第44章:エレメント
「せんせーい!」サイはウィルダネスの丘にある大きな岩に座っていたレオンさんのところへ走っていった。レオンさんは彼のほうを振り向いた。
「せ、先生……すみません……」とサイは彼の前で立ち止まり、息を切らしながら言った。
「遅れました……」と彼は疲れた様子で言った。
レオンさんは立ち上がった。「お前、昇格したいのか、したくないのか?」と彼は言った。
「も、もちろんしたいです、先生」とサイは言った。
「俺だって、お前をすぐここへ呼ぶための連絡方法が分からなかったんだ」とレオンさんは言った。
「これだ」とレオンさんは一枚のリネン紙をサイに渡した。
「これは何ですか?」とサイはそれを受け取りながら言った。
「それはお前のボランティア認定証だ」とレオンさんは言った。
サイはその紙を見た。そこには彼の名前が書かれていた。
「わあ、こんなに簡単なんですね?」とサイは言った。
「また試験があるのかと思ってた。まさかそのまま認定証をもらえるなんて」
「俺がお前を評価したのは訓練だけじゃない。ボランティアとしてのお前の行動も評価した」とレオンさんは言った。
「例えば、あの前回の試験や、昨日の六番街での災害だ」と彼は言った。
「そしてこれからは、他のボランティアたちと一緒にソフィアから訓練を受けることになる」
「え? もう先生からは教えてもらえないんですか?」とサイは言った。
「お前が望むなら、もちろんできる」とレオンさんは答えた。
「もちろんお願いします!」とサイは言った。
「そうだ、そういえばまだ昇格祝いのプレゼントを渡していなかったな?」とレオンさんは言った。
「何のためですか? いりませんよ、先生」とサイは言った。
「これを受け取れ」とレオンさんは長方形の箱を投げた。サイは両手でそれを受け取った。
「うわぁ……」サイはそれを持ったまま、すぐに震えた。それは携帯電話の箱だった。
「こ、これは……」とサイはショックを受けて言った。
「これがあれば、お前が連絡を取りやすくなる」とレオンさんは言った。
サイはまだ驚いた様子で、言葉が出なかった。
「なんでそんなに驚いているんだ?」とレオンさんは言った。
「僕……持ったことがなくて……」とサイは言った。
「まさか、こんなに簡単に手に入れることになるなんて?!」とサイは箱を上に掲げながら言った。
「お前がラジからエレメントを教えてもらえることが、どれだけ嬉しいかに比べれば、まだ大したものじゃないと思うぞ」とレオンさんは言った。
「はい! それはものすごいプレゼントです!」とサイは言った。
「そうだ、先生、ありがとうございます」とサイは言った。
「どういたしまして。変なことには使うなよ」とレオンさんは言った。
「変なことって、どんなことですか?」とサイは言った。
「変なことって……例えば何だろう?」とレオンさんは言った。
「とにかく、悪いことには使うな」とレオンさんは言った。
「了解です、先生!」とサイは敬礼した。
「よし、俺は先に行く。他のメンターたちと用事があるんだ」とレオンさんは歩き去った。
「じゃあねー、せんせーい!」とサイは言った。
それから彼は箱を見つめた。「どうやって使うんだろう?」と彼は言った。
「そうだ、まずはルイスと連絡を取れるようにならないと」
***
本部の夜……
「兄ちゃん! 兄ちゃん!」サイは図書室の机で本を読んでいるラジ兄ちゃんのところへ走っていった。ラジ兄ちゃんは彼のほうを振り向いた。
「兄ちゃん、これ、どうやってメッセージを送るの?」とサイは自分の携帯電話を見せながら言った。
ラジ兄ちゃんはその携帯電話を受け取り、困惑した様子で画面を見つめた。
ルイスから大量のメッセージが送られていた。
ルイス
Hey! 読むだけにしないでよ!
なんで返事しないの?
もしもし! そこにいるの?
文字を打つのが苦手なの?
返事するのにそんなに時間がかかるわけないだろ
サイ! 返事しろ!
