?」と彼が言った。
「何が?」とルイスが言った。
「ここからそう遠くないところに川がある」とラジ兄さんが言った。
「森で道に迷ったら、川の流れに沿って進んだほうがいい。そうすれば、人が住んでいる場所を見つけられる可能性が高いからな」と彼が言った。
「それは初めて知った」とルイスが言った。
「学校で教わらないことも、いろいろ知っておいたほうがいい」とラジ兄さんが言った。
「おい! あれは何だ?」ルイスが一本の木のほうを指差した。そこには恐ろしい顔をした人のような姿が見え、彼らを覗き込んでいた。
「あれって幽霊?」と彼らはラジ兄さんの後ろに隠れながら言った。
「あれは、この街に住んでいる普通の霊的存在だ」とラジ兄さんが言った。
「僕たちを襲ったりしないよね?」とミシェルが言った。
「こちらから先に干渉しなければな」とラジ兄さんが答えた。
「俺から離れるな。どの生き物が俺たちに友好的で、どれが敵なのか分からないからな」と彼が言った。
「分かった」と彼らが答えた。
「さあ、進もう。ここで長く時間を使うわけにはいかない」とラジ兄さんが言った。
「オーケー!」と三人が答えた。
***
カイとステラが川の水面に現れた。二人はしばらく溺れていたため、呼吸が乱れていた。二人は森の中にいた。
「大丈夫か?」とカイが言った。
「ええ、あなたは?」とステラが言った。
「俺は大丈夫だ」とカイが言った。
「岸に上がろう」と言い、川岸へ泳いでいった。
カイは川岸にたどり着き、上へ上がった。そしてステラが上がるのを助けるために手を差し出した。
「水の中に落ちたのが幸いだったね」とステラが言った。
「そうだな」とカイが言った。
「さっきの二人が、また私たちを追ってくると思う?」とステラが言った。
「可能性はある。でも、しばらくは来ないだろう」とカイが答えた。
「崖からここまではかなり距離がある。車を使ったとしても、ここまで追ってくるには時間がかかる」
「それに、俺たちは別々になった。奴らも俺たちを見つけるのに苦労するだろう」と彼が言った。
「あっ、そうだ。ほかのみんなはどこ?」とステラが驚いたように言った。
カイも驚いた。「そ、そうだな。母さんはどこだ?」と周囲を見回しながら言った。
「さっきまで俺の隣に座っていたのに」と彼が言った。
「あなたのお母さんは、ほかのみんなと一緒なんじゃない?」とステラが言った。
その一方で、カイは周囲を見回しながら、何かに気づいたように驚いていた。ステラは不思議そうに彼を見つめた。
「どうしたの?」と彼女が言った。
「こ、ここは……」とカイが言った。
「四番街だ!」
***
「えっ!? 僕たち、四番街にいるの?」とサイが言った。
「そうだ。さっきの二人の会話を聞いていた」とラジ兄さんが言った。彼らは川の近くを歩いていた。
「四番街って、もう滅びたんじゃないの? どうして僕たちをここへ連れてきたんだろう?」とルイスが言った。
「みんなが集まったら、全部話す」とラジ兄さんが言った。
「もう、これもサイの考えの一部なの?」とルイスが言った。
「何のこと?」とサイが言った。
「こんなふうに俺たちをバラバラにすること?」とルイスが言った。
「う、うん……実は、そういうわけじゃない」とサイが頭をかきながら言った。
「さっき、わざと運転手の邪魔をして、手でドアのボタンを押させたんだ。それは成功した」
「車の外へ放り出されて崖へ向かって落ちるのも、僕の作戦だった。ミシェルが僕たちを助けるために力を使うことを期待してね」と彼が言った。
「え? そんなことをしたの? でも、そんなことが起こる可能性なんてなかったじゃない」とミシェルが驚いた。
「お前の賭けも危険だったな」とラジ兄さんが言った。
「でも、本当に起きたでしょ?」とサイが嬉しそうに言った。
「前に森の中で僕が怖がっていたとき、元素を操ることができたっていうラジ兄さんの言葉を思い出したんだ」
「でもミシェルと同じで、僕もあんなに大きな力になるとは思わなかった」と彼が言った。
「さっき、そんなに怖かったのか?」とルイスがミシェルをからかった。
「死が目の前にあるとき、誰だって怖いでしょう!?」とミシェルが怒ったように言った。
「ところで、ミシェルはここで医療の知識も伸ばせるの?」とサイが言った。
「もちろんできる」とラジ兄さんが言った。
「よし! これは絶好のチャンスだ!」とミシェルが言った。
「危険かもしれない森の中にいるなら、そのついでに練習もできる」と彼女が言った。
「どうしてお前たちの能力を伸ばすために、こんなふうに命まで賭けなきゃいけないんだ?」とルイスが言った。
「もっと軽い練習方法を使うべきだよ。練習するためだけにいきなり森へ入るなんて、怖すぎる」とサイが言った。
「前にオーディションのとき、熊と対峙したこともあるんだ」
「みんな、蛇に食べられる感覚なんて知らないだろ?」と彼が言った。
