第22章 物乞いのおじいさん
「どうして今頃来たんだ?! お客さんはとっくに来てるぞ!」
カフェの店長代理の兄が怒鳴った。
「す、すみません……。
訓練の後で少し休んでいて……。」
サイは答えた。
「そんなこと、俺が気にするとでも思ったのか?!」
彼は怒鳴った。
「さっさと自分の仕事をしろ!」
彼は続けた。
「は、はい!」
サイはすぐに荷物を下ろし、掃除道具を取りに走った。
「まったく!
手間ばかりかけやがって!」
店長代理の兄はそう言って自分の部屋へ向かった。
サイはまず店内を掃き、それから床をモップで拭き始めた。
「あの疫病神みたいなガキを、何でこの店は雇ってるんだ?」
一人の客が言った。
サイにもその言葉は聞こえた。
しかし彼は小さくため息をつき、何も言わずに床を拭き続けた。
「ははは!
疫病神か。
でも確かに、あいつにはぴったりの呼び名だな。」
客の友人も笑いながら言った。
***
「近くのカフェに小麦粉を一袋預けてある。
早く取りに行ってこい。」
店長代理の兄はそう言って、サイにお金を渡した。
「で、でも兄さん……
そのカフェまで二キロあります。
それに僕の仕事も……。」
サイは言った。
「仕事は後でやればいい!
早く行け!」
店長代理の兄は怒鳴った。
「は、はい!」
サイはすぐにカフェを飛び出した。
「二十分で戻って来い!」
後ろから店長代理の兄が叫んだ。
「まあ、大丈夫。」
サイは小さくつぶやいた。
「これも訓練だと思えばいい。
頑張ろう!」
そう言って、全力で走り出した。
***
「な、何だって!?
こんなに大きいの!?」
サイは驚いて言った。
自分が運ぶことになる袋が、とても大きかったからだ。
「いつもこの大きさだよ。」
男は答えた。
「すごく大きい……。
僕に運べるかな?」
サイは先ほど渡されたお金を男に渡した。
「手伝おうか?」
男はお金を受け取りながら尋ねた。
「だ、大丈夫です。
僕一人でできます。」
サイは申し訳なさそうに答えた。
「分かった。
もう持って行っていいよ。」
男は言った。
「はい。」
サイは袋の上の部分を肩にかけ、力いっぱい背中へ持ち上げた。
「本当に大丈夫か?」
男は尋ねた。
「大丈夫です!
失礼します!」
サイは言った。
「ああ。」
男は答えた。
サイはそのカフェを後にした。
重い袋を背負いながら歩くのも大変だったが、それでも走ろうと必死だった。
「急がなきゃ……。」
サイは走り続けた。
しばらく時間が過ぎたが、サイはまだ道の途中にいた。
「頼むよ、坊や……。」
サイは一人の物乞いのおじいさんの前を通り過ぎた。
その声を聞いて足を止めた。
「頼むよ、坊や……。」
おじいさんは激しく咳き込んでいた。
「もう五日も何も食べていないんだ。
頼むから助けておくれ……。」
おじいさんは言った。
「このおじいさん……
オーディションの時に会ったあの人だ。」
サイはそう思いながらポケットを探った。
「僕、お弁当のパンを持ってるんです。
どうぞ、おじいさん。」
サイはパンを差し出した。
「あ、ありがとう……。」
おじいさんは震える手でパンを受け取った。
「どういたしまして!」
サイは嬉しそうに答えた。
「この疫病神め!
おじいちゃんに何をしたんだ?!」
突然、店長代理の兄がやって来て、サイを突き飛ばした。
「ドサッ!」
サイは勢いよく地面へ倒れた。
「ま、孫なのか……?」
おじいさんは驚いて言った。
「おじいちゃん!
今までどこにいたんだ?」
店長代理の兄はおじいさんのもとへ駆け寄った。
「本当に……
お前はわしの孫なのか?」
おじいさんは尋ねた。
「忘れちゃったの?
俺は本当におじいちゃんの孫だよ。」
店長代理の兄は言った。
「本当なのか……?」
おじいさんは驚いた。
サイは立ち上がり、痛む背中を押さえた。
「お前!
おじいちゃんに何をしたんだ?!」
店長代理の兄は怒鳴った。
「ぼ、僕は何も……。」
サイが言いかけると、
「その子を叱るんじゃない。」
おじいさんが言った。
「この子は、
わしを助けてくれたんだ。」
店長代理の兄は、その言葉を聞いて少し驚いた。
「すみません兄さん……
また遅くなってしまいました。」
サイは申し訳なさそうに言った。
「お前が遅いから迎えに来たんだ!」
店長代理の兄は怒鳴った。
「す、すみません……。」
サイはまだ座り込んだまま謝った。
「この子はお前のところで働いているのか?」
おじいさんは尋ねた。
「うん、おじいちゃん。」
店長代理の兄は答えた。
「この子に乱暴するな。
この子はいい子なんだから。」
おじいさんは言った。
「わ、分かった。
ごめん、おじいちゃん。」
店長代理の兄は言った。
「謝る相手はわしじゃない。
その子だ。」
おじいさんはもう一度言った。
店長代理の兄は不満そうにサイを見つめるだけで、なかなか謝ろうとはしなかった。
「それじゃあ……
僕はカフェへ戻ります。」
サイは再び袋を背負った。
「行け。
俺はおじいちゃんを家まで送る。」
店長代理の兄は、おじいさんの手を引きながら言った。
二人はその場を去り、
重い袋を運ぶのに苦労しているサイだけが残された。
***
「ルイス。」
サイは小さな声で言った。
今、サイとルイス、そしてミシェルは草原に集まっていた。
「何だ?」
ルイスは答えた。
その間、ミシェルは植物に水をやっていた。
「僕、何か悪いことをしたのかな?」
サイは言った。
「誰だって間違いはする。」
ルイスは布で拳銃を磨きながら言った。
「違うよ、この町へ来てからのことなんだ。」
サイは言った。
「どうした?