一方、メッセージを入力する場所には、「こんにちは?」とだけ書かれていた。
「どうしてお前がこれを知らないんだ?」とラジ兄ちゃんは髪をかき乱しながら言った。それから送信ボタンを押した。
「できた」と彼は言って、携帯電話をサイに返した。
「それだけ?」とサイは困惑して言った。
「メッセージの送り方を知らない変な奴なんて、どこの誰だ?」とラジ兄ちゃんは言った。
「僕?」とサイは言った。
「もういい」とラジ兄ちゃんは言って、再び本を読み始めた。
「兄ちゃん、僕も兄ちゃんみたいにできたよね?」とサイは言った。
「どういう意味だ?」とラジ兄ちゃんは言った。
「兄ちゃんは昔、一年間だけですべての段階を終えたんだよね?」とサイは言った。
「どうやらお前は俺より早く訓練期間を終えたみたいだな」とラジ兄ちゃんは言った。
「え? 本当?」とサイは言った。
「お前は訓練期間を、だいたい一か月くらいしか受けていない」とラジ兄ちゃんは言った。
「わあ、僕ってけっこうすごいんだね?」とサイは素直に言った。
「今度は僕も兄ちゃんみたいに医者の段階に進むんだよね。僕がどの専門科を選ぶのか、兄ちゃんは気にならない?」とサイは興奮した様子で言った。
「何だ?」とラジ兄ちゃんは言った。
「精神科」とサイは言った。
「精神科? どうして?」とラジ兄ちゃんは言った。
「本当は心理学者のほうにもっと興味があるんだけど、それは医者には含まれないから、もっと上の段階を選ぶことにしたんだ」とサイは言った。
「その知識を理解できれば、自分自身や他の人を理解できるようになりたいんだ」とサイは言った。
「目的はいいじゃないか」とラジ兄ちゃんは言った。
「ところで、兄ちゃんは何の専門科に入ったの?」とサイは言った。
「俺はどの専門科も選んでいない」とラジ兄ちゃんは言った。
「え? どうして?」とサイは言った。
「一つの病気だけに集中する時間がないし、俺はたくさんの病気と、その対処法を学ぶことのほうに興味がある」とラジ兄ちゃんは答えた。
「それでも、ロッキーさんは何でもいいから専門科を取るように勧めてきた。とにかく何か一つあればいいってな」と彼は言った。
「兄ちゃんは取りたいの?」とサイは言った。
「言われた通りにするだけだ。別に悪くないだろ?」とラジ兄ちゃんは言った。
「でも、最近になって神経科の専門を取ろうと思っている」とラジ兄ちゃんは言った。
「どうして神経科なの?」とサイは言った。
「ポリオは神経系、特に運動神経を侵す病気だ」とラジ兄ちゃんは言った。
「ポリオウイルスは筋肉の動きを制御する神経細胞を攻撃して損傷させることがあり、その結果、筋力低下や麻痺、さらには呼吸不全を引き起こすことがある」
「神経科の専門医、つまり神経内科医は、ポリオを含む神経系に関係する病気を扱う専門知識を持っているから、ポリオにも対応できる」
「ポリオの患者に対して、診断、治療、リハビリテーションを行うことができる。だから俺が神経科を選ぶ明確な理由があるんだ」
「兄ちゃんって、何かを説明するときいつも長々と話すよね?」とサイは言った。
「分からなかったか?」とラジ兄ちゃんは言った。
「分かったよぉ」とサイは言った。
「僕もたくさんの知識を持てば、兄ちゃんみたいに何かを説明できるようになるかな?」と彼は言った。
「できるさ。勉強する気があるならな」とラジ兄ちゃんは本を読みながら言った。
「そういえば、明日は僕たち四人でエレメントを勉強するんだよね?」とサイは言った。
「ああ、ウィルダネスの丘でな」とラジ兄ちゃんは答えた。
***
「エレメントは八種類もあるの? 多いな」とルイスは、ウィルダネスの丘にいるときに言った。ラジ兄ちゃんは座って話を聞いている彼らの前に立っていた。
「それで? お前たちはどれを選ぶ?」とラジ兄ちゃんは言った。
「え? 選べるの?」とルイスは言った。
「僕は最初から決めてたよ」とサイは言った。
「光のエレメントを勉強したい」と彼は意気込んで言った。
「光か? 少し難しいぞ」とラジ兄ちゃんは言った。
「どうしてそれを選ぶんだ?」と彼は言った。
「ただ興味があるだけ。僕にとって、光という言葉は良い意味を持っていると思うから」とサイは答えた。
「俺は、火のエレメントを勉強したいかな」とルイスは言った。
「理由は?」とラジ兄ちゃんは言った。
「ただ興味があるだけ」とルイスは答えた。
「それに、火のエレメントは僕の好きな武器、つまり銃器である拳銃にすごく合っているから」とルイスは長銃身の拳銃を持ちながら言った。
「それは後でお前たちの武器を作るのに合っている」とラジ兄ちゃんは彼らの前に座りながら言った。
「武器を作ることなんてあるの?」とルイスは言った。
「必ず作らないといけないの?」とミシェルは言った。
「必須ではない。でも、作ったほうがいい」とラジ兄ちゃんは言った。
「武器はエレメントそのものから作ることもできるし、お前たちの武器をエレメントで強化することもできる」と彼は言った。
「それで、お前は何を選ぶ?」とラジ兄ちゃんはミシェルに言った。
「私は……」とミシェルは考えた。
「自然のエレメントを選ぼうかな」とミシェルは言った。
「理由は?」とラジ兄ちゃんは言った。
「能力の範囲が広いから。それに、医学も一緒に学べるんだよね?」とミシェルは言った。
「お前の選択もいいな」とラジ兄ちゃんは言った。
「それで、どこから始める?」とルイスは言った。
***
「これが第一歩だ。お前たちは集中して、そのエレメントが自分の体から力として出てくるところを想像する必要がある」とラジ兄ちゃんは彼らの後ろに立ちながら言った。
サイ、ルイス、ミシェルは横一列に並んだ。それぞれの前には、缶が置かれた机があった。
「つまり、出てくるエレメントは想像ってこと?」とサイは言った。
「俺が言っている想像というのは、そのエレメントを出すための試みだ。空想という意味じゃない」とラジ兄ちゃんは言った。
「お前たちの課題は、エレメントを出して、目の前の缶を攻撃すること。それだけだ」とラジ兄ちゃんは言った。
「それだけ?」とサイは言った。三人は前を向き、缶が置かれている方向を見た。
三人は缶に向かって手のひらを向けた。
サイは目を閉じた。うまくやるのに苦労しているようだった。
(集中……)とサイは心の中で思った。
(想像する……)
ミシェルも苦労している様子だった。
一方、ルイスは落ち着いていた。「集中して、そして想像する」
突然、オレンジ色の光が彼の手から出て、缶の方向へ飛んでいった。それは缶を貫き、そのまま地面へ飛んでいった。
「ドカーン!」
サイとミシェルはものすごく驚いて反射的に目を開き、一方でラジ兄ちゃんは少し驚いた様子だった。




