第47章:誘拐
「今日は俺の掃除当番を代わってくれ」と、サイがまだ鞄を持ったまま教室に入ってきたばかりの時、ルーカスが言った。
「なんで僕が?」とサイは困惑した。
「忘れたのか? あれはもう約束したことだぞ」とルーカスが言った。
「この前、お前は俺との勝負に負けた。そして、負けた方が勝った方の掃除当番を代わるっていう約束があっただろ」と彼が言った。
「でも、僕はそれに同意してない!」とサイは納得できない様子で言った。
「そうか? 破るつもりか?」とルーカスが言った。教室中が二人に注目し始めた。サイは緊張した様子だった。
「わ、分かった」とサイは教室の中へ歩いていき、ハリーの隣の自分の席に鞄を置いてから、教室の後ろにあるほうきを取った。
「ちゃんと掃けよ!」と、ルーカスは自分の席に座ったまま気楽に言った。
「あ、そういえば、僕も今日は掃除当番だった」とハリーが席から立ち上がった。
「なんでお前まで掃除するんだ? 今日はただで掃除してくれる奴がいるんだぞ」とルーカスが自分の席から言った。
「で、でも……」
「わざわざ忙しくする必要はない。ゆっくりしてろ」とルーカスがハリーの言葉を遮って言った。
「お、オーケー」と、申し訳なさそうなハリーは再び自分の席に座った。
一方、ライアンはただ気まずそうな表情でサイの方を見ていた。
***
サイはちり取りに入ったゴミとほこりを、廊下、または教室の前にあるゴミ箱へ捨てた。
サイは疲れたようにため息をついた。「こんなに大きな教室を僕一人で掃除しなきゃいけないの?」と言った。そして教室の中へ歩いて戻った。
「おい、これは何だ?」とルーカスの声が聞こえた。サイはそちらを振り向き、突然驚いた。
ルーカスは自分の鞄を開け、昇格証明書を手に持っていた。
(しまった! 出しておくのを忘れてた!)
「じゃあ、昇格したら証明書をもらえるんだ?」とハリーが言った。
「任命式もあるの?」とニコが言った。
「それに触るな!」サイは掃除道具をすべて落とし、ルーカスの方へ走った。
「そこで止まれ!」とルーカスが言い、サイを立ち止まらせた。
「近づいたら、この紙を破るぞ」とルーカスはそれを破ろうとした。
「やめろ!」とサイが言った。
「じゃあ、俺たちに見せてくれよ」とルーカスは再びその紙を見た。
ライアンを除いて、全員がその証明書を見るためにルーカスへ近づいた。ライアンはそのまま自分の席に座っていた。
「全員のメンバーがこれを持ってるのか?」とイワンが言った。
「写真まである」とニコが紙の下の方にあるサイの写真を指差した。
「いつ撮影したんだ? なんでサイが写真を持ってるんだ?」とニコが言った。
「たぶん、先に証明書をもらって、それから写真を撮ったんじゃない?」とファッタが言った。
「わあ、僕もこれが欲しいな」とディオンが言った。
「こんな一枚の紙の何が面白いんだ?」とルーカスが言った。サイはそれを聞いて腹を立てた。
「見られているのはその紙の素材じゃない。それを手に入れた人の努力と成功だ」とライアンが後ろを振り向いて言った。
「なんでお前まで口を出すんだ? そこで黙ってろ!」とルーカスが言った。ライアンは眉をひそめ、再び前を向いた。
「おい、聞けよ」とルーカスがサイに言った。
「俺たちはもう、俺たちのコーチと話し合った。どうやら、俺たちももうすぐお前みたいに昇格するらしい」と彼が言った。
「そうか、それならよかったな」とサイはまだ腹を立てた様子で言った。
ルーカスも腹を立てた様子だった。(なんでこいつは普通にしてるんだ? 感情を煽られないのか?)
