第24章 また社会性の試験
サイは家々の屋根を飛び越えながら、全速力で走っていた。
一方、全身黒ずくめの服を着た監督官は、サイを追い続けていた。
サイは一つの屋根から別の屋根へと飛び移り、とてもスムーズにそれをこなしていた。
(もうあの時みたいに、うっかり地面に落ちるようなことはしない。)
サイは心の中で思った。
そして、さらに走る速度を上げた。
「なかなかやるじゃないか。」
監督官もまた、走る速度を上げた。
***
「またお前に依頼が来ている。」
ロッキーさんは机に座ったまま、向かいに座っているラジ兄に一枚の紙を差し出した。
ラジ兄はその紙の内容を読んだ。
「講演者?」
「そうだ。来年、あるセミナーに招待されて、ポリオという病気について講演してほしいそうだ。」
ロッキーさんは言った。
「どうして俺なんだ?」
ラジ兄は尋ねた。
「ポリオはもうほとんど存在しない病気だから、詳しく知らない人が多い。一方で、お前はこの病気について非常に幅広い知識を持っている。」
ロッキーさんは言った。
「それは、俺がその病気に襲われている第三の町の出身だからか?」
ラジ兄は尋ねた。
「その通りだ。」
ロッキーさんは答えた。
「どうして俺にこんな話を持ちかける?」
ラジ兄は尋ねた。
「俺が断るって、もう分かってるんだろ?」
「分かっている。だが、一度考えてみろ。」
ロッキーさんは言った。
「今回の話は今までとは違う。お前が参加すれば、支払われる報酬はかなり大きい。」
「それに、その依頼を受ければ、お前の町を助けることもできる。」
ラジ兄はそれを聞いて、少し驚いた。
「実際、それはお前が一人で第三の町を救おうとするよりも、ずっと効果的だ。」
ロッキーさんは言った。
ラジ兄は何も言わず、そのことについて考えていた。
その間、ロッキーさんはラジ兄の答えを待っていた。
「だが、俺はお前がそれを受けることを勧めているわけじゃない。」
ロッキーさんは言った。
ラジ兄は不思議そうに彼を見つめた。
「昔から、お前は自分のところに来る依頼を、理由を言わずにいつも断っている。」
「だが、俺はお前の決断を尊重している。お前が第三の町の安全を考えているからこそ、断っていることも分かっている。」
ロッキーさんは言った。
ラジ兄はしばらく黙った。
そして、下を見つめた。
「第三の町は、ただの目立たない普通の町だ。」
ラジ兄は言った。
「十八年前の襲撃は、ヒドゥンソウルを持つ人間を探すために行われた。でも、奴らはそれがただの伝説だと信じて、再び去っていった。」
「俺はヒドゥンソウルを信じてはいない。でも、外の人間が今でもそれを信じていることは知っている。」
「奴らが俺たちを二度と襲わなかったのは、第三の町を襲っているポリオのせいで、もう誰もその能力を持っていないと思っているからだ。」
ラジ兄は言った。
「でも、もし俺が目立って、この国の重要な人間たちの目に留まるようなことになれば、危険にさらされるのは俺だけじゃない。第三の町の住民たちも危険にさらされる。」
ラジ兄は言った。
ロッキーさんは驚いた。
「どういう意味だ?」
「奴らから見れば、俺たちは病気によって少しずつ消えていくただの町の住民だ。だから、もう一度ヒドゥンソウルを探そうとする理由なんてない。」
「でも、もし奴らが、俺が今でも健康に成長していることを知ったら、俺を狙う。そして、また第三の町を襲うことになる。」
ラジ兄は言った。
「じゃ、じゃあ、それがお前の理由なのか?」
ロッキーさんは言った。
「だから、報酬がどれだけ大きくても、俺は……。」
「コンコンコン。」
ドアをノックする音が、ラジ兄の言葉を遮った。
「入れ。」
ロッキーさんは言った。
