第13章 トラブルの中で
「待て、お前たち!」
ミシェルは二人を追いかけ続けていた。
「もっと速く走れ!」
ルイスが叫び、二人はさらに速度を上げる。
三人は行き先も考えずに走り続け、気が付けば木々が生い茂る場所へ入り込んでいた。
「いつまで追いかけてくるんだよ!」
ルイスが息を切らしながら言う。
「君のせいだよ!」
「あんなところでピストルなんて遊ぶから!」
サイが言い返した。
「違う!」
「あのバイクのせいだ!」
ルイスは反論する。
「待てって言ってるでしょ!」
ミシェルの声が後ろから響く。
「このままじゃ逃げ切れないかも。」
ルイスは焦った表情を浮かべた。
「弁償するって言おう。」
「君、お金は持ってるよね?」
サイが言う。
「あっ、そうか!」
ルイスもうなずいた。
その瞬間だった。
三人は急に黙り込み、同時に足元を見る。
いつの間にか地面がなくなっていた。
「うわあああ!」
三人は茂みに覆われた急な斜面へ転げ落ちた。
ミシェルも驚き、慌てて止まろうとしたが間に合わない。
「きゃあっ!」
「いたたた……。」
サイが痛そうに声を漏らした。
「あっ!」
次の瞬間、ミシェルがそのままサイの上へ落ちてきた。
ルイスはその様子を見て目を丸くする。
「いたた……。」
ミシェルは痛む頭を押さえながら起き上がった。
そして、自分がさっきまで追いかけていた二人と一緒に倒れていることに気付く。
彼女はすぐにサイから離れると、そのままルイスの襟首をつかんだ。
サイは慌ててルイスの後ろへ這って隠れる。
「私の野菜を踏み荒らしておいて、そのまま逃げられると思ってるの!?」
ミシェルはルイスの体を激しく揺さぶった。
「ご、ごめんなさい……。」
ルイスは震えながら謝る。
その後ろではサイも怯えていた。
「謝って済む問題じゃない!」
「あれを育てるのにどれだけ苦労したと思ってるの!」
「早く弁償して!」
ミシェルは怒鳴る。
「でないと……。」
そう言って拳を握り、ルイスを殴ろうとした。
「や、やめて!」
ルイスは思わず叫ぶ。
「もし僕をやっつけようっていうなら……。」
「ぼ、僕だって……戦う!」
勇気を振り絞るように言ったものの、その体は震えていた。
「本当にできるっていうの!?」
ミシェルはさらに怒鳴る。
「も、もちろん……。」
ルイスは小さな声で答えた。
「そんなことしちゃ駄目だよ。」
サイが止めに入る。
「お母さんが言ってた。」
「男の子は女の子を傷つけちゃいけないって。」
「誰が女の子だって!?」
ミシェルはさらに激怒した。
「えっ!? お前たち、遅れるのか!?」
突然、一人の男の声が聞こえてきた。
サイ、ルイス、ミシェルの三人は驚き、すぐに近くの茂みへ身を隠した。
一人の男がスマートフォンで誰かと通話しながら立っていた。
「先に来いって言ったのはお前のほうだろ。」
「なのに、お前が遅れるなんてどういうことだ。」
男は苛立った様子で言う。
「人の話を盗み聞きするなんて、失礼じゃない?」
ミシェルが小声で言った。
「でも、僕たちが盗み聞きしてることに気付かれたほうがもっとまずいよ。」
「だから、ここにいることを知られないほうがいい。」
ルイスも小声で答える。
「ああ、あの組織のことか。」
「ここ数日ずっと監視していた。」
「そして、つい最近、新しい隊員を十人迎えた。」
男は電話越しに話し続ける。
「えっ?」
「ゴールド・オーガニゼーションのこと?」
サイは驚いた。
「どうして分かったの?」
ミシェルが尋ねる。
「僕、この前その試験を受けたんだ。」
「それに、今は本部で暮らしてる。」
サイは答えた。
「すごい!」
「それで、合格したの?」
ルイスが目を輝かせて聞く。
「それは……。」
サイは返事に困った。
「奴らは普段どおり活動している。」
「どうやら、俺たちがまた攻撃することには気付いていないようだ。」
男は続ける。
「ま、また攻撃!?」