「どうしてお前はまだ生きてるんだ?」とルイスが言った。
「僕に死んでほしいの!?」とサイが怒ったように言った。
「僕、ある理論を聞いたことがある」とルイスが言った。
「マーフィーの法則。何かが起こるのを恐れれば恐れるほど、それが起こる可能性が高くなるっていうものだ」と彼が言った。
「マーフィーの法則のことか?」とラジ兄さんが言った。
「そう! それそれ!」とルイスが言った。
「ルイスの言う通りだ。悪いことを考えすぎるな。今は出口を探すことに集中しよう」とラジ兄さんが言った。
***
「あの場所を知っているのか?」とステラが尋ねた。二人も川沿いの小道を歩いていた。すでに森を抜けていた。
「だいたいはな」とカイが周囲を見回しながら言った。
「俺の昔住んでいた場所へ続いている川だったと思う」と彼が言った。
「まだ覚えているの? すごいね」とステラが言った。
「まだ七年くらい前のことだからな。そんなに昔じゃない」とカイが言った。
「でも……ここまで来ても、まだ他のみんなにも、あなたのお母さんにも会っていないね」とステラが言った。
「そうだな」とカイが落ち込んだように言った。
(母さんが、あの術とやらで無事でいてくれるといいが)と彼は思った。
「あそこがその場所?」とステラが言った。
カイが前を見る。遠くには、いくつかの建物がある場所が見えた。それらは壊れていて、すでに元の形を失っていた。
「そうだ!」とカイが嬉しそうに言った。
「行こう!」とカイが走り出し、ステラも後を追った。
二人は壊れた家々の間を歩き、右や左を見回した。
「それで? ここに来て何の意味があるの?」とステラが言った。
「ここは本当に何もないな」と彼女が言った。
「ラジと他のみんなを待つんだ」とカイが答えた。
「あいつなら川の流れをたどって、ここまで来るはずだ」と彼が言った。
「あなた、あの人のことをよく知っているんだね」とステラが言った。
「ああ。向こうも同じだ」とカイが周囲を見回しながら言った。
「おお! まだある!」とカイが驚いた。
「何が?」とステラが言った。
「俺の家がまだちゃんと建ってる!」とカイが走って三階建ての家へ向かい、ステラも後を追った。
「あなたの家って、魔法みたいだね?」とステラが言った。
「そういうことだ」とカイが言った。
(母さんが何かしたのか?)とカイは思った。彼はそのまま家の扉を開けた。
「あれ、鍵がかかってない」と言いながら中へ入った。家の中はきれいに整っていた。
「何も変わってないな」と言いながらさらに中へ入っていく。一方、ステラは外に立ったままだった。
「電気までまだついている」とカイが点いている照明を見ながら言った。
「どうして入ってこないんだ?」とカイが後ろを振り返って言った。
「い、いや、私は外にいるよ」とステラが言った。
「怖がらなくていい」とカイが外へ出ながら言った。
「俺も外で待つよ」とカイが家の前に座った。
「みんな、いつ着くんだろうね?」とステラも隣に座りながら言った。
「さあな」とカイが言った。
***
「俺たちはもう集落の近くまで来たのか?」とルイスが言った。彼らは川の近くにある小道を速いペースで歩いていた。すでに森を抜けていた。
「俺にもはっきりとは分からない」とラジが言った。
「だが、ここに小道があるのを見ると、近くまで来ている可能性はある」と彼が言った。
「少し休めないの? 僕たち、かなり歩いたよ」とルイスが言った。
「時間を無駄にするわけにはいかないだろ」とサイが言った。
「お前、すぐ疲れるな」とミシェルが言った。
「こんな速さで歩いて、疲れないやつがいるのか?」とルイスが言った。
「そもそも僕たち、どれくらい長く眠ってたんだ? もうこんなに朝になってる」とルイスが空を見ながら言った。
「見つけた」とラジ兄さんが足を止めて言った。
「え? 何を見つけたの?」とサイが言った。ラジ兄さんは、カイとステラが先ほど通ったばかりの、廃墟のある方向を指差した。
「あれが集落!?」と彼らが興奮したように言った。
「そこに人がいるかどうかは分からない」とラジ兄さんが言った。
「え? どうして?」とサイが尋ねた。
「四番街は死んだ街だ。この街は七年前の虐殺によって滅びた」とラジ兄さんが言った。
「だが、このかつての居住区に、俺たちを助けてくれる人がいるかもしれない」と彼が言った。
「よし! もう着いたんだから、そこまで競争しよう!」とルイスが先に走り出した。
「おい! ずるい!」とミシェルが追いかけた。
「待って! 合図すらしてないじゃん!」とサイも追いかけた。
彼らは走って、その廃墟の区域へ入っていった。
「僕の勝ち!」とルイスが言った。
「ずるい!」とミシェルが言った。
「数えてなかったじゃん!」と言った。その一方で、サイはようやく到着した。
「お前たちが遅いだけだ」とルイスが言った。
「お前が悪い!」とミシェルが言った。