ラジ兄は再び黙り、下を見つめたままだった。
ステラが一枚の紙を持って部屋に入ってきた。
そして、ロッキーさんのところへ歩いて行った。
「書類の記入は終わりました。これから私はどうすればいいですか?」
ステラはそう言って、ロッキーさんに紙を渡した。
「警察部門の仕事をしたいんだろ? ちょうど一つ仕事が足りていないんだ。」
ロッキーさんは書類に目を通しながら言った。
「お前は試験を受けなくてもいいだろう。お前の実力はもう分かっている。」
「では、私はもう訓練指導員になったんですか?」
ステラは尋ねた。
「ああ。」
ロッキーさんは答えた。
「よかった。ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。」
ステラは言った。
ラジ兄はステラの方を向いた。
すると、ステラもラジ兄を見てすぐに驚いた。
「ラジ? 本当にあなたなの?」
ステラは言った。
ラジ兄は再び下を向いた。
「本当にラジなの? わあ、私たち、ずいぶん長い間会ってなかったよね?」
ステラは言った。
「ステラ、お前が行ってからまだ半年しか経ってない。」
ラジ兄は言った。
「あなたはいつも私の名前を呼ぶだけ! 半年は長いんだからね!」
ステラは言った。
「ラジがお前を姉さんと呼ぶなんて期待するな。カイに対してもそうだからな。」
ロッキーさんは紙の山から何かを探しながら言った。
「じゃあ、どうして私から目をそらすの? また私にちょっかいを出されるのが怖いの?」
ステラは言った。
「帰れ。」
ラジ兄は淡々と言った。
「そうだ、ラジ。ちょうどさっき、私が君の弟を試験したんだ。」
ロッキーさんは言った。
ラジ兄は振り向いた。
「俺の弟? サイ?」
「そうだ。」
ロッキーさんは答えた。
「あなた、弟がいるの?」
ステラは尋ねた。
「血のつながった弟じゃない。」
ラジ兄は面倒くさそうに答えた。
「それから、お前に見せたいものがある。」
ロッキーさんは一枚の紙をラジ兄に渡した。
「これはサイのプロフィールじゃないか。」
ラジ兄は言った。
「そうだ。まず、よく見てみろ。」
ロッキーさんは言った。
ラジ兄はそのプロフィールを読んだ。
そして、少し驚いたような表情を浮かべた後、薄く笑った。
***
サイはまだ家々の屋根の上を走り続けていた。
その一方で、あの監督官もまたサイを追い続けていた。
そんな追いかけっこは、しばらくの間ずっと続いた。
監督官は腕時計に目をやった。
(もう時間を過ぎたな?)
監督官はそう思い、走るのを止めた。
「おーい、坊や! 止まれ!」
監督官はサイに向かって呼びかけた。
「え? どうして?」
サイはまだ走りながら、後ろを振り返った。
「もう時間終了だ!」
監督官は言った。
サイはその場で足を止めた。
そして、監督官はサイのところまで走って近づいてきた。
「制限時間は三十分までなんだぞ。」
監督官はそう言いながら、サイの答案用紙を返すために手を差し出した。
「三十分? 時間が決まっていたなんて、今初めて知った。」
サイは言った。
「前の時は、お前が地面に落ちてしまったから、決められた時間まで到達できなかったんだ。」
監督官はそう言って、サイに答案用紙を返した。
サイはその紙を読んだ。
その顔には、嬉しそうな表情が浮かんでいた。
「お前が最年少の隊員として合格するのを、楽しみにしているぞ!」
監督官はそう言うと、走ってその場を去っていった。
「はい! 僕、絶対に合格します!」
サイは答えた。
***
「第三の試験は、社会性の試験です。これも、皆さんがボランティアになりたいのであれば必要になります。」
監督官は言った。
「これから第三の試験の手順を説明します。」
