第18章 戦いの終結
「お前の実力はそんなものか?」
「もっと強いと思っていたぞ。」
怪物は恐ろしい声で言った。
「お前、喋れるんだな。」
カイは立ち上がりながら言った。
「残念だが、俺には武器がない。」
「お前と戦うのは少し苦労しそうだ。」
カイは言った。
「それは俺にとって嬉しい知らせだ。」
怪物は邪悪な笑みを浮かべた。
「さあ、俺の攻撃を味わえ!」
怪物は地面を殴った。
すると地面に大きな亀裂が走り、
一直線にカイへ向かっていく。
カイは再び跳び上がった。
しかし今度は、
怪物のほうへ飛び込んだ。
一発の蹴りが決まる。
カイの蹴りは怪物の頭へ命中した。
「ぐあっ!」
怪物は頭を押さえた。
カイは地面の亀裂を蹴り飛ばす。
その亀裂は再び怪物の頭へ激突した。
「あああっ!」
怪物はさらに苦しんだ。
カイは次々と地面の亀裂を蹴り飛ばす。
怪物は両腕で身を守ることしかできない。
「これでもくらえ!」
カイの足から炎が噴き出した。
渾身の蹴りで、
燃え上がる亀裂を怪物へ向かって飛ばす。
「ドォォン!!」
地面は爆発した。
怪物は数歩後ろへ押し戻される。
カイはすぐに駆け寄った。
高く跳び上がり、
怪物の頭へ蹴りを放つ。
しかし今度は、
怪物がその足をつかんだ。
カイは驚く。
怪物は体を大きく回転させ、
全力でカイを岩へ投げ飛ばした。
岩には大きなひびが入る。
カイは苦しそうだった。
「ハハハ!」
「どうだ!」
「痛いだろう!」
怪物は笑った。
カイは何とか立ち上がろうとする。
全身に激しい痛みが走っていた。
「これで終わりだ!」
怪物は恐ろしい声を上げながら、
カイへ向かって突進した。
「まずい!」
サイは急いで荷物の中から吹き矢を取り出した。
「おい!」
「何をするつもりだ!?」
ルイスは叫んだ。
「カイ兄に手を出すな!」
サイはすぐに吹き矢を吹いた。
小さな石が勢いよく飛び出す。
石は一直線に飛び、
怪物の目へ命中した。
「ああああっ!」
怪物は悲鳴を上げ、
目を押さえた。
カイもその様子を見て驚く。
「やった!」
サイとルイス、
そしてミシェルは喜んだ。
怪物は激しく怒り、
恐ろしい目つきで三人をにらみつけた。
三人は恐怖に震える。
怪物に居場所を見つけられてしまったのだ。
「このガキども!!」
怪物は今度は三人へ向かって走り出した。
「まずい!!」
三人は慌てた。
「こいつらに触るな!!」
カイの周囲に漂う黒いオーラがさらに膨れ上がる。
カイは一気に立ち上がり、
怪物へ飛びかかった。
「止まれぇぇ!!」
カイの蹴りが怪物の体へ命中する。
怪物は大きく吹き飛ばされ、
何度も地面を転がった。
「仲間をこれ以上傷つけるのは終わりだ。」
カイは低い声で言った。
怪物は再び立ち上がる。
「よくもやってくれたな!!」
そう叫び、
再びカイへ向かって突進する。
カイはすぐに跳び上がる。
怪物が真下へ来た瞬間、
頭へ蹴りを叩き込み、
そのまま地面へめり込ませた。
それだけでは終わらない。
カイは怪物の体を持ち上げ、
さらに高く、
とてつもなく高く跳び上がる。
「な……何をする気なの!?」
ミシェルは叫んだ。
「や……やめろ!」
怪物は顔が潰れながら叫ぶ。
「仲間を傷つけた報いだ!!」
カイはそのまま地面へ急降下した。
「ドォォォン!!」
再び大爆発が起こる。
土煙が一面へ舞い上がった。
二人が落ちた場所を中心に、
周囲の地面は粉々に砕け散っていた。
やがて土煙が薄くなる。
カイは無事だった。
彼はその場から歩き出し、
先ほど岩へ突っ込んだ飛行機へ目を向けた。
「あの飛行機が……。」
カイの表情は怒りに満ちていた。
ためらうことなく、
飛行機のほうへ走り出す。
そこには、
多くの隊員たちが飛行機の下敷きになっていた。
そして、
オーロラ先生も、
今なお機体に挟まれたまま意識を失っていた。
「くそぉぉぉ!!」
カイは突然、
誰も予想しなかった行動に出る。
巨大な飛行機を持ち上げたのだ。
サイ、ルイス、そしてミシェルは、その光景を見て言葉を失った。
ラジ兄も驚いた様子で、その光景を見つめていた。
カイは完全に理性を失っていた。
黒いオーラが体中から激しくあふれ出し、その表情は怒りに満ちている。
「どけぇぇぇ!!」
カイは巨大な飛行機を近くの山へ向かって投げ飛ばした。
ドォォォォン!!