「もういいだろ、子供みたいなことするな」とサイが言った。
「私たちはまだ子供じゃん」とミシェルが言った。
「でも、一番年上のこいつが一番子供みたいだけどね」とミシェルがルイスを指差して言った。
「ゴン!」
「どういう意味だ、あぁ?」とルイスが怒りながらミシェルの頭を叩いた。
「聞こえた?」とステラが言った。
「今の、あの三人の声だよな?」とカイが言った。
「ちゃんと合図があったら、僕が絶対に勝ってた!」とサイが言った。
「一番街では、僕は子供の中で一番速いランナーだったんだ」と彼が言った。
「でもさっき負けただろ!」とルイスが言った。
「ゴン!」
「お前、ずるいぞ!」とサイがルイスの頭を叩いた。
「お前たち、喧嘩するつもりか?」とラジ兄さんが彼らの近くまで来て言った。
「全部ルイスが悪い!」とサイが言った。
「なんで俺なんだよ?」とルイスが言った。
「これ以上うるさくするなら、お前たちの耳を赤くするぞ」とラジ兄さんが言った。
「ミシェルにもやってよ、兄さん!」とサイが言った。
「さっきは俺たち二人だけだっただろ」と彼が言った。
「ゴン!」
「もう黙ってるってば!」とミシェルがサイの頭を叩いた。
「おーーい! お前たち、もう着いたのか?」と声が聞こえた。彼らは声のほうを振り向いた。カイとステラが彼らのほうへ走ってきた。
「カイ兄さん! ステラ兄さん!」とサイが言った。
「やっぱりお前たちもここへ来ると思った!」とカイが言った。
「この辺りを知っているのか?」とラジ兄さんが言った。
「ここは俺の家のある場所だ。よく覚えている」とカイが言った。
「俺たちはさっきから俺の家でお前たちを待っていたんだ。これで全員集まったから、一緒に帰る方法を探せる」とカイが言った。
「兄さんの家がここにあるの?」とサイが言った。
「ああ! 寄っていけよ」とカイが言った。
「お前の家、まだ建ってるのか?」とラジ兄さんが言った。
「傷一つついてないよ」とステラが言った。
「行こうぜ。お前、この友達の家に一度も寄ったことないだろ?」と彼女が言った。
「お互い様だ」とラジ兄さんが言った。
「でも俺、いつもお前を邪魔したり、基地でお前の部屋のドアを叩いたりしてるだろ? それを寄ったってことにしようぜ」とカイが、部屋で読書をしていたラジに向かって瓶を投げたことや、ラジの部屋のドアを蹴ったことを思い出しながら言った。
「寄ったときに俺の物までなくなってたのは、それも含まれるのか?」とラジ兄さんが、カイが自分のコンピューターのマウスや充電器を借りたことを思い出しながら言った。
「い、いやぁ……もう水に流してくれよ」とカイが気まずそうに言った。
「水に流す? お前が俺のコンピューターを壊したときもか?」とラジ兄さんが、穴の開いたコンピューターの画面を思い出しながら言った。だが、カイは気まずそうに笑うだけだった。
「おい、お前のコンピューターは組織が交換してくれただろ」とカイが新しいコンピューターを思い出しながら言った。
「でも、全部のデータを新しいコンピューターに移すのに苦労したんだぞ!」とラジ兄さんが言った。
「なんでまた喧嘩してるの?」とサイが言った。
「兄さん! 兄さんの家はどこ?」と彼が言った。
「ここから遠くない。俺について来い」とカイが彼らを案内するように歩き始めた。
彼らはカイの家の前に着いた。「ここが俺の家だ!」とカイが言った。
「わあ、まだしっかり建ってるね?」とルイスがその家を見ながら言った。
「ナツ兄さんたちは、まだ着いてないのか?」とラジ兄さんが言った。
「俺は、あいつらがここまで来るかどうかすら分からない」とカイが言った。
「少しだけ電波があるよ。電話してみる?」とステラが言った。
「本当か? かけてみてくれ」とカイが言った。
「分かった」とステラが家の前に座りながら言った。他のみんなも一緒に座り、ラジ兄さんは一番右端に座った。
「出ない。電波のない場所にいるのかな?」とステラが言った。
「うーん、嫌な予感がする。何か悪いことが起きてるんじゃないかと怖い」とカイが言った。
「悪いことを考えるなって言っただろ。それが本当に起きたら笑えないぞ」とラジ兄さんが言った。
「だが、それでも警戒はしておくべきだ」とラジ兄さんが言った。
「じゃあ、周りを見張っててくれよ」とカイが言った。
「なんで俺だけなんだ?」とラジ兄さんが言った。
「俺たちは長く歩いて疲れてるからさ」とカイが冗談めかして言った。
「俺だって疲れてると思わないのか?」とラジ兄さんが周囲を見回しながら言った。
彼らは気づいていなかった。遠く離れた場所から、ロジャーとドレズが見えていた。その二人と一緒に、消音器付きの拳銃を持った男がいた。彼はその拳銃を彼らに向けていた。
「ちゃんと撃てよ、カストル」とロジャーが言った。
「了解」とカストルという名の男が言った。
彼は拳銃を彼らへ向けた。彼らはまだ気づいていなかった。
「バン!」