「この試験は一晩中行われるため、皆さんには泊まる場所が必要になります。」
(うわぁ……。この試験、本当に嫌いだ。)
サイは心の中で愚痴をこぼした。
「皆さんは、住民の家に泊めてもらう方法を自分で探さなければなりません。宿泊施設やホテルを借りることは認められていません。」
監督官は説明した。
「分かりましたか?」
「分かりました!」
参加者全員が答えた。
「よし。それでは、今からそれぞれ散らばっていいぞ。」
監督官が言った。
参加者全員が、すぐに集合場所からそれぞれ別の方向へ散っていった。
その中で、サイだけが困ったような顔をしていた。
「僕、どこへ行けばいいんだろう?」
サイは歩きながら言った。
「ルイスとミシェルには会わないだろうな。二人とも、僕のオーディションの邪魔はしないって言っていたから。」
サイは、同じ方向へ向かって歩いていく他の参加者たちを見つめた。
「何人かはショッピングモールへ行っているみたいだ。僕もまたそこへ行った方がいいのかな?」
サイは言った。
***
「やっぱり、ここに来るべきじゃなかった。」
サイはショッピングモールに到着すると、そう言った。
何人かの参加者は、そこにいる人たちの心をつかむことに成功していた。
しかし、サイはまったくうまくいかなかった。
「また道端で寝るしかないかな。」
サイは言った。
サイの目の前には、段ボール箱を持っている一人の男性がいた。
その男性の隣には、ベビーカーを押している女性がいた。
サイはその道から避けようとした。
しかし、男性の足がサイにぶつかってしまった。
男性はつまずき、持っていた箱が地面に落ちた。
「ドサッ!」
箱は地面に激しく落ちたが、男性自身は倒れなかった。
「何てことだ! お前、何をしている?!」
男性はサイに怒った。
「ぼ、僕? 僕は何もして……。」
「ちくしょう! ちゃんと前を見て歩けよ! お前、どういうつもりだ?! 中身が壊れたらどうするんだ!」
男性は言った。
「す、すみません……。」
サイは不安そうに謝った。
「この子、本当に迷惑ばかりかけるわね。」
男性の妻も言った。
男性は再び箱を持ち上げると、その箱をサイに渡した。
「その代わり、お前がこれを俺たちの家まで運べ!」
男性は言った。
「で、でも、僕……。」
サイが言いかけると、
「まさか、断るつもりか?!」
男性は言った。
「は、はい……。」
サイは仕方なく答えた。
「これなら私たちの負担も減るわね。」
妻が言った。
「そうだな。さあ、先へ進もう。」
男性は言った。
二人は歩き始め、その後をサイがついていった。
二人は、重い箱を運ぶのに苦労しているサイのことなど気にせず、ショッピングモールの中を歩き続けた。
「景色がとてもきれいね。あそこで写真を撮りましょう。」
妻は、道の先を指差した。
そこは崖になっていて、その先は行き止まりになっていた。
「そうしよう。」
男性は妻に従った。
二人は自分たちの赤ん坊を置いたまま、写真を撮りに行った。
「僕、いつまでこの二人について行かなきゃいけないんだ?」
サイは疲れ切った様子で言った。
その時、突然ベビーカーが動き出した。
ベビーカーは誰にも押されていないのに、そのまま崖の方へ進んでいった。
そして、サイの目の前を通り過ぎた。
「まずい!」
サイはすぐに箱を投げ捨て、ベビーカーを追いかけた。
「大変! 私たちの子が!」
女性はパニックになった。
二人はようやく赤ん坊のことに気づいた。
ベビーカーはすでに崖のすぐ近くまで来ていた。
「捕まえなきゃ!」
サイはベビーカーに届くように飛び込んだ。
しかし、間に合わなかった!
ベビーカーはすでに崖から落ちてしまった!