飛行機は山へ激突し、大爆発を起こした。
三人の子どもたちは、その爆音に思わず耳を塞いだ。
あまりにも凄まじい爆発だった。
ラジ兄は痛む体を押さえながら、ゆっくりと立ち上がる。
「ラジ兄!」
サイはすぐに駆け寄った。
「おい!」
「危ないって!」
ルイスとミシェルも慌てて後を追う。
「ラジ兄、大丈夫?」
サイは心配そうに尋ねた。
「大丈夫だ。」
ラジ兄は痛みをこらえながら答えた。
カイはなおも暴れ続けていた。
巨大な火の玉を次々と生み出し、辺り一面へ投げつけていく。
さらに今までで一番大きな火球を作り出し、その場に残る飛行機へ向かって投げ放った。
ラジ兄は苦しそうに立ち上がる。
「俺をあいつのところまで連れて行ってくれ。」
サイとルイスはすぐにラジ兄の腕を支えた。
ミシェルもその後ろをついて行く。
カイは止まらない。
飛行機が残っている限り、すべて破壊するつもりだった。
しかし、一機だけまだ破壊されていない飛行機があった。
「なんでまだ壊れないんだぁぁ!!」
カイは片手を掲げる。
その手の上に、小さな火の玉が現れた。
それは次第に巨大になり、炎の光で周囲一帯が赤く染まっていく。
「全部……壊れろぉぉぉ!!」
カイが火球を投げようとした、その時――
突然、一人の手がカイの肩へそっと置かれた。
ラジ兄だった。
彼はカイの後ろに立っていた。
「もうやめろ。」
ラジ兄は静かに言った。
カイは動きを止める。
しかし、火球はまだ手の中に残っていた。
「馬鹿野郎。」
「お前の攻撃は、まだ生きている仲間まで巻き込むところだった。」
「頭はついているのか?」
ラジ兄は言った。
「ラジ兄がこんな乱暴な言葉を言うなんて、初めて聞いた……。」
サイはルイスとミシェルと一緒にその様子を見ながら言った。
「でも……。」
「みんなは……。」
カイは言いかけた。
「お前はもう十分すぎるほど人を殺した!」
「そのことが分かっているのか!?」
ラジ兄は強く言った。
その言葉にカイは驚いた。
「お前に悪気がなかったことくらい分かっている。」
「だが、お前はやり過ぎた。」
ラジ兄は静かに言う。
「それに、ステラだって乱暴な人間は嫌いだっただろ?」
カイはゆっくりと周囲を見回した。
ラジ兄の言う通りだった。
敵は皆、自分の手で無残な姿になっていた。
「これで分かっただろ。」
「どうしてお前が戦いに参加することを許されなかったのか。」
ラジ兄は言った。
すると、
カイの体を包んでいた黒いオーラが、
少しずつ消えていく。
そして力が抜け、
そのまま地面へ倒れ込んだ。
こうして、
その日の戦いは正式に終わった。
---
「カイ。」
突然、
誰かが自分の名前を呼んだ。
カイは驚いて顔を上げる。
そこは一面が黒だけの世界だった。
わずかな光だけが差している。
「だ……誰だ?」
カイは辺りを見回しながら言った。
「カイ。」
「ようやく会えたな。」
その声は言った。
「お前は誰だ?」
「姿を見せろ!」
カイは叫ぶ。
その声の主は笑った。
「本気で言っているのか?」
「初めて話したばかりなのに、もう姿を見せろと言うのか?」
その声は言った。
「それがどうした。」
「ここは一体どこなんだ?」
カイは尋ねた。
「カイ。」
「お前は俺のことなど何も知らない。」
「俺がどこから来たのかも。」
「なぜお前の中にいるのかも。」
声は静かに言った。
「そんなこと知りたくない!」