仲間外れにされているのか?」
ルイスは尋ねた。
「仲間外れというより……
嫌われている気がする。」
サイは答えた。
「何か悪いことをしたのか?」
ルイスは尋ねた。
「だから、それをルイスに聞いているんだ。」
サイは言った。
(お母さん……
もしお母さんがまだ生きていたら、
きっと今の悩みを全部話していたのに……。)
サイは悲しそうに思った。
「人があなたを嫌うのは、
あなたが悪いことをしたからとは限らない。」
「ただその人があなたを嫌っているだけのこともある。」
ミシェルが突然言った。
サイとルイスは彼女の方を向いた。
「例えば私。」
「お母さんが未亡人というだけで、
私たちは“不吉な女”だと言われ、
町では評判も悪かった。」
ミシェルは言った。
「どうしてそんなことになるの?」
サイは尋ねた。
「男の人の中には、
女より自分の方が上だと思っている人がいる。」
「もちろん全員じゃないけど、
そういう人は確かにいる。」
ミシェルは言った。
「未亡人と、
男の子になろうとしている娘なんて、
迷惑な存在だと言われる。」
「しかも私たちは貧しいから。」
「女は見下され、
男より弱い存在だと思われることもある。」
ミシェルはサイとルイスに話した。
「それが、
私が女でいることを好きじゃない理由の一つ。」
そう言って、
寂しそうに空を見上げた。
「そんなの違う!」
「男も女も同じだよ!」
サイは反対した。
「まあ、
この町はそういう場所なの。」
「男女平等なんて誰も気にしていない。」
ミシェルは二人の方へ向き直って言った。
「だからお前が今みたいになったのも無理はない。」
ルイスは言った。
「でも、
ミシェルの言うことは間違っていない。」
ルイスは言った。
「どうしてそう言うの?」
サイは尋ねた。
その間、
ミシェルも二人のそばに座った。
「実は、
俺には妹がいる。」
ルイスは言った。
「妹!?」
サイとミシェルは驚いた。
「どうして今まで教えてくれなかったの?」
「何歳なの?」
サイとミシェルは尋ねた。
「ま、待て。
ちゃんと話すから。」
ルイスは言った。
「妹は俺たちより二歳年下で、
今は八歳だ。」
ルイスは言った。
「俺から見れば、
優しくて、
可愛くて、
愛らしい子なんだけど、
家族はあの子をとても嫌っている。」
「どうして?」
ミシェルは尋ねた。
「まあ……
あいつが女だからだ。」
ルイスは答えた。
「女だからって、
何が悪いの?」
サイは尋ねた。
「家族と言ったのは、
両親だけじゃない。」
「親戚みんなだ。」
ルイスは言った。
「どうしてそこまで?」
サイは尋ねた。
「祖父はたくさんの会社を持っている。」
「だから財産も莫大なんだ。」
ルイスは言った。
「でも祖父はもうかなり高齢で、
家族全員がその遺産を巡って争っている。」
ルイスは続けた。
「祖父の子どもは全員男。」
「孫も全員男だった。」
「妹だけが女なんだ。」
ルイスは言った。
「妹は女だから、
後継者にはなれないと思われている。」
「だから俺の方が妹より甘やかされ、
可愛がられている理由の一つなんだ。」
ルイスは言った。
「じゃあ、
ルイスもその遺産を手に入れたいの?」
サイは尋ねた。
「いや。」
「俺は全く興味がない。」
ルイスは答えた。
「いつか妹をあの家族から連れ出したい。」
「もうあいつが、
あの人たちの憎しみを受けなくて済むようにな。」
ルイスは言った。
三人はしばらく黙り込んだ。
それぞれが自分の運命について考えていた。
ルイスはサイとミシェルの方を向いた。
「俺たち、
何でこんなに静かになってるんだ?」
そう言って笑った。
「そういえばサイ、
ゴールドオーガニゼーションのオーディションがまた始まるんだろ?」
ルイスは言った。
「うん。
あと数日で始まるよ。」
サイは答えた。
「合格できそう?」
ミシェルは尋ねた。
「自信はないかな。」
「前回のオーディションは途中で中止になったから、
キノコ探しの任務の後にどんな試験があるのか分からないんだ。」
サイは言った。
「でも、
学科試験と体力試験は、
前にも受けたから大丈夫だと思う。」
サイは言った。
「そうか。」
「俺たちと、
お前の医者の兄さんに、
いい知らせを持って来いよ。」
ルイスは言った。