ルイスとミシェルは思わず顔を見合わせ、小さな声を漏らした。
「またって、どういうこと?」
サイは驚いて尋ねる。
「ゴールド・オーガニゼーションは何度も襲撃されてるの。」
「この町にとっても、とても悪いことなんだよ。」
ミシェルが説明した。
「えっ!?」
「何度もなの!?」
サイは思わず大きな声を出してしまう。
「声が大きいよ、バカ!」
ルイスは慌ててサイの口を手でふさいだ。
男は物音に気付き、眉をひそめる。
「……誰かいるな。」
そうつぶやくと、
「また後で電話する。」
と言って通話を切り、スマートフォンをポケットへしまった。
そして腰のホルスターから一本の拳銃を取り出す。
「まずい!」
ルイスは青ざめた。
「どうするの?」
ミシェルも緊張した表情になる。
「今のうちにここから離れよう。」
「まだ僕たちは見つかってない。」
ルイスはそう言って、静かにはい始めた。
サイとミシェルも後に続く。
「この襲撃計画を知られるわけにはいかない。」
「誰かいたのか確かめないとな。」
男はゆっくり茂みへ近付いてくる。
「急いで。」
「本気で探すつもりだ。」
ルイスがささやく。
三人はさらに速く、音を立てないように進んでいく。
「手を上げろ!」
突然、男が拳銃を構えた。
三人は反射的に動きを止める。
しかし、男が狙っていたのは、先ほど三人が隠れていた茂みだった。
「……誰もいないか。」
男は小さくつぶやく。
三人はほっと息をついた。
「今だ。」
「まだ逃げられる。」
ルイスが言う。
三人は茂みを抜け、男から十分離れた場所までたどり着くと、そのまま木々の間を走り始めた。
「音を立てるな。」
「きっと、まだ探し続ける。」
ルイスは小声で言う。
三人は黙ったまま走り続けた。
「簡単には諦めない。」
「さっき、確かに誰かいたはずだ。」
男はそうつぶやくと、ルイスたちが逃げた方向へ走り始めた。
ルイスはその気配に気付き、後ろを振り向く。
(まずい……。)
(追ってきた!)
ルイスは心の中で叫んだ。
「もっと速く!」
ルイスが言うと、三人はさらに全力で走り出した。
「あそこか!」
男は遠くに走る三人の姿を見つけた。
「逃がすものか!」
男は一気に距離を詰めようと走り出す。
「追いつかれる!」
ミシェルが焦った声を上げた。
「急ごう!」
「捕まったら終わりだ!」
ルイスが叫ぶ。
「僕のせいだ……。」
「さっき僕が――」
サイが言いかける。
「今は後悔してる場合じゃない!」
「早く走れ!」
ルイスはサイの言葉を遮った。
「止まれ!」
男の怒鳴り声が森に響く。
「まずい……。」
「殺されるかもしれない。」
サイは青ざめながら言った。
その時だった。
突然、サイの足元から地面が消える。
また急な斜面だった。
「しまった!」
「うわあああ!」
サイは斜面を転がり落ちる。
続いてルイスとミシェルも落ちていった。
「ドサッ!」
三人は勢いよく地面へ落ちた。
「今日は何回落ちれば気が済むんだよ……。」
ルイスは痛む腕を押さえながら言った。
「早く!」
「また逃げよう!」
サイは立ち上がって言う。
「待って。」
ミシェルが苦しそうに声を上げた。
サイとルイスは同時に振り向く。
「足をくじいたみたい。」
ミシェルは左足を押さえながら苦しそうに言った。
「そんな……。」
「早く、一緒に行こう!」
サイはすぐにミシェルの右腕を自分の肩へ回した。
「うん。」
「急いでここを離れないと。」
ルイスも反対側からミシェルを支える。
三人はできるだけ速く歩き始めた。
ミシェルも痛みに耐えながら足を動かし、少しでも速く進もうとする。
「どこへ行った!」
「逃げられると思うな!」
男の叫び声が遠くから聞こえた。
「このままじゃ見つかる。」
ルイスが言う。
「あそこへ隠れよう。」
サイは一本の大きな木を指差した。
二人もうなずく。
三人はその木の陰へ身を潜めた。
男はそこまでやって来た。