「早くここから出してくれ!」
カイは叫んだ。
しかし、
その声は返事をしなかった。
その代わり、
黒い人影が、
カイの後ろからゆっくりと歩いてきた。
カイは足音に気づいた。
振り返ると、
すぐに戦う構えを取る。
黒い影はまた笑った。
「そんなに構えるな。」
「ここでお前を殺すつもりはない。」
そう言った。
「たぶんな。」
黒い影は付け加えた。
「俺がお前を嫌っている相手に、優しく接すると思うか?」
その声は冷たく、
ぞっとするほど不気味だった。
カイはその異様な姿を見て驚く。
人間のような黒い体。
赤く光る目。
そして、
周囲には不気味な黒いオーラが漂っていた。
「お前は誰なんだ!?」
「答えろ!」
カイは叫んだ。
「知る必要はない。」
「そのうち嫌でも分かる。」
黒い影はそう言いながら、
さらに近づいてくる。
「近寄るな!」
カイは強く言った。
「だから落ち着けと言っただろ。」
「今はまだお前を殺さない。」
黒い影は言う。
「どういう意味だ?」
カイは尋ねた。
「カイ。」
「これだけは一度しか言わない。」
黒い影は静かに言った。
「俺はお前が心の底から嫌いだ。」
「だから俺がお前の中にいる限り、お前が平穏に過ごせると思うな。」
カイはその言葉を聞いて大きく驚いた。
黒い影は口元をゆがめて笑う。
そして次の瞬間、
ものすごい速さでカイの体へ飛び込んだ 。
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カイは勢いよく目を覚ました。
驚いて目を見開く。
辺りを見回すと、
そこは真っ白な医務室だった。
外はすでに夜になっている。
ベッドの右側では、
ラジ兄が医療器具を片づけていた。
そして左側には、
サイが天井を見上げながら座っていた。
退屈そうな様子だった。
カイは何が起きたのか分からず、
しばらくぼんやりしていた。
ゆっくりと体を起こそうとする。
サイはその様子に気づいた。
目を開き、
すぐにカイのほうを向く。
「カイ兄!」
サイは嬉しそうに叫んだ。
カイは頭を押さえながら顔をしかめる。
「ここは……どこだ?」
カイは尋ねた。
「医務室だよ。」
サイは答えた。
「そうか……。」
カイは辺りを見回した。
「もう大丈夫なの?」
サイは心配そうに尋ねる。
カイは自分の体を見つめた。
全身に包帯が巻かれ、
傷口には湿布や保護具が付けられている。
「俺はいつ、こんな傷を負ったんだ?」
カイは不思議そうに言った。
「お前が覚えていないだけだ。」
ラジ兄は近づき、
ベッド脇の棚へコップ一杯の水を置いた。
「お前は暴走して意識を失った。」
ラジ兄は腕を組みながら言った。
「暴走?」
「俺が?」
カイは尋ねた。
「覚えていないのか?」
ラジ兄は言った。
「たぶん……覚えてない。」
カイは頭を押さえた。
(よかった……。)
ラジ兄は心の中でつぶやいた。
「少しだけ覚えてる……。」
カイは記憶をたどろうとする。
戦場へ着いた時のこと。
仲間たちが倒れていたこと。
そして、
ラジ兄が自分の肩へ手を置いたところまでだった。
「ラジ兄、すごかった!」
サイは言った。
ラジ兄とカイは同時にサイを見る。
「さっきラジ兄がカイ兄を止めたんだ。」
「ラジ兄が来た途端、カイ兄はすぐ正気に戻ったんだよ。」
サイは嬉しそうに言った。
「俺は止めようとしただけだ。」
ラジ兄は後ろを向き、