「私の子!」
女性はヒステリックに叫んだ。
人々が次々と崖の近くへ集まり始めた。
一方、サイはその場から動かず、下を見つめていた。
すると、ベビーカーは崖に生えていた一本の枝に引っかかっていた。
赤ん坊は無事だったが、下でただ泣き続けていた。
「私の子……そんな……。」
女性はその場に座り込み、泣き始めた。
「どうするんだ?! 早く子どもを助ける方法を探せ!」
夫は叫んだ。
サイは右を見て、左を見た。
左側には、崖の端ぎりぎりに生えている一本の木があった。
一方、右側には店があり、その店の前にはちょうど一本のロープが置かれていた。
サイはすぐにその店へ走っていき、そのロープを取った。
そして、すぐに元の場所へ戻った。
「早く私たちの子を助けて! このままじゃどうなるの?!」
女性は夫の体を揺さぶりながら言った。
サイはすぐに、そのロープを木の幹に結びつけ、もう片方を自分の腰に結びつけた。
「僕が赤ちゃんを助けます。二人とも、安心してください。」
サイは言った。
夫婦はサイの方を振り向いた。
二人は希望に満ちた目でサイを見つめた。
サイは笑ってから、自信を持ってうなずいた。
そして、ゆっくりと下へ降りていった。
「あの子、本当に赤ちゃんを助けられるのか?」
一人の住民が言った。
「たぶん、できるんじゃないか。」
別の住民が答えた。
サイは時々崖の岩肌をつかみながら、下へ降りていった。
彼は何度も下を見ながら進んでいた。
その一方で、赤ん坊の両親は心配そうにサイを見つめていた。
やがてサイは、ベビーカーの近くまでたどり着いた。
赤ん坊はそこで泣き続けていた。
「大丈夫だよ、小さな赤ちゃん。僕が助けてあげるからね。」
サイは言った。
そして、ゆっくりとベビーカーから赤ん坊を抱き上げた。
ちょうどその瞬間、ベビーカーが引っかかっていた木の枝から落ちた。
女性は恐怖で目を閉じた。
サイは緊張しながら、ほっと息をついた。
「僕たちは助かるよ。心配しないで。」
サイはそう言い、左手で赤ん坊を抱えながら、右手で崖の岩肌をつかみ、再び登り始めた。
「俺たち、あの木に結んだロープを引っ張った方がいいんじゃないか?」
一人の住民が言った。
「やめとけ。あいつが死んだ方がいい。」
別の住民が言った。
「でも、あいつは赤ちゃんを抱えてるんだぞ、馬鹿!」
サイは何度も崖をつかみながら、順調に登り続けた。
しかし突然、木がさらに大きく傾いた。
サイはとても驚いた。
もう少しで落ちるところだった。
人々は騒ぎ始めた。
このままでは木が倒れて、サイも一緒に落ちてしまうかもしれない。
(急がなきゃ!)
サイは心の中で思い、動きを速めた。
木はさらに傾いていった。
それでも幸いなことに、サイは頂上までたどり着くことができた。
サイは急いで腰からロープを外した。
ちょうどその瞬間、木がそのまま倒れ、崖の下へ落ちていった。
サイはほっと息をついた。
その場にいた全員が、落ちていった木をただ黙って見つめていた。
「私の子!」
さっきの女性が泣きながら言った。
サイは女性の方を振り向き、赤ん坊を母親へ渡した。
「私の子が助かった!」
両親はすぐにサイのところへ駆け寄った。
赤ん坊がサイから渡された、その瞬間だった。
赤ん坊の父親が突然、サイを崖の方へ突き飛ばした。
サイはとても驚いた。
何もする暇がなかった。
時間がゆっくりになったように感じた!
しかし突然、一本の手がサイの手をつかんだ。
サイはしばらく呆然としていた。
まだ、今起こったことにショックを受けていた。
「よかった……私の子が無事で。」
女性は自分の子を抱きしめながら言った。
その場にいた住民たちは、問題が解決したと思い、そのまま立ち去っていった。
「ちっ! どうしてこいつ、死ななかったんだ?」
男性は悔しそうに言った。
「お前が俺たちの子をちゃんと見ていなかったせいだ! この疫病神が!」
男性はそう言い、妻と一緒に立ち去っていった。
「子どもをちゃんと見ていなかったお前が悪いんだよ!」
サイの手を引っ張っていた人物が言った。
サイはその人物の方を振り向いた。
「おじいさん?」
サイは言った。
なんと、その人物は、以前のカフェの店長代理の兄の祖父だった。
そのおじいさんは、サイに優しく微笑んだ。
その姿は、以前よりもずっと良くなっていた。