「もう見ただろ? 早く返して」とサイが手を伸ばした。
「返す?」とルーカスは意地悪く笑った。
「やらない!」彼はサイの証明書を破ろうとした。
「やめて!」とサイが慌てて言った。
「やめろ」とライアンが言い、ルーカスを止めた。
「今度はなんだ?」とルーカスが苛立って言った。
「これは何ですか?」と、いつの間にか教室の前にいた女教師が言った。
「せ、先生?」と彼らは驚いて言った。
「あなたたち、喧嘩しているの?」と女教師が言った。
「ち、違います」とルーカスがぎこちなく答えた。
「僕たちは……僕たちはただ話していただけです」と彼が言った。
「話す時間は終わりです。早く座りなさい」と女教師が言った。
「はい!」と彼らが言った。ルーカスはすぐにサイの証明書を自分の机に置き、サイは急いで掃除道具を教室の後ろへ戻した。
***
「遊ぶ時間はある?」と、八人で学校の校庭を歩いて帰っている時、ハリーがサイに言った。彼ら以外にも、何人かの生徒が校庭を歩いていた。
「遊ぶ?」とサイが言った。
「そう、僕たちは放課後、ほとんどいつも遊んでるんだ」とライアンが言った。
「ご、ごめん」とサイは申し訳なさそうに言った。
「一緒に行きたくないわけじゃないけど、まだ練習の予定があるんだ」と彼が言った。
「また練習?」とハリーが残念そうに言った。
「チッ! ずっと練習して何の意味があるんだ?」とルーカスが言った。
「お前はただ真面目ぶってるだけだ。俺たちと付き合うのは合わないな」と彼が言った。サイはそれを見て腹を立てた。
「問題を大きくするなよ」とイワンが言った。
「別の日なら時間ある?」と彼がサイに言った。
「誘っても無駄だ。こいつには無理だ」とルーカスが彼らより速く前へ歩いていった。
「じゃあ、俺たちは先に行くな」とハリーが言った。彼らは全員ルーカスについて歩いていった。
「じゃあな、ガキ! お前の練習が大変になることを願ってるよ!」とルーカスがからかった。
サイは腹を立てた。「くそっ!」
***
「ドン!」
サイは手から光を出すことに成功し、その光が缶へ飛んでいって爆発した。彼らは再び午後に練習していた。
サイは腹を立てた様子だった。「もう一回!」と言って、再び攻撃しようとした。
「いったん止めろ」とラジ兄さんが水の入ったボトルを投げた。サイはすぐにそれを受け取った。
「怒ってるように見えるぞ」と、飲み物のボトルを持ちながら座っていたルイスが言った。
「何か問題でもあるのか?」とラジ兄さんが言った。
「何もない」とサイは腹を立てた様子で言い、それからルイスの隣に座った。
「ただ、まだ元素をうまく操れないことに腹が立ってるんだ」と、彼は水を飲みながら言った。
「まだ習い始めたばかりだろ」とラジ兄さんが言った。
「私なんて、まだまったく進歩してないんだから、感謝した方がいいよ」とミシェルが彼らの前に座りながら言った。
「そんなに悲観的になるな」とラジ兄さんが、レオンさんがいつも座っている石に座りながら言った。
「サイ、感情を持たずにあの缶を攻撃してみろ」とラジ兄さんが言った。
「え? どういうこと?」とサイは困惑して彼を見た。
「やってみろ」とラジ兄さんが言った。
サイは立ち上がり、先ほどの缶の前まで歩いた。サイは息を吐き、もう腹を立てている様子ではなかった。
「出ろ!」彼は缶に向かって手のひらを押し出したが、何も起こらなかった。
「え?」サイは困惑した様子だった。ルイスとミシェルも同じだった。
「どうしたんだ?」彼は手のひらを押し出してみたが、何も出てこなかった。
「どうして急にできなくなったの?」とミシェルが言った。
「それは、お前の感情が安定しているからだ」とラジ兄さんが立ち上がって言った。
「安定してるってどういうこと?」とサイが言った。
「さっきからお前を見ていた。怒った気持ちで攻撃した時、それが手から元素を出すきっかけになっていた」とラジ兄さんが言った。
「じゃあ、攻撃するためにはずっと怒っていないといけないの?」とサイが言った。
「逆だ。普通の状態でも攻撃できるように努力しなければならない」とラジ兄さんが言った。
「どうやってやればいいの?」とサイは自分の手のひらを見ながら言った。
「だからこそ、お前が努力しなければならないんだ」とラジ兄さんが言った。
「分かった、やってみる!」とサイが真剣に言った。
***
「みんな、君たちのためにおやつを持ってきたわ」と、カイの母親が医務室にやって来て言った。
「わあ! ありがとうございます、おばさん!」部屋にいた人たちは、ビスケットが入った籠を置いたカイの母親の周りに集まった。
「たくさん食べてね。あなたたちのために特別に作ったのよ」とカイの母親が言った。
「カイのお母さんが作ったお菓子はやっぱり最高だよ」と、十代の少年の一人が言った。
ソファに横になり、本で顔を隠していたカイは、その本を顔から持ち上げ、嫌そうな目つきで母親をちらりと見た。
(なんでこいつはここに来たんだ?)
