地龍討伐
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「とっと終わらせるぞ!」
「ああ!」
アルトがアリサを追って行った後、ロアクとレックス対地龍との戦闘が始まっていた。
「うおらああ!!」
地龍は獰猛な爪が付いた短く太い腕をロアクに対して振るうが、ロアクはそれをいとも簡単に受け流しさらにカウンターを決めダメージを与える。
「ふっ、うおおお!!! っち!」
そしてレックスは初めて急激に変わる身体能力や五感の変化に少し戸惑い感覚が狂いながらも何とかダメージを与えていく。
常に尻尾に注意を払いながら後ろ足やチャンスがあれば地龍の腹部などを狙い、確実に蓄積させていく。
「くっ!」
レックスは自身の身体能力に翻弄されている。
しかしそれも仕方がない。
聖剣によって得られた身体能力や五感の上昇は、初めての者からしてみればまるで暴れ牛を扱うような感覚に陥る。
こう言った特殊な効果は体験出来る機会も少なく、一般的には慣れるまでに相当な時間がかかる。
そのためレックスが苦労するのも必然だ。
とはいえ、そんなことは言っていられる状況ではない。
すぐさま地龍を討伐しアリサ達の援護に行かなければならない。
その為にロアクが出した結論は簡潔だった。
「レックス! いつまでうだうだやってんんだ早く慣れろ!」
「んな無茶な・・・・・・」
レックスは小さく愚痴をこぼす。
しかしロアクの言っていることも最もだ。
こんなところで苦戦していては、ジリ貧のままで、刻一刻とバフが切れる時間は迫っている。
「後10分くらいだ! 慎重に無茶しろ!」
「どういうことだ!」
矛盾した指示を出すロアクに口では反発しつつもレックスも理解はしている。
聖剣の効果が終われば勝率は下がりさらに時間もかかる。
「うおおおおおおッッッ!!!」
気迫の籠った雄叫びを上げ、両手で自身の大剣を持ち高く振り上げる!
家で待っている娘と、はぐれてしまった妻は生きていると信じて、自分も生きて帰らなければならない!
その為ならやってやる!
「ふッ!」
振り下ろされるのは全長180cmを超える超重量の体型。
強化された力を振り絞り、尻尾目掛けて全てを吹き飛ばす勢いで剣を振り下ろす。
ドゴオオオオオオオオン!!!
っと爆音がなり響き砂埃が大量に舞う。
そして爆音と同時に奏でられるのは地龍の甲高い悲鳴。
砂埃が晴れてきた先、そこには地龍の硬い鱗の上から綺麗さっぱり切断された尻尾があった。
「でかしたレックス!」
これで一気に攻略難易度が下がった。
伝説の武器によって強化された肉体と最高級品質の武器、そして家族への想いが重なった最上級の一撃は、ロアクでさえ困難な地龍の強力な武器の破壊に成功したのだった。
「ノロマがッ! こっちだよ!」
爪や噛みつきは今やロアクにとっては既に脅威ですらない。
フード男の魔法でも邪魔が無くなった今、避けるのも受け流すのも反撃をするのも容易い。
唯一有効な手段である超巨体な体での重量攻撃も、21階層とは違うこの広い階層では幾らでも逃げ場があり壁の崩落に巻き込まれる必要もない。
サポーターでありヒーラーであるフードの男がここを去った時点で既に勝利は決まっていたのだ。
「!!」
ここで地龍が取った行動は逃走だった。
尻尾切断された時点で戦意を喪失しており片目も見えず主人もいない。
地龍にとって戦い続ける理由は無くなっていた。
必死に地面を掘り逃げようとする。
「ここで逃がすかよッ!!!」
しかしロアクはそれを許さない。
爪を砕き、腕を裂き、逃走を阻止する。
そしてレックスも加わり、地龍は完全に狩られる側へと回った。
数秒経つ事に加速度的に増えていく傷。
既に地龍の体力は限界に近く、血の池が出来上がっている。
「終わりだ」
最後の抵抗、尻尾と片腕を切断され片目は潰された地龍は突進を繰り出そうと体勢を崩しながらも敵を排除すようと動く。
「安らかに眠れ」
そして最後、ロアクの持つ黄金に輝く剣によって首元から奥深くまで刺され、遂に絶命した。
ほぼ同時に聖剣の効果が切れ2人から薄い金の光がふっと消えた。
「やっと、かっ・・・・・・やっと終わった。皆、仇は取ったぞ」
レックスが大きなため息を吐きながら死んで行った仲間達を想う。
「時間がない。行くぞ」
「ああ」
そしてそんな時間ですら惜しい今、2人はアリサ達を探しに上層へ向かった。