斜面を素早く、慣れた足取りで下りると、辺りを見回した。
「そこにいるのは分かっている!」
「隠れても無駄だ!」
男は大声で叫んだ。
サイ、ルイス、ミシェルは息を潜めたまま動かない。
三人が身を隠している木は、男の真正面にあり、その距離もそれほど離れてはいなかった。
「大人しく出て来い。」
「そうすれば、強硬手段は取らずに済む。」
サイは木の右側からそっと顔を出して様子をうかがう。
男はまだ三人の隠れ場所には気付いていなかった。
「いいだろう。」
「出て来ないというなら……。」
男は三人が隠れている木へ向かって拳銃を構えた。
「まとめて始末してやる。」
「パン!」
「まずい!」
サイはすぐにルイスとミシェルを左へ突き飛ばし、自分はその場へ伏せた。
「ドォォン!!」
耳をつんざくような爆発音が森に響き渡る。
三人は思わず耳を押さえた。
サイはさっきまで身を隠していた木のほうを見る。
「な、何だよ……。」
サイは驚き、ルイスとミシェルも言葉を失った。
そこに立っていた木は、地面から一メートルほどしか残っていなかった。
(あれは……どんなリボルバーなんだ……。)
サイは信じられないという表情で思う。
「おや。」
「ちょうどいい木を撃ったみたいだな。」
男はそう言いながら、ルイスとミシェルのほうへゆっくり歩き始めた。
二人は恐怖で身を固くする。
男は今もなお拳銃を握っていた。
「近づくな!」
サイはすぐに立ち上がると、男の前へ走り出る。
そのままルイスとミシェルをかばうように立ちはだかった。
「二人には手を出すな!」
「サイ……。」
ルイスは小さくつぶやく。
「まだ一人残っていたか。」
男はそう言うと、突然サイの首をつかみ、そのまま持ち上げた。
「サイ!」
ルイスとミシェルは同時に叫ぶ。
息が詰まり、サイは男の腕を必死につかむことしかできない。
「子どもだったのか。」
「ところで、お前たちはさっき俺の話をどこまで聞いた?」
男は冷たく尋ねた。
「サイを放せ!」
ルイスは叫んだ。
「こいつを下ろしてくれ!」
「そうすれば、俺たちが答える!」
ルイスは言った。
「そうか?」
「お前たちに、俺を脅す度胸でもあるのか?」
男はそう言うと、さらにサイの首を締めつけた。
サイはますます苦しそうな表情になる。
「サイを放せ!」
ミシェルはすぐにウエストポーチから何かを取り出した。
それは一本のロープダートだった。
ルイスは思わず目を見開く。
その武器のロープは普通のものではなかった。
ミシェルはすぐにロープダートを振り回し、その刃先を男の腕へ向かって放つ。
「ぐあっ!」
男の手にロープダートが突き刺さった。
サイはそのまま地面へ落ちる。
激しくせき込みながら、自分の首を押さえた。
「サイ!」
ルイスとミシェルは叫ぶ。
ミシェルはロープダートを握ったまま離さない。
サイはミシェルの武器へ目を向けた。
その武器を見て、彼も驚く。
「それは……。」
「髪の毛でできているの?」
サイは尋ねた。
「くそっ……!」
「生意気な!」
男は素早くロープダートを引き離した。
ミシェルは思わず身構える。
男は血を流し、傷もかなり深いはずなのに、それでも簡単にロープダートを外してしまった。
「生意気なガキどもめ!」
「俺に逆らう気か!」
男はミシェルの腕を乱暴につかんだ。
「ミシェル!」
サイとルイスは叫ぶ。
ミシェルは避けることができず、ロープダートの矢じりを握ることしかできなかった。
「俺に逆らう気か?」
「その報いを思い知らせてやる!」
男はそう言うと、サイとルイスへ拳銃を向けた。
「やめろ!」
ミシェルはすぐにロープダートの矢じりを男の手へもう一度突き刺した。
「ぐああっ!」
男は激しく痛みで叫ぶ。
傷口から血が流れ落ちる。
サイとルイスは思わず目を見開いた。
ミシェルは必死に腕を振りほどこうとした。
だが、男はなおもミシェルの腕を強くつかんだままだった。