その人だかりの中には、オーロラ先生、ソフィア、ステラ、ヴィオナ、そして何人かの十代のメンバーもいた。
(医者の階級のメンバーだけじゃない。警察やボランティアのメンバーの心までつかんでいる)
「カイ、なんでそんなところにいるの?」とオーロラ先生が呼びかけた。ステラとヴィオナはカイの方を振り向いた。一方、ソフィアはカイの母親が作ったビスケットを食べようとしていた。
「眠いんだ」とカイは再び本で顔を隠した。
母親はただ悲しそうな目で彼を見つめることしかできなかった。
(あの時、六番街から帰ってきてから、俺に馴れ馴れしくしなくていいって頼んだ)
(幸い、あいつは言うことを聞いてくれた)
「カイがこんなに優しいお母さんを持っていて羨ましいな」とヴィオナがビスケットを一枚食べながら言った。
「お姉さん、自分のお母さんが優しくないみたいな言い方だね」と、隣に座っていたステラが言った。
「だいたいそんな感じ」とヴィオナが答えた。
「じゃあ、私たちもおばさんを私たちのお母さんだと思ってもいい?」とステラがカイの母親に言った。
「おい、お前、恥ずかしくないのか?」とヴィオナが注意した。
「もちろんいいわよ。どうしてダメなの?」とカイの母親が言った。
「やった! 聞いた、お姉ちゃん?」とステラがヴィオナに言った。
「気に入ったみたいね? ずいぶん早く食べ終わったわね」と、籠がもう空になっているのを見てカイの母親が言った。
「ありがとうございます、おばさん!」と全員のメンバーが言った。
「それじゃあ、私はもう帰るわね。勉強を頑張ってね?」とカイの母親が言った。
「カイ、もう暗くなってきたけど、お母さんを家まで送っていける?」とオーロラ先生が言った。カイは答えず、横になったままだった。
「どうやらもう寝てしまったみたいね。私一人で帰るわ」とカイの母親が言った。
「僕が送ります、おばさん」とステラがソファから立ち上がって言った。
「私も一緒に行く」とヴィオナが言った。
「ありがとう」とカイの母親が言った。その一方で、カイは顔から本を持ち上げ、二人をちらりと見た。
***
「さっき寝てたんじゃなかったの?」とステラが言った。ステラ、ヴィオナ、カイ、そしてカイの母親は、夜の静かで暗い道を一緒に歩いていた。
「もう夜だし、君たちについて行っても悪くないだろ」とカイが言った。
「まさか、さっき寝たふりをしてたの?」とヴィオナが言った。
「ただ横になっていただけだ」とカイが言った。
「ところで、お姉ちゃん、外に出ても大丈夫なの?」とステラが言った。
「ナツ兄さんにはまだ言ってないんでしょ?」と彼女が言った。
「言ったら、許してくれないもの!」とヴィオナは腹を立てた様子で言った。
「それなら、無理してお母さんを送らなくてもいいわ」とカイの母親が言った。
「大丈夫だよ、おばさん。たとえあいつが怒ったとしても、何について怒るんだ?」とヴィオナが言った。
「俺に逆らうほど大胆になったことについてだ」と、ヴィオナの隣から誰かの声が聞こえた。
「え?」ヴィオナがそちらを振り向いた。
「トン!」額を指で弾かれた。
「痛っ!」ヴィオナは額を押さえた。
「い、いつからここにいたの?」とカイが驚いて言った。
「俺はラジとサイを探しに出ていたんだ」とナツが言った。
「昨日からあいつらは遅く帰ってきている。本来、許可がなければ遅く帰ってはいけないのに」と彼が言った。
「でも、ここでお前たちに会った」と彼はヴィオナをちらりと見ながら言った。
「何よ?! 怒るつもり?!」とヴィオナが腹を立てて言った。
「間違っているなら、正しいと思うな」とナツが言った。
「そんなにきつく言わなくてもいいでしょ!」とヴィオナが言った。
「今回が初めてだろ? 泣き言を言うな」とナツが言った。
「泣き言ってどういう意味?!」とヴィオナが言った。
「おいおい、もういいだろ」とカイが言った。
「お前たちは本当に仲が悪いな?」と彼が言った。
「え? あれはラジと他のみんなじゃない?」とカイの母親が指差した。
ナツが振り向いた。「ああ、そうだ。あいつらだ」
四人は一緒に歩いていた。彼らはまだカイたちから遠く離れていた。
「どうして僕の元素は制御できないんだ? 出たり出なかったりする」とサイが言った。
「おそらく、お前が本気じゃないんだろう」とラジ兄さんが言った。
「僕は本気だよ!」とサイが言った。
「それじゃあミシェルは? まだできないのか?」とラジ兄さんがミシェルに言った。
「で、できない」とミシェルが言った。
彼女は人差し指を見つめた。(ラジ兄さんが僕に指から元素を出してみろと言った時でさえ、それもまったく結果が出なかった)
(今の私にできることは、治癒能力のために医学について学ぶことだけ)
「え! 見て! カイ兄さんたちがいる」とサイが指差した。彼らは足を止めた。
「おーい! お前たち、どこから来たんだ?」と、少し離れているためカイが少し大きな声で言った。
「お前たちもどこへ行くんだ?!」とサイが言った。
「用事があるんだ!」とカイが言った。彼らは気づいていなかったが、後ろから一台の長い黒い車が彼らの方へ走ってきていた。
「おい! 早く帰れ! 罰を受けたいのか?」とナツが言った。
「はい、先生!」とサイが言った。ラジはその車の存在に気づき、真剣な目でそれを見つめていた。
「もういいだろ、早く行こう。俺たちもすぐに戻らないといけないだろ?」とカイが言った。
突然、その車がカイの母親の近くで止まった。中央のドアが開き、素早く一人の男がカイの母親を車の中へ引き入れた。
ラジたちは驚いた。
「母さん!」カイはすぐに母親の手をつかんだが、彼も一緒に車の中へ引き込まれた。
「まずい!」ラジはすぐにその車の方へ走ったが、車は彼の横を通り過ぎていった。
「さっきのは誰だ? 早く追え!」とナツが言った。彼らはすぐにその車を追って走り始めた。