再び机の上の薬を整理し始めた。
「ラジ兄がさっき超能力を使ったのかと思ったよ。」
サイは言った。
カイは小さく笑う。
「そんなことは昔から何度もあった。」
「俺たちのどちらかが暴走すれば、もう一人が止める。」
カイは言った。
「へぇ、そうなんだ!」
サイは感心した。
「もちろんだ。」
「見た目では分からないかもしれないが、俺たちは親友だからな。」
カイは笑った。
「えっ!?」
「親友!?」
サイは驚いた。
ラジ兄とカイを交互に見つめる。
「どうして?」
「いつも喧嘩してるのに。」
「しかも年齢だってずいぶん離れてるでしょ。」
サイは言った。
「僕とラジ兄は兄弟なのに。」
「どうして二人は親友なの?」
サイは不思議そうに尋ねた。
「俺が十七歳だった頃だ。」
「ラジが組織に入ったばかりの時、俺は訓練を担当する先輩だった。」
カイは話し始めた。
「でも、私の実力のほうが彼より上だった。」
「だから彼は悔しがって、些細なことでよく言い争うようになった。」
ラジ兄は近づきながら言った。
「おい!」
「誰がそんなこと言った!」
カイは納得できない様子で言った。
「カイ兄、そんなことしちゃ駄目だよ。」
「お母さんが、嫉妬やねたみはよくないって言ってた。」
サイは言った。
「ち、違う!」
「そういう意味じゃない!」
「ラジの言い方を勘違いしただけだ!」
カイは慌てて言い返す。
「お前が生意気だから腹が立ったんだ!」
カイはラジ兄を指差した。
「私はただ口数が少ないだけだ。」
「どこが生意気なんだ?」
ラジ兄は言う。
「もっと愛想よくしろよ!」
カイは言った。
「私は生意気じゃない。」
ラジ兄は答える。
(なんでまた喧嘩してるんだろう……。)
サイは心の中で思った。
「あ、そうだ。」
「カイ兄って炎の属性なの?」
サイは話題を変えた。
「え?」
「どうしてそう思った?」
カイは尋ねた。
その間に、
ラジ兄は歩いて椅子へ座り、
本を読み始めていた。
「だって戦場でずっと手から火を出してたから。」
サイは言った。
「本当か?」
「全然覚えてないな。」
カイは言った。
カイは小さく笑う。
「その考えも間違いじゃない。」
「でも――」
そう言うと、
カイは人差し指をゆっくり回した。
すると、
小さな水の球が現れた。
水の球は、
カイの指の上をふわりと浮かんでいる。
サイは目を輝かせた。
「俺は水属性なんだ。」
カイは言った。
「わあ!」
「すごい!」
サイは感動した。
「一人で二つ以上の属性を持つことってできるの?」
サイは興奮しながら尋ねた。
「そんなことできるわけないだろ。」
カイは笑った。
「じゃあさっきは?」
「どうして二つの属性を使えたの?」
「それに、カイ兄の武器は何なの?」
サイは続けて尋ねた。
「そ、それは……。」
カイは答えに困った。
「そういえば。」
「さっきサイに聞きたいことがあるって言ってただろ。」
ラジ兄はカイを助けるように言った。
「え?」
「何を?」
サイは尋ねた。
「あっ!」
「そうだった!」
カイは思い出した。
「何を聞きたいの?」
サイは尋ねた。
「サイ。」
「北の方角にある丘を知ってるよな?」
カイは真剣な表情で言った。
「うん。」
「あの丘の向こうにはウィルダネスの森があるよ。」
サイは答えた。
「じゃあ聞く。」
カイはさらに真剣な表情になった。
「あの丘に立っている誰かを見たことはあるか?」