「このガキ!」
男はミシェルの腕を背中へねじ上げる。
「お前たちは拘束だ!」
そう言うと、ロープダートを使ってミシェルの両手を縛った。
「放せ!」
ミシェルは必死にもがく。
「放すべきなのは、お前のほうだ!」
「その矢じりを離せ!」
男は言った。
ミシェルはロープダートの矢じりを握ったまま離さない。
「嫌だ!」
「できるなら、自分で放してみろ!」
ミシェルは言い返した。
男はさらに腹を立てる。
「俺の手は怪我をしている!」
「無理やり外すことはできない!」
(私が矢じりを握っている限り、このロープダートはこの人には使えない。)
(この矢じりだけでロープを切ることもできないし、この人に奪われて私たちを刺されるわけにもいかない。)
ミシェルはそう考えた。
「お前たちも拘束だ!」
男はサイとルイスを引き寄せると、同じロープダートで二人も縛り上げた。
「放して!」
「僕たちをどうするつもりなの!?」
サイは叫んだ。
「黙れ!」
「お前たちは拘束する。」
「お前たちをどう処分するか決まるまでな。」
男は三人を前へ押して歩かせた。
(まずい……。)
(どうしよう……。)
サイは心の中でつぶやいた。
男はポケットからスマートフォンを取り出す。
そして、誰かへ電話をかけた。
「もしもし。」
男は言う。
「すぐ表まで迎えに来い。」
「場所は今から送る。」
サイ、ルイス、ミシェルは何も言えず、男に連れられて歩き続けた。
「とにかくここへ来い。」
「さっきから俺を見張っていた男の子を三人捕まえた。」
男は電話の相手へそう言った。
「男の子?」
サイはミシェルを横目で見ながらつぶやく。
「いつものことだよ。」
「そう思われるのは嫌いじゃない。」
ミシェルは小さく笑った。
「何をのろのろしている!」
「さっさと歩け!」
男は再び三人を押した。
三人は悔しさをこらえながら歩くことしかできなかった。
男は前方へ目を向けた。
そこには、一台の車がすでに待っていた。
四人はその車へ近づいて行く。
「早く乗れ!」
男は三人を車の後部座席へ押し込んだ。
サイたちは逆らうこともできず、そのまま車へ乗り込む。
男はドアを閉めると、運転席の隣へ座った。
「こいつらは誰だ?」
運転手は車を走らせながら尋ねた。
「さっき電話でも言っただろ。」
「こいつらは、俺が電話しているところをずっと見張っていた。」
「計画を漏らされると困るからな。」
男は答えた。
「そうか。」
「安心しろ。」
「みんな、もうこっちへ向かっている。」
運転手は言った。
(まずい……。)
サイは心の中でつぶやく。
「なあ、聞いてくれ。」
ルイスは小さな声で言った。
サイとミシェルはルイスのほうを見る。
「この近くに坂があったのを思い出した。」
「だから……。」
ルイスは二人へ自分の作戦を話した。
「今度こそ襲撃は成功するといいな。」
男は言った。
「俺はあまり期待していないけどな。」
「前の四回の襲撃も、お前たちは全部失敗しているだろ。」
運転手は言った。
「その話はするな!」
男は苛立った様子で言う。
そしてバックミラーへ視線を向け、後ろに座る三人を見つめた。
「うまくいくかな。」
ミシェルは小さく言った。
「うまくいくことを願うしかない。」
「だから、まずはここから降りる理由を考えよう。」
ルイスは答えた。
「でも、どんな理由ならいいの?」
サイは尋ねた。
「おい!」
「さっきから何を話している!」
男は言った。
三人は同時に驚く。
「みんなに、トイレへ行きたいって言っていただけだ!」
サイは言った。
ルイスとミシェルは驚いてサイを見た。
(どうしてあんな言い訳を、あんなに早く思いつけるんだ……。)
ルイスは心の中で思った。
男は疑わしそうにサイを見つめた。
「嘘だろ?」
男は低い声で言った。
「信じてもらえないのは分かってる!」
サイは言った。
「さっき、水を飲みすぎたんだ。」
「そんな話を信じると思うか?」
男は言った。
「だったら、ここでしちゃっても僕のせいじゃないからね!」
サイは言い返した。
「お、おい!」
「俺の車を汚すな!」
運転手は慌てて叫んだ。
「早くそいつを降ろせ!」
彼は男に言った。
「本気か?」
男は尋ねた。
「用を足す間くらい見張れるだろ?」
「さっさと連れて行け!」
運転手は言った。
「まったく……。」
男は不機嫌そうな顔をした。
「早く!」
「もう限界なんだ!」
サイが言うと、ルイスとミシェルは呆れたようにサイを見た。
(恥ずかしい……。)
ミシェルは心の中でつぶやいた。
男は車を降りる。
そしてドアを開けた。
「早く降りろ!」
ミシェルはドアの近くに座っていたため、最初に車を降りた。
三人は互いに縛られていたので、降りるだけでも少し苦労する。
「遅い!」
「もう我慢できない!」
サイは真ん中に座っていたルイスより先に降りようとした。
そのせいで、ルイスはサイに引っ張られてしまう。
「お、おい!」
「ちょっと待て!」
ルイスは言った。
ミシェルが振り向く。
サイは自分を追い越して先へ行ってしまっていた。
そのせいで、ミシェルまで引っ張られる。
「ドサッ!」
三人は車の外へ倒れ込んだ。
「いてて……。」
三人は痛そうに顔をしかめた。
「少しは我慢できないのか!?」
ルイスはいら立ったように言う。
「いいから!」
「変なことはするな!」
男は言った。
三人は苦労しながら立ち上がる。
そして先に歩き始め、その後ろを男がついて行く。
男は後ろから、三人を縛っているロープを握り続けていた。
「さっき言ってた場所はどこ?」
サイは小声で尋ねた。
「もう少しだ。」
「あまり遠くない。」
ルイスも小声で答える。
「あそこ。」
ミシェルは言った。
「分かった。」
サイはうなずいた。
「そこでする。」
「もう本当に我慢できない。」
サイは言った。
「もうそればかり言うな。」
「早く済ませろ。」
男はミシェルが指差した場所へ着くと、そう言った。
三人は茂みへ近づいて行く。
男はロープを握ったまま、その後ろについていた。
「始めるよ。」
ミシェルは言った。
サイとルイスはうなずく。
次の瞬間、何も言わずにミシェルは茂みの向こうにあった坂を飛び降りた。
サイとルイスもすぐに後へ続く。
「おい!」
「何をしている!」
男は叫んだ。
「うわああぁ!」
男も一緒に引っ張られる。
「衝撃に備えて!」
ルイスは叫んだ。
「ドサッ!」
四人は地面へ激しく転げ落ちた。
三人は痛そうな表情を浮かべた。
「まったく……。」
「今日は何回転んだんだろう。」
サイは立ち上がりながら言った。
ルイスは男のほうを振り向く。
「やった!」
ルイスはそう言う。
サイとミシェルも男のほうを見た。
男は石の上に倒れたまま気を失っていた。
ロープもすでに手から離している。
「やったー!」
三人は嬉しそうに歓声を上げた。
「頭を石に強くぶつけたみたいだね。」
「だから気を失ったんだ。」
サイは言った。
「それが最初から俺の作戦だった。」
ルイスは言った。
「そんなことより、早くここを離れよう。」
ミシェルは言った。
「あっ!」
「早く本部のみんなに知らせないと!」
サイは言った。
「だったら、俺たちも行く。」
ルイスは言った。
「どうして?」
サイは尋ねた。
「見れば分かるだろ。」
「まだ手が縛られたままだ。」
ミシェルは言った。
「あっ、そうだった。」
「じゃあ、このまま一緒に走るしかないね。」
サイは言った。
「ミシェル、走れそうか?」
ルイスは尋ねた。
「やってみる。」
ミシェルは答えた。
「このロープでつながったままだと走りにくいね。」
サイは言った。
「それなら、掛け声を合わせよう。」
ルイスは言った。
サイとミシェルはうなずく。
三人は左足を前へ出した。
「左、右、左、右、左、右!」
三人は息を合わせながら、その場を走り去って行った。




